「華麗なる一族」最終章 後編
 
 
原告側弁護人は証言台に立つ銭高常務に尋ねる
虚偽の貸付はあなたが単独で行ったのですか?
いいえ
誰かに指示されましたか?
はい
誰ですか?
万俵大介頭取です
 
裁判は一気に逆転の様相を見せた
復活に向けて沸き立つ鉄平と社員たち そして銭形
 
しかし・・・
 
会社更生法を適用された阪神特殊製鉄の管財人に帝国製鉄の和島所長が就任
鉄平や銭高を含む役員が解雇される
そして阪神銀行への提訴取り下げ!!!
阪神特殊製鋼と阪神銀行の裁判そのものがなくなった!
 
怒った社員たちが集会を開いている
鉄平が来て言う
鉄鋼マンが錆びてどうする!
自分たちの技術で社会を豊かにする それが原点だったはずだ!
ここは君たちの工場だ
僕の夢だった高炉を君たちの手でつくってほしい
そしてもう一度

この工場の煙突の煙を僕に見せてくれ
 
 
鉄平は銀平に問う
銀平、正直におしえてほしい
万俵大介の本当のねらいは何なんだ?
 
永田大臣が三雲頭取に話す
阪神特殊製鋼への融資が大同銀行の内部対立を招いたことを非情に憂慮されてましてね
そこへ現れたのは万俵大介
 
やっぱりそうか
最初から大同銀行を飲み込むことが目的だったのか!
怒りにうち震える鉄平
 
そのような提案は飲めません!
拒絶する三雲頭取
一度役員会にかけて検討してみてはどうかね?
連判状を横目にしたり顔の永田大臣
 
綿貫専務は三雲頭取にあからさまに反旗を翻す
日銀から来られたあなたたちが今まで生え抜きだった我々に何をしてくれたんですか?
・・・・・
 
鉄平は万俵家を訪れ大介と庭で話す
みんなを救えるのはあなたしかいないんですよ!
おまへはまだそんな甘い理想をふりかざすのか
その理想のためにぼくは闘ってきたんです!
死んだ祖父さんがよくそういうことを言っていたよ
祖父さんは私よりもおまえの才能を高く買っていてな
僕があなたの息子だったらこんな闘いはなかったはずですね
あなたはこの闘いで僕やお祖父さんに復習したつもりですか
僕は普通の家族でいたかった ただそれだけです
私だってそう望んでいた
だが、おまえが生まれてしまった
僕が生まれなければ?
正直そう思うことがある
そんなことを思う自分がとてつもなく嫌になる
私も理性ではおまえを愛そうと努力した
だが、感情がそれを許さなかった
おまえも辛かっただろう
そのことには私も同情する
だが、私だって苦しかった
この苦しみはどんなことがあっても一生消えることはない
それが、おまえと私が背負った宿命だ
 
池の前に立ちつくす鉄平に鯉がやってくる
小石を拾って何度も投げつける鉄平
信じてきた祖父への恨みが尽きることはない
 
日が暮れても工場を見つめる鉄平
 
クリスマスの夜
鉄平は自宅に電話する
もしもしパパ パパ
ちゃんとママのいうこと聞いてるか
うん
そうか、太郎 お前はつよい男になるんだぞ
うん、ぼくつよくなる
約束だぞ いい返事だ ママにかわってくれ
うん ママ
あなた 今どこですか?
・・・・・
あなた
早苗
はい
・・・・・メリークリスマス
電話を切った鉄平は
猟銃を肩にかけて兵庫県丹波篠山へ
 
 
鉄平の行方がわからず心配する万俵家
しかし、大介は大晦日の合併会見まで騒ぐなと言う
 
 
獲物は見つかりまへんでしたか?
はい、でも
白い雪山のなかを歩いていると
いろんなものが洗い落とされて
心が真っ白になるみたいです
 
明くる日、遺書を書き終え
阪神特殊製鋼の作業服に袖をとおす鉄平
 
若旦那はん 今日は銃を置いて行きなはれ
この山では年に一度の大晦日は殺生しない日や
地元の猟師でさえ山には入らん日や はよう戻ってきなはれや
わかっている それじゃ
 
 
ただいまより
阪神銀行 大同銀行 合併会見を行います
阪神銀行頭取 万俵大介よりご報告があります
阪神銀行と大同銀行による戦後初の都市銀行合併が

成立する運びとなりましたことをここにご報告申し上げます
 
 
その日、早苗のもとに鉄平からの手紙が届いた
 
早苗 すまない
結局ぼくは自分勝手で卑怯な方法を選ぶ
本当に申し訳ない
 
泣きじゃくる早苗
 
 
雪山の頂で木に背もたれる鉄平
靴を脱ぎ、靴下を脱ぎ 猟銃を握りしめ 目を閉じる
あごの下に銃口をあて 引き金に足をかけて深呼吸
そこへ突然日の光が指した
少しにこりとしたがすぐにまた吹雪が吹きすさぶ
意を決した鉄平は引き金を引いた
轟く銃声
鉄平は、真っ白な雪原を赤く染めて倒れた
 
 
篠山警察署
お父様 鉄平お兄様は作業服をまとって
最期のときを迎えられたそうです

先代から送られた銃で弾は一発しか込められておらず
立派な死に様でした
ご子息の死亡診断書です ご覧ください

死亡診断書を確認する大介
どういうことだ?B型だと? 
つめよる母寧子
鉄平さんはB型だったんですか!?
そんなわけがない!
戦時中の集団検査でA型に決まってる!
それでしたら戦時中によくあった診断ミスでしょう
鑑識の調べですから間違いありません

あなた 鉄平さんはあなたの子どもだったんです
私とあなたの子どもだったんです
鉄平さん 鉄平さ~ん
なんという残酷・・・・
 
兄さん殺したのは僕とお父さんです
 
この手紙に鉄平さんの最期の思いがつづられています
早苗はそう言って手紙を大介に渡す
 
すべての不幸は僕がこの世に存在することが原因で引き起こされた
本来ぼくは生まれてきてはいけない人間だったんだ
 
ぼくの工場と万俵家の家族を幸せにしてくださるよう思いを父に託したい
憎み合っていても血はつながっていなくても僕の父親は万俵大介です
せめて一度でもお父さんに微笑みかけてほしかった

 
手紙を読み終えて涙を流す大介
愛しい我が子の頬をなでる
鉄平 鉄平
棺桶にすがりついて嗚咽する
 
 
 
鉄ちゃん安心して
鉄ちゃんの夢は必ず仲間のみんなが叶えてくれるから
葬儀を終え、遺体を見送る芙佐子
 
家の庭を出る前に霊柩車を止め
鉄平の息子・大介の孫 太郎の手をひいて歩く大介
 
ついに、阪神特殊製鋼の高炉に火が入った!
 
工場の煙突から煙が上がる
 
礼服をまとった家族皆がそれを見つめる
 
問い詰める三雲に大介は応える
鉄平は大きなものを残して旅立ちました
私はそれを重く受け止めています
 
 
 
昭和44年3月
私が金銭で解決のつく女と思ってらして?
とりみだす相子
新銀行が発足したからってあなたは今までの生き方を変えられるんですか?
君への思いは今でも変わらない
これが私の下した決断だ
安心してください
泣いてすがったりしませんから
本当は私から別れをきりだそうと思ってましたの
体面を気にして小さくまとまったあなたなど
お気の毒ね
私があなたを失ったんじゃない
あなたが私を失うのよ
部屋を出てむせび泣く相子
 
これからはわたくしひとりで大介を支えていきます
相子さん お元気で
見送る寧子
 
 
一ノ瀬四々彦は二子と並んで鉄平の遺影に話しかける
専務 ぼくらは今日アメリカへ旅立ちます
 
阪神特殊製鋼が帝国製鉄の傘下に入れられ
大介の思惑通りだと皆が思うなか
銀平は言う
本当にお父様の思い通りなのか?
 
 
合併してできた東洋銀行の誕生を祝うパーティー
永田大臣が美馬に話す
フコク銀行に東洋銀行を飲み込んでもらいたい
君、これはね
金融再編の口火をきる合併にすぎないんだよ
 
 
大介の笑顔に、苦笑いしか返せない美馬
 
 
 
鉄平の遺書
 
夢は情熱をそそぐ人間の力だと信じている
しかし、志を忘れたとき
栄光はすぐに終わりへ向かうだろう
 
でも、ぼくはなぜ明日の太陽を見ないのだろう
 
 
 
 
 
<死んだ鯉の腹が水面に浮かんでいる>
 
 
 
 
 
その日は今も燃え続けている
 
 
現在も煙を吐き続ける工場
 
モデルは神戸製鋼じゃなくて
姫路市の山陽特殊製鋼でした
たいへん失礼いたしましたm(_ _)m
 
 
 

野望、嫉妬、夢、友情、団結、闘争、憎悪、愛

 
自分を突き動かす葛藤や
まっすぐな夢に乗って
ものづくりは受け継がれていく
 
人は生まれては亡くなり
会社に生きる人々も入れ替わる
それでも
動き続ける夢はずっと受け継がれている
 
 
さて、私にも残りの人生がある
夢を受け継ぎ

夢を引き渡したい