先週、雑草の生き残り戦術について書きました。

 今回も雑草の続きです。

 敵を知り、おのれをしらば、百戦危うからず、と言います。

 で、敵をもっと知らなければなりませんが、「雑草」と一言で片付けるのは漠然としすぎています。

 雑草という名の草はありません。

 具体的に、敵を特定しなければ。

 そこで、今の時期に私の畑によくいる雑草を思いつくままに挙げると・・・

 メヒシバ、エノコログサ、チガヤ、

 セイタカアワダチソウ、アメリカセンダングサ、
ヒメムカシヨモギ、ヒメジョオン、

 スベリヒユ、カタバミ・・・

 等々が生えています。

 これらのうち、最初の3つはイネ科の雑草

 次の4つはキク科の雑草です。

 強害雑草としては、この2種類が非常に多いです。

 では、これらの特徴は?

 ということで、今回は雑草の範囲を少し限定して論じてみたいと思います。



 まず、イネ科の雑草について。

 C4植物が多いのが特徴です。

 C4植物とは、普通の(C3植物)とは光合成の仕方が異なります。

 イネ科の植物が全てC4植物という訳ではありませんが、
上の3つはいずれもそうです。

 ちなみに、イネやコムギはC3植物、トウモロコシや雑穀類はC4植物です。

 C4植物は、普通の光合成をするのに加えて、大気中の二酸化炭素を濃縮する装置を持っています。

 従って、二酸化炭素が少なくても効率よく光合成できます。

 逆に言えば、二酸化炭素を取り込むために、気孔を一生懸命開かなくてもよいことになります。

 気孔を開くと、必然的に水分が抜けてしまいます。

 従って、そうする必要がないということは、乾燥や強光に強いということになります。

 これに対して、我々が畑に植えている野菜はC3植物が多いです。

 こうした点からも、これらの雑草がより有利に繁殖できるのも納得できます。



 イネ科のもう一つの特徴として、成長点が低いというのもあります。

 他の科の植物は、成長点がてっぺんにあるものが多いですね。

 こうしたものは、草刈りで、成長点とかわき芽の出そうなところをちょん切るとそれ以上伸びることがありません。

 これに対して、イネ科の植物は成長点が地面すれすれのところにあります。

 そして、下から押し上げるように生育します。

 草刈りされた時に、これが生きてきます。

 たとえ葉っぱがほとんどなくなっても、イネ科の植物は平気なもの。

 むしろ、風通しが良くなって健康に生育することもあります。

 芝生もイネ科だが、同じ理由で草刈りすることにより良好に生育します。

 従って、もし防除しようとすると、地表を薄く削って成長点を刈り取らなければなりません。

 あまり深すぎると、中で休眠している種が発芽してしまうので次から次へと新しく発芽することになります。

 作物としては優秀ですが、雑草として敵に回すと非常に厄介なものですね。



 キク科の雑草も負けず劣らず厄介です。

 彼らの多くは、根が特徴的です。

 ゴボウのような太い根を持つものとか、地面の中をネットワークのように張り巡らしているものとか色々です。

 そして、この根から再生します。

 前に述べたタンポポもキク科ですが、根を切り刻んでもまた生えてきます。

 セイタカアワダチソウなどは、茎を抜いても根がネットワーク状に残っていて、そこからまた生えて来ます。



 もう一つ特徴的なのが、色んな変化に対してフレキシブルな生き方が出来ることです。

 生殖の仕方が複数あります。

 根が発達していて、冬になると地表から上は枯れますが地下茎は寒さに耐えて生き残ります。

 そして暖かくなると、そこから一気に栄養成長で発芽します。

 これとは別に、普通に種子を作って発芽することもできます。

 どちらも対応可能です。



 もう一つ有名なのは、薬剤耐性。

 ヒメジョオンやヒメムカシヨモギなど、除草剤をかけても完全に防除で来ません。

 薬剤に対する抵抗性が強いのです。

 刈っても、根が残ったら生えてくるし、薬も効かないとなると打つ手がありませんね。

 とすると、駆除することは不可能なのでしょうか?

 しかし、一つ、これらの種を減らす方法も報告されています。

 それは、何もしないこと。

 草刈りも何もせずに、そのまま放っておいたらいずれこれらの種は減ります。

 他の雑草が繁茂するだけですが。

 応用するとすれば、混植などでそれに近い状態を
作れればよいのかもしれませんね。

<参考にした本>


※ メールマガジン登録募集中 → 詳細はこちら