古都こころの相談室|心を整える読みもの
心が落ち着かない時は、結論を急がない
他人を責める心を整える
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心が落ち着かない時ほど、人は早く答えを出したくなります。
「あの人が悪い」
「もう関わらない方がいい」
「自分は間違っていない」
「早く白黒つけたい」
でも心が落ち着かない時の結論は後悔しがちです。
心が落ち着かない時は、結論を急がない。
これは、自分の人生を守るための大切なルールです。
今回は、他人を責めたくなる時の心の動きと、 心が落ち着いている時に考え事をする習慣について、 対話形式で整理していきます。
心が落ち着かない時ほど、結論を急ぎたくなる
相談者
最近、人間関係でずっとイライラしています。相手の言い方が気になって、何度も思い出してしまいます。 もう関係を切った方がいいのかもしれない、と考えています。
心理師
それだけ心が反応しているのですね。まず大切なのは、今すぐ結論を出さないことです。 怒りや不安が強い時は、心が自分を守ろうとして、判断が偏ります。
相談者
でも、相手が悪いと思います。そう考えないと、自分が負けたような気がします。
心理師
確かに。相手の言動に問題がある場合もあります。 でも、そこで話を終わらせるともったいないと思うわけです。相手の言動から、「何が起きて、自分は何に傷つき、これからどう自分を守るか」を整理していきませんか?
James Gross(ジェームズ・グロス)の感情調整の考え方では、感情は出来事にただ反応するだけではなく、 状況の選び方、注意の向け方、意味づけ、表現の仕方によって変わると考えられています。
つまり、怒りがある時に大切なのは、怒りを消すことではありません。
感情が強い時は、結論ではなく観察を優先する。
これだけでも、人生の向きは変わり始めます。
心の状態で、人生の向きは変わる
相談者
心の状態で、人生の向きが変わるというのは、どういう意味ですか。
心理師
たとえば、同じ出来事でも、心が疲れている時と落ち着いている時では、見え方が変わります。 疲れている時は「もう無理だ」と感じやすく、落ち着いている時は「少し距離を取ろう」と考えられる場合があります。
相談者
確かに、夜に考えごとをして、考えをまとめたとしても、朝になると少し冷静になって振り返ると無駄な時間を過ごしたと思うことがあります。
心理師
そこが大切です。人生の大事な判断は、心が荒れている時ではなく、できるだけ落ち着いた状態で考えた方が安全です。
Aaron Beck(アーロン・ベック)の認知療法では、出来事そのものだけではなく、 その出来事をどう受け取るかが感情や行動に影響すると考えます。
心が乱れている時は、心の受け取り方に偏りが出てきます。
「あの人はいつも私を軽く扱う」
「もう全部だめだ」
「自分だけが損をしている」
「社会は私に冷たい」
このような言葉が頭の中に浮かぶことがあるとすると
心がとても疲れている状態です。
結論よりも休息が必要な場合があります。
これは、自分の気持ちを否定する話ではありません。 むしろ、自分の気持ちを大切にするために、判断するタイミングを整えるという話です。
心が落ち着いている時に、考え事をする習慣
相談者
では、嫌なことがあった時は、考えない方がいいのでしょうか。
心理師
考えないのではなく、考える時間と状態を選ぶことが大切です。 心が落ち着いている時に考える習慣を持つと、同じ悩みでも扱い方が変わります。
相談者
心が落ち着いている時に考えるとは、具体的にはどうすればいいですか。
心理師
先ほども話に出ていましたが、夜は考え事をしない。
これだけでもルール化されています。
怒りの直後にメールを送らない。疲れている時に人間関係の結論を出さない。
その代わり、翌朝や休息後に、紙に書き出して考えるのです。
心が落ち着いている時に考えるための問い
1. 私は何に傷ついたのだろう。
2. 相手のどの行動に困っているのだろう。
3. 私が守りたい境界線は何だろう。
4. 今すぐ決める必要はあるだろうか。
5. 私にできる一番小さな行動は何だろう。
この問いは、相手を許すためのものではありません。 自分の心と行動を整理するためのものです。
心が落ち着いている時に考える習慣は、人生の方向を整えます。
水の出ているホースから手を放すと水が色々な方向に散らばるように、感情で決めると、とんでもない結論になります。
感情を見つめたうえで、考えることで行動を選ぶことは
他人を責めている時ほど、心理カウンセリングが役に立つ場合がある
相談者
他人を責めている時に、カウンセリングを受ける意味はありますか。 ただ愚痴を言って終わりになりそうです。
心理師
あります。ただし、カウンセリングは誰かを悪者に決める場所ではありません。 他人を責めている時ほど、その奥にある傷つき、怒り、孤独、無力感、境界線の問題を整理する意味があります。
相談者
つまり、相手が悪いかどうかではなく、自分の中で何が起きているかを見るということですか。
心理師
その通りです。相手の問題を否定する必要はありません。 ただ、相手を責め続けても、自分の生活が楽になるとは限りません。 カウンセリングでは、自分の心の反応と、これからの行動を分けて考えていきます。
Edward Bordin(エドワード・ボーディン)は、カウンセリングや心理療法において、 therapeutic alliance(治療同盟/協働関係)が大切だと述べました。
これは、心理師が一方的に正解を出す関係ではありません。
相談者様と心理師が、目標、進め方、関係性を確認しながら、一緒に考えていく関係です。
他人を責めている時ほど、心の中では「分かってほしい」「大切に扱われたかった」「もう傷つきたくない」という声が隠れている場合があります。
カウンセリングでは、その声を責めずに整理します。 そして、相手を変えることだけに心を使うのではなく、自分がどのように自分を守るかを考えていきます。
他人を責める習慣は、人間関係を壊しやすい
相談者
でも、責めたくなるほど相手に問題がある時もあります。
心理師
もちろんです。相手の行動に問題がある場合はあります。
ただ、責める言葉が習慣になると、自分の周囲の人間関係まで壊れていきます。
相談者
どうしてですか。
心理師
責める言葉が増えると、それを聞いた人は心を守るために警戒します。
また、周囲の人も「この人の前では自分も責められるかもしれない」と感じやすくなります。 すると、安心して話せる関係が少しずつ減っていきます。
John Gottman(ジョン・ゴットマン)は、夫婦関係の研究で、批判、防衛、軽蔑、逃避といった関わりが関係を悪化させやすい要因として知られています。
相手への不満を持ってはいけない話ではありません。
不満は大切なサインです。 ただし、不満をそのままの勢いで
責める言葉にすると、関係は壊れます。
とても、当たり前のことなんですが、多くの人がやっています。
自分は正しいことを言っていると思っている時ほど
注意する必要があると思います。
「あなたが悪い」と言う前に、
「私は何に困っているのか」
「私は何を守りたいのか」
そこを整理すると、言葉の向きが変わります。
責める言葉を、境界線の言葉に変える
相談者
では、責める代わりにどう言えばいいのでしょうか。
心理師
相手の人格を責めるより、自分の限界や希望を伝える言葉に変えていきます。
責める言葉から、境界線の言葉へ
「あなたはいつも勝手だ」
→「急な変更が続くと、私は予定を立てにくくなります」
「あなたは私を大切にしていない」
→「その言い方をされると、私は話し合いを続けるのが難しくなります」
「どうして分かってくれないの」
→「私は、この点をもう少し丁寧に確認したいです」
「全部あなたのせいだ」
→「私は今、とても傷ついています。少し距離を置いて考えます」
境界線とは、相手を攻撃するための線ではありません。 自分の感情、時間、体力、尊厳を守るための線です。
Salvador Minuchin(サルバドール・ミニューチン)の構造的家族療法では、 人間関係の中にある役割や境界線が大切にされます。
近すぎる関係では、自分と相手の責任が混ざりやすくなります。 その時、相手を責め続けるよりも、自分がどこまで関わり、どこから距離を取るかを整理する方が大切な場合があります。
他人を責める習慣から、境界線を持つ習慣へ。
ここが変わると、人間関係の疲れ方も減っていきます。
まとめ
心が落ち着かない時は、結論を急がない。
これは、感情を無視するためのルールではありません。
感情に飲み込まれたまま人生の向きを決めないための、大切な習慣です。
心の状態で、見える世界は変わります。
怒っている時には、相手がすべて悪く見えるかもしれません。
疲れている時には、未来が暗く見えるかもしれません。
孤独な時には、自分だけが損をしているように感じるかもしれません。
けれど、心が少し落ち着いた時には、別の見方が生まれる場合があります。
他人を責めている時ほど、心理カウンセリングが役に立つことがあります。
それは、誰かを悪者にするためではありません。
自分の心の反応を整理し、自分の人生をどの方向へ向けるかを考えるためです。
他人を責める習慣は、人間関係を少しずつ壊していきます。
けれど、心を整え、境界線を持ち、自分の行動を選ぶ習慣は、人生の向きを少しずつ変えていきます。
参考文献・出典
・Beck, A. T.(1976)Cognitive Therapy and the Emotional Disorders. International Universities Press.
・Gross, J. J.(1998)The emerging field of emotion regulation: An integrative review. Review of General Psychology, 2(3), 271–299.
・Bordin, E. S.(1979)The generalizability of the psychoanalytic concept of the working alliance. Psychotherapy: Theory, Research & Practice, 16(3), 252–260.
・Gottman, J. M.(1994)What Predicts Divorce? Lawrence Erlbaum Associates.
・Minuchin, S.(1974)Families and Family Therapy. Harvard University Press.
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