ちょっと待った!そのTOB! | KCR総研代表 金田一洋次郎の証券アナリスト日記

ちょっと待った!そのTOB!

 最近の買収劇やTOBにはこれが多い。「ちょっと待った!」である。関西のかつての名門、関西スーパーマーケットにもこれが出た。H2OとまとまりかけていたM&Aに首都郊外を主力とするオーケーが待ったをかけた。

 オーケーの提案は、2,250 円の公開買付価格というもので、関西スーパーマーケットのここ10年の上場来高値は、1942円なのだから、これだけでも破格の値段ということが分かる。
 それに対し、H2O案は、完全子会社であるイズミヤ、阪急オアシスとの株式交換で傘下に収めることを画策しており、新株発行も予定されているから、既存株主にとって、希薄化するだけであり、統合後の成長戦略なくしては、メリットは薄いということになる。

 こうした待ったは、先のDCMホールディングスとニトリの島忠争奪戦でもあったが、資本の論理から、結局のところ、買収額の高いほうへ流れるのは自明の理のように思われる。島忠の場合は、消費者的立場から見て、ニトリ傘下に入ることは、ニトリの寡占化が進むだけであり、都市部に強い立地を活かせるDCM傘下になればいいのにと思っていたがそうはならなかった。

 今回のケースはどのような結末となるのだろうか。しかし、一見、H2O買収がいいように見えていたが、イズミヤ、関西スーパーマーケット、阪急オアシスは、得意分野も客層もまったく違うように思える。そうでなくても、関西、特に大阪などの都市部はスーパーマーケット激戦区と言ってよく、日々、各社、各店が鎬を削っており、単に統合してバイイングパワーを増すだけでは勝てなくなってしまっているといえる。

 関西スーパーマーケットは、生鮮食品に強いスーパーであったが、今は昔の話。この10年ほとんど成長しておらず、利益率はわずかに改善してきたかもしれないが、同じ商圏内で飛ぶ鳥落とす勢いで伸びたライフコーポレーションなどを見るにつけ成長に対する無気力感が感じられる。その結果としてのH2Oグループ入りなのだろうが、「ちょっと待った!」がなければ、少数株主をないがしろにしてでも「めでたし、めだたし」となったのかもしれないが、どうも雲行きが怪しくなった。

 よくよく考えれば、既存株主である少数株主に対する配慮が欠けていたのがH2O案である。H2Oと関西スーパーマーケット経営陣にとっては、双方で納得して進めていたのであろうが、私が思うに関西スーパーマーケットは、成長戦略もそうだが、企業IR戦略も後手に回っていた企業。ここへ来て思わず、突如、上場企業として説明責任を負わされることになったわけだから、その心中はいかに。少数株主を納得させるために、どのような説明を行うのか見物である。

金田一