世界的な人工の増加や地球温暖化の進展などを受けて水不足への関心が高まるなか、人工的に雨を降らせる人工雨の技術に期待が集まっている。水資源の確保を目指して海外では続々とプロジェクトが稼働する。渇水対策に生かそうと日本も研究に本腰を入れ始めた。

 8日に開幕する北京五輪。開会式には福田康夫首相やブッシュ米大統領など80カ国以上の元首・首脳が参加する予定だ。大会の成功に威信をかける中国は、開会式を文字通り”晴れの舞台”にしようと人工的に雨を消す計画を立てている。
 海上に雨雲が近づいた場合、ロケット弾でヨウ化銀という化合物を雨雲に撃ち込むなどして、会場に届く前に雨を降らせて北京上空を晴天にする。過去の統計でみると8月8日の北京の降水確率はほぼ5割。技術的に困難な面もあるとされるが、午後8時から始まる開会式の夜空はきれいにみえるのだろうか。
 中国は13億人の人口を抱え、水資源を安定確保する手段として人工降雨の事業が盛んだ。1950年代から農業用水などに利用するため、中国全土で取り組んできた実績がある。
 日本でも人工降雨の研究が熱を帯びてきた。気象研究所や情報通信研究機構、防災科学技術研究所などが2006年からプロジェクトに着手。今夏、四国上空で人工降雨の大規模実験に挑んだ。リーダーを務める気象研究所物理気象研究部の村上正隆第一研究室長によると国内での夏場の実験は約40年ぶりという。
 四国では近年、夏場に渇水が頻発する。西日本を中心に春先から雨不足が続いた2005年には、高知県の早明浦ダムの貯水率がゼロになった。今回の実験は渇水の解消につなげるのが主な狙いだ。
 実験は航空機やヘリコプターを利用して、上空の雲にドライアイスと吸湿性粒子と呼ぶ直径数マイクロメートル以下の微小な塩粒を送り込んだ。6-7月にかけて計10回実施したところ、微量ながら雨を降らせることに成功したという。
 ドライアイスはセ氏零度以下の「冷たい雲」に使う。雲のなかの水蒸気を冷やして氷晶をつくり、これを成長させて雪を降らせる。舞い落ちる途中に温度が上がると、雪は雨に変わる。一方、吸湿性粒子は零度以上の「暖かい雲」のなかで水分を集め雲粒を成長させるための核にする。雲粒は落下しながら小さな雲粒を補足し雨になっていく。2種類の粒子を使い分け、雲の性質に応じて雨を降らせる狙いだ。
 村上室長はこれまでに冬の越後山脈でドライアイスを使い降雪量を3-4割増やすことに成功してきた。今回の実験で振らせた雨はわずかな量だったが、幅広い温度域でドライアイスを適用できることを確認、夏場に雨を降らせる技術にめどをつけた。吸湿性粒子も実験過程で成分の調整などを重ね、実用化が期待できる手応えを得た。
 村上室長は「効果的に雨を降らせるメカニズムを突き止め、渇水対策として活用できるようにしたい」と話す。従来の人工降雨は技術的に未熟な部分が多く、その効果も十分でなかった。プロジェクトでは今後、雨を降らせるだけでなく、雲の中で起こる変化や、降らせた雨を水資源として利用できるかどうかの検証も進める。
 人工降雨では世界でも40カ国以上で100件を超すプロジェクトが稼働中だ。国連は「2050年までに世界人口の2/3が水不足の問題に直面する」と予測、人工降雨研究への期待は一段と高まりそうだ。
 人工降雨は地球温暖化対策としても注目を集める。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は昨年、温暖化が進むと台風やハリケーンが勢力を増して局地的な豪雨が増える一方、極端な渇水が生じやすくなるとした。国内でも積雪量が減少して新潟や秋田などの米どころで農業用水が不足するほか、南九州や沖縄などで渇水のリスクが高まると予想される。水不足の解消は急務といえる。
 人工降雨はまったく雲のないところに雨を降らせるわけにはいかず、どこでも使える渇水対策ではないが、天を動かそうとする挑戦はこれからも続きそうだ。

 毎週日曜日のサイエンス記事より。いつも天気をよくする技術は夢があって楽しい。けれども、その背景では地球温暖化の影響によって、豪雨のために洪水が起きたり、陸地が浸水したり、雪や雨が減って水不足にもなる。「2050年までに世界人口の2/3が水不足に直面する」という国連予測は衝撃的。水が飲める国、日本はどうなるのだろう?
 天気はタダだけど、技術料は有料。未来では雨も、自動引き落としになるんだろうか?変わりゆく地球環境に技術力で適応/順応していくと、天からの恵みが減って有料の人工物が増えてくる。それらすべてを上手に市場に流していく政治的操作にもまた高度な技術が必要になるだろう。そうした場合、いわば、雨の家賃収入みたいなボロい儲けが発生して、富の配分がまたしても格差の拡大をもたらすことになるんじゃないかと心配になる。
 技術開発をどの方向に進めていくかにも政治判断がいくらか関わる。私たちが幸せに楽しく生きていける夢のある未来は、いろんな方面にバランスのとれた科学技術の活用によってもたらされるのだろう。