先月半ば、空くんの右下顎に腫れを感じたので病院へ行きました。
祝日だったので近所の病院は休診。それでも今日中に診てもらいたいと思い、蘭ぱぱ(M家の主)と少し離れた病院へタクシーで向かいました。
「口内炎はあると思っていたけれど・・・外側まで腫れる??」と心配になりちゃんと診てもらって「大丈夫、治りますよ」と言ってもらいたかったのです。
病院へ着いてすぐ診察が始まりました。
空くんの顎を触った先生の表情が曇ります・・・。
「この腫れはよくないものかもしれません・・・」
一瞬頭が真っ白になりました。
「何の冗談?」としか思えませんでした。
早く不安を取り除いて欲しくてレントゲンを撮って詳しく診て貰うことに。
しかし・・・レントゲンを撮ってますます先生の中でそれは確信に変わってしまっていたようです。
『扁平上皮癌』
癌。
なにそれ。
先生が続けて説明してくれます。けれどショックと初めて聞く言葉で混乱して頭が追いつきません。
蘭ぱぱの日記によると「猫の顔面に出来た癌のほとんどがこれらしく、しかも悪性の場合が多い。
救いは転移しにくい癌で、そのもので死に至ることはあまり無いらしい。
ただ、どんどん大きくなってくると口が動かせなくなり、食事が出来なくなる。」とのことです。
もし「扁平上皮癌」であれば手術で顎を半分取り、その後はチューブで食事を与えると言われました。
その話を聞いて急に病気の重さを感じ、空くんを抱いたまま待合室でボロボロ泣いてしまいました。
空くんは一昨年の秋、蘭ちゃんに兄弟が欲しいと思っていた時に偶然名古屋の猫カフェさんの掲示板で出会った子なのです。
空くんにとって私達は3番目の家族になるそうです。
一番目の家族については知りません。
二番目の家族は・・・彼を置いて出て行ったそうです。
誰も居ない家に取り残された彼を保護してくださったご家族の好意で今「空」が存在します。
前の家ではベッドに乗れば蹴られ、旅行で家を空ける際に何日も閉じ込められていたらしいと聞き・・・言葉が出ませんでした。
座っていれば膝に乗って甘えて、枕元で寄り添って眠って、キラキラした目で人を見つめる空くん。彼にそんな時代があったなんて・・・。
空くんに会ったことがある人は信じられないと思います。
どうしてそんな目にあったのにまだ人を好きになれるのか・・・考えると切なくなります。
ごめんね。ありがとうね。大好きだよ。
何度心の中で思ったことか。
空くんの過去を聞いた時私達は「絶対空を幸せにする」と誓いました。
「それなのに・・・」
「まだ二年も経ってないのに」
その言葉が頭の中でぐるぐる回って、涙が止まりません。
隣の蘭ぱぱが焦ります。(苦笑)
泣き止まなきゃと思って顔を上げると先生や受付のお姉さんの心配そうな顔にも気付き申し訳なくなりました。(苦笑)
でも、その時に動物の痛みも人間側の気持ちも考えてくれるんだろうな・・・と安心出来た気がします。
後日詳しい検査の為に麻酔をし腫れている部分の組織を一部採取しました。大学へ送って調べてもらうそうです。
休みの蘭ぱぱとぱぱのお友達のGさんが病院へ連れていってくれたのですが麻酔から目覚めた空くんは相当興奮していたようです。(苦笑)
仕事を終えて帰宅すると気だるそうな顔をしつつも空くんは膝の上に来てぐるぐる言ってくれました。悪役任せてごめんねぱぱ。(^^;)
約一週間後結果が出ました。
最初の診断通りです。
正直、レントゲンも撮って診ているし先生を信用していたので「やっぱりそうですか・・・」と言う気持ちでした。
その翌日、蘭ぱぱと二人で病院へ行き(空くんはお留守番)治療について先生に詳しい説明を受けました。
治療方法は三つ。
外科的治療・・・癌の部分(顎)を切除。但し空の場合顎の骨の両側にあるので、完全に取り除くことは不可能。残った癌を放射線で消す為には三重の病院へ預けることになる。
放射線治療の際毎回麻酔をかけることになり、負担も大きく治療中に亡くなるケースも少なくない。再発も有り得る。
内科的治療・・・癌の進行を抑える薬+免疫を上げる薬で様子を見る。
無治療・・・そのままです。
前回治療の説明を受けた時に何より不安に思っていたのは、顎を切除する時の手術とその後の痛みに空が耐えられるかどうかでした。
空はもう「若い」うちには入りません。そして6にゃん一の細身です。
6年前、実家に居た愛犬ミルキーは「長生きする為に、やりましょう」と言われた手術で命を落としました。老犬だったので術後体力が持たなかったのです。
私は「大丈夫ですよ」と言った獣医さんの横で寂しそうに私と母を見つめるミルキーの目が未だ忘れられません。痛くて心細いのに、「なんで置いていくの?」と言っているような目でした。
怖い。
手術が怖い。
手術の相談をした時、蘭ぱぱは「先生を信用しなさい」と言ったけど、こればかりはどうにも出来ないのです。
信用してるけど、怖い。
そんな私にとって内科的治療は救いのようでした。
耐えられるかわからない、そして完全に治らないとわかっている手術を行うことは私には無理です。
蘭ぱぱの言うように
「内科的治療だと完治はしないけど、最後の瞬間まで一緒に過ごすことが出来るし、 薬で癌の増殖を抑え免疫を上げるのでもしかしたら長生きできるかもしれない。 」
内科的治療が私達の「希望」になりました。
説明を受けた帰り道、蘭ぱぱと病院から歩いて帰りました。
足取りは軽く、そして二人とも自然と笑顔が作れるようになっていた気がします。
10月5日、蘭ぱぱに病院へ薬を貰いに行ってもらい内科的治療が始まりました。
空くんとの出会いは「運命だ」とずっと言っていました。
今回、先生に「この病気は早く見つかったから治るというわけではないんですよ・・・運命なんです。」と言われ
「もっと早く気付いていれば」と自分を責めないように言ってくれたとは思うのですが、
ここで「運命」って言われるなんて、皮肉ですね。
笑っちゃいます。
冗談じゃない。
・・・徐々にいつものはるかさん復活です。
泣いてられっか。
そっちの運命には逆らってやろうじゃないか。
誰もにいつか訪れる「その日」は外科的治療で手術を行わないことで逆に遠のいたかもしれない。
空が元気で過ごしている「今」が前よりずっと愛しい。
噛み締めて生きて行きます。
2008.10.10 はるか