日中両政府は18日、東シナ海のガス田開発問題で合意した。日経新聞朝刊によると、合意のポイントは次のとおり。
○協会が確定するまでの間、日中双方の法的立場を損なわず協力
○翌檜(あすなろ、中国名・龍井)より南の海域(日本主張の境界線をまたぐ北部海域)に、共同開発区域を設定。共闘探査を経て地点を選び、共同開発
○中国の法律に従って、白樺(中国名・春暁)の中国企業が現有するガス田の開発に日本法人が資本参加
○その他の海域での共同開発を早期に実現するため協議を継続
○必要な交換公文の早期締結に努力
今回の合意は北部海域と白樺の二つに事実上、絞った限定的な内容といえる。福田政権は支持率低迷にあえいでおり、中国側に譲りすぎたとの印象を与えれば、世論や自民党保守派から厳しい反発を浴びかねない。中国側も海洋検疫に敏感な軍部や、反日批判が渦巻くネット世論にも配慮しなければならない。日中同意は双方のぎりぎりの妥協の産物だったようだ。
ガス田問題をめぐる主な経緯をみてみよう。
小泉政権
2004年6月 中国が日中中間線近くでガス田の開発に着手したことが表面化。日本が抗議
中国側が中国・青島での日中外相会談で共同開発を提案
7月 日本が中間線近くでガス田を独自調査。中国が抗議
10月 北京で初の日中局長級協議。中国は試掘データの提供に応じず
2005年4月 経産省が「白樺」「楠」「翌檜」の地質構造が中国側と日本側でつながっているとの調査結果を発表
7月 日本政府が帝国石油に中間線の日本側海域でのガス田試掘権を付与
9月 中国が「樫」でも採掘作業を開始
安部政権
2006年10月 安部晋三首相が初の外遊先として中国を訪問。胡錦濤国家主席、温家宝首相と会談
2007年4月 温首相が来日し安部首相と会談。共同開発を「境界確定までの暫定的枠組み」と確認
福田政権
2006年12月 福田康夫首相が訪中。温首相と「早期決着させる断固たる決意を共有」
2008年2月 北京で初の日中次官級協議
5月 胡主席が来日し日中首脳会談。記者会見で「解決のめどが立った」と表明
こうした経過の中で、日本では特に白樺が問題になっていた。
日本が主張する境界である日中中間線沿いに、中国が建設してきた油田は、白樺(春暁)、翌檜(龍井)、樫(天外天)、楠(断橋)。日本側は白樺(春暁)の共同開発にこだわった。日中中間線の中国側にあるが、日本側は海底でつながっている日本側海域にある天然ガスも吸い上げられると懸念していたため。残り3つの油田はいずれも対象外にされ、継続協議となっているが中国側が単独開発にこだわる公算が大きい。白樺以外で合意できたのは翌檜より南の北部海域における共同開発。
この海域に埋蔵される資源について、事業採算が合うかはまだ不透明
ガス田の開発はエネルギー調達先を中東以外に多様化するという日本の資源政策に沿う内容。しかし、生産したガスを日本に持ち込みにはコストがかかる。中国側によると、試掘で確認された東シナ海全体のガス田の埋蔵量は石油換算で1.8億バレル。日本企業などがロシアで展開する資源開発事業「サハリン2」の5%程度。日本の石油と天然ガスの合計需要の1割に満たない。うち日本が出資する白樺の埋蔵量は6400万バレル。日本のエネルギー安定調達への寄与は限定的。海域ガス田の生産コストは陸上より高い。日本にガスを持ち込むためにはパイプラインや、ガスを液化する基地の建設に数億円の費用もかかる。このため生産したガスは中国が整備したパイプラインでいったん中国に送り、日本は出資分に応じた収益を受け取る形が考えられる。
痛み分けの合意だけに賛否両論の反応が出ることは日中ともに想定内。7月の洞爺湖サミットを成功させたい日本にとって、環境問題などでの日中協力は欠かせない。北京五輪を控える中国も反日ムードが再燃することは望まなかった。
中国世論はどうか。合意の発表は外務省のホームページ上での掲載と国営新華社の報道に止めた。国内世論の反発を恐れ、譲歩した印象を与えないよう腐心している。18日、中国当局は日本大使館前での市民団体の集会を許可。約20人が「東シナ海協議での締結に断固反対」などと書いた横断幕を掲げながら「日本は東シナ海から出て行け」と叫んだ。インターネット上には「受け入れられない」などの書き込みも出ている。
また、ちょうど最近、日本と台湾との間でトラブルが生じている。台湾の遊魚船が10日、尖閣諸島付近で海上保安庁の巡視船にぶつかり沈没した。劉兆玄行政院長(首相)が日本との戦争の可能性を示唆する発言をするなど強硬論が高まり、16日には台湾の巡視船が日本の領海に侵入した。海保幹部が遊漁船沈没の5日後に「遺憾」を表明するなど、日本の対応は後手にまわった。尖閣諸島付近は日本、台湾が領海と主張する海域で、日本の巡視船は日本の領海として任務についていたので、日本側が毅然とした態度をとるのは当然だが、十分に注意した対応が必要だと思う。
東シナ海、日中中間線の海底にある資源をめぐる問題は、まず海底調査、事業収益、ナショナリズム、そしておそらく安全保障といったことが関係すると思う。まず大事なのは海底調査の情報を知りうる限り知り尽くすこと。事業採算を考えると、日中双方ともナショナリズムをあおるのはどうかと思うが、そのデータがどれほど信用できるか?新聞を読んでもわからない。最低限いえるのは、中国側が知っていて、日本側が知らないことがあってはならないってことだと思う。
○協会が確定するまでの間、日中双方の法的立場を損なわず協力
○翌檜(あすなろ、中国名・龍井)より南の海域(日本主張の境界線をまたぐ北部海域)に、共同開発区域を設定。共闘探査を経て地点を選び、共同開発
○中国の法律に従って、白樺(中国名・春暁)の中国企業が現有するガス田の開発に日本法人が資本参加
○その他の海域での共同開発を早期に実現するため協議を継続
○必要な交換公文の早期締結に努力
今回の合意は北部海域と白樺の二つに事実上、絞った限定的な内容といえる。福田政権は支持率低迷にあえいでおり、中国側に譲りすぎたとの印象を与えれば、世論や自民党保守派から厳しい反発を浴びかねない。中国側も海洋検疫に敏感な軍部や、反日批判が渦巻くネット世論にも配慮しなければならない。日中同意は双方のぎりぎりの妥協の産物だったようだ。
ガス田問題をめぐる主な経緯をみてみよう。
小泉政権
2004年6月 中国が日中中間線近くでガス田の開発に着手したことが表面化。日本が抗議
中国側が中国・青島での日中外相会談で共同開発を提案
7月 日本が中間線近くでガス田を独自調査。中国が抗議
10月 北京で初の日中局長級協議。中国は試掘データの提供に応じず
2005年4月 経産省が「白樺」「楠」「翌檜」の地質構造が中国側と日本側でつながっているとの調査結果を発表
7月 日本政府が帝国石油に中間線の日本側海域でのガス田試掘権を付与
9月 中国が「樫」でも採掘作業を開始
安部政権
2006年10月 安部晋三首相が初の外遊先として中国を訪問。胡錦濤国家主席、温家宝首相と会談
2007年4月 温首相が来日し安部首相と会談。共同開発を「境界確定までの暫定的枠組み」と確認
福田政権
2006年12月 福田康夫首相が訪中。温首相と「早期決着させる断固たる決意を共有」
2008年2月 北京で初の日中次官級協議
5月 胡主席が来日し日中首脳会談。記者会見で「解決のめどが立った」と表明
こうした経過の中で、日本では特に白樺が問題になっていた。
日本が主張する境界である日中中間線沿いに、中国が建設してきた油田は、白樺(春暁)、翌檜(龍井)、樫(天外天)、楠(断橋)。日本側は白樺(春暁)の共同開発にこだわった。日中中間線の中国側にあるが、日本側は海底でつながっている日本側海域にある天然ガスも吸い上げられると懸念していたため。残り3つの油田はいずれも対象外にされ、継続協議となっているが中国側が単独開発にこだわる公算が大きい。白樺以外で合意できたのは翌檜より南の北部海域における共同開発。
この海域に埋蔵される資源について、事業採算が合うかはまだ不透明
ガス田の開発はエネルギー調達先を中東以外に多様化するという日本の資源政策に沿う内容。しかし、生産したガスを日本に持ち込みにはコストがかかる。中国側によると、試掘で確認された東シナ海全体のガス田の埋蔵量は石油換算で1.8億バレル。日本企業などがロシアで展開する資源開発事業「サハリン2」の5%程度。日本の石油と天然ガスの合計需要の1割に満たない。うち日本が出資する白樺の埋蔵量は6400万バレル。日本のエネルギー安定調達への寄与は限定的。海域ガス田の生産コストは陸上より高い。日本にガスを持ち込むためにはパイプラインや、ガスを液化する基地の建設に数億円の費用もかかる。このため生産したガスは中国が整備したパイプラインでいったん中国に送り、日本は出資分に応じた収益を受け取る形が考えられる。
痛み分けの合意だけに賛否両論の反応が出ることは日中ともに想定内。7月の洞爺湖サミットを成功させたい日本にとって、環境問題などでの日中協力は欠かせない。北京五輪を控える中国も反日ムードが再燃することは望まなかった。
中国世論はどうか。合意の発表は外務省のホームページ上での掲載と国営新華社の報道に止めた。国内世論の反発を恐れ、譲歩した印象を与えないよう腐心している。18日、中国当局は日本大使館前での市民団体の集会を許可。約20人が「東シナ海協議での締結に断固反対」などと書いた横断幕を掲げながら「日本は東シナ海から出て行け」と叫んだ。インターネット上には「受け入れられない」などの書き込みも出ている。
また、ちょうど最近、日本と台湾との間でトラブルが生じている。台湾の遊魚船が10日、尖閣諸島付近で海上保安庁の巡視船にぶつかり沈没した。劉兆玄行政院長(首相)が日本との戦争の可能性を示唆する発言をするなど強硬論が高まり、16日には台湾の巡視船が日本の領海に侵入した。海保幹部が遊漁船沈没の5日後に「遺憾」を表明するなど、日本の対応は後手にまわった。尖閣諸島付近は日本、台湾が領海と主張する海域で、日本の巡視船は日本の領海として任務についていたので、日本側が毅然とした態度をとるのは当然だが、十分に注意した対応が必要だと思う。
東シナ海、日中中間線の海底にある資源をめぐる問題は、まず海底調査、事業収益、ナショナリズム、そしておそらく安全保障といったことが関係すると思う。まず大事なのは海底調査の情報を知りうる限り知り尽くすこと。事業採算を考えると、日中双方ともナショナリズムをあおるのはどうかと思うが、そのデータがどれほど信用できるか?新聞を読んでもわからない。最低限いえるのは、中国側が知っていて、日本側が知らないことがあってはならないってことだと思う。