無人店舗は定着するか!? | KCR総研代表 金田一洋次郎の証券アナリスト日記

無人店舗は定着するか!?

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 本日、ファミマが無人のコンビニを2024年度末までに1000店舗展開する発表がなされた。ここへきて急激に小売業態へのDX化が加速しているようにも見受けられる。背景には、小売業界における慢性的な人手不足もあるが、規制緩和と相まって機械にできることは機械にやらせるという産業界の常識がある。企業が効率化を追求するのは、当たり前だが、果たして無人店舗は定着するのだろうか。

 大阪では、業務スーパー「天下茶屋駅前店」がDXの実験店を開いたというので、買い物がてら早速、活用してみることにした。





 業務スーパーでの取り組みは、客が専用ショッピングカートでバーコードを読み取りながら商品を入れるというもの。最後は、セルフレジで、即座に清算できるというものだ。

 結論を先に言うわけではないが、消費者目線から見れば、この仕組みは、本当にまだ実験段階で、完全実用化まではほど遠いという感じである。店内には、40台ほどのAIカメラで、レジ待ち人数や時間を分析し、最適稼働台数やスタッフの配置ができる仕組みとのこと。棚の映像解析から品切れや欠品をを自動解析することもできるという。在庫管理には、使えるかもしれないが、専用カートの仕組みは、使いづらいの一言。実験店舗だから仕方ないが、この手の実験は、専用カートだけにしなければならないが、普通のレジや普通のカートもあり、専用のカートを使う人は、少ないし、専用カートで普通の対人レジに並ぶ人もいる。専用カートは充電が必要で、使えないカートも多数並び、その分商品展示のスペースがなくなっている。

 この手の専用カートを使いこなすには、まず使い方を丁寧に教える必要があるが、消費者は、めんどくさがり屋でカートの使い方など聞く人は少ない。また、一つ買う毎に清算金額が分かるため、この点は消費者にとって買いすぎ防止でいい側面もあるが、店側からすれば買いすぎて欲しいのが本音であり、消費者の利便性が必ずしも店の利害と一致しないところもある。また、商品を戻す際のめんどくささや酒類提供に関し、今回の店では、確認のための店員を待つ時間などを考えると消費者側のメリットは乏しく、ほとんどが有人レジに流れているのが現状である。また、読み取り不足による万引き防止も心もとない。
 この店の場合は、ソフトバンクのシステムというが、システム費用がほとんど、店側の持ち出しということになると、少なくともこの形でこの手の店舗が普及するのは難しいということがいえる。

 ファミマの場合は、コンビニ業態ということもあり、生鮮なども取り扱ってないのであれば、陳列から考えて、確かに取組みやすいとは思うが、とにかく一回使ってみないことには何とも言えない。ただ、無人店舗という言葉には違和感がある。商品補充や、説明など必ず人は必要である。無人レジというなら理解はできるが、完全無人には業態にもよるが、相当な時間がかかる。小売業態は、人の効率化も重要だが、立地でほぼ決まる。コンビニは飽和状態であり、ファミマの無人システムの使い勝手が悪ければ、逆に近隣の競合コンビニに人が流れるリスクも孕む。

 小売業態でDX化が益々進むことに疑いの余地はないが、店側のエゴでDX化を進めれば、それはそれで失敗する可能性も高い。各社各様で、知恵を絞っているとは思うが、消費者に不便を押し付けるシステムであってはいけない。各業態において常に消費者が何を求めているのかの視点を出発点としてDX化を進めてほしいと思う。

金田一