今回はユニシアジェックスチョロQ制作記最終回デカール編です。
デカール制作と言えばALPSのMD-5500。もう神プリンターと言ってもいいでしょう(笑)

今回の内容はMD-5500のノウハウ的な内容なので、興味のない方はスルーしてください。

 

2010年5月に販売終了してしまったMD-5500。自分にとってはR32GT-Rのような存在で(笑)、他のどんなインクジェットプリンターでも表現できないホワイト、メタリックの印刷、無限に重ね印刷ができることが、カスタムモデラーにとっては唯一無二の存在です。もうこんなプリンターは出ることはないでしょう。現在レーザープリンターでホワイトのトナーを使って白い印刷をすることも可能なようですが、ランニングコストや手軽さを考えると圧倒的にMD-5500の方が優れています。また無限に重ね刷りができるということもこのプリンターの大きな利点です。もう、機械遺産に登録してほしいくらいですね。(笑) 現在でもメンテナンス・販売を行っている象のロケットさん、本当にありがたい存在です。このプリンターに惚れ込むユーザーがたくさんいること、使っていくうちに分かってきました。使い方は難しいですが、その特性を理解できれば絶対にインクジェットプリンターで表現できない素晴らしいデカールが作成できます。使い手の習熟度が増すほど表現の幅が広がる。。。そんな奥深いプリンターです。では具体的に何が素晴らしかというと

 

・特色印刷ができる。

CMYKと特色印刷

ごく一般的な印刷ではCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の4色の版の掛け合わせで色を表現します。

例えば、シアンとマゼンタ2色の掛け合わせ。下図のマトリクスで左上のC0×M0は白で右下のC100×M100は紫です。

一般的なCMYKではC0×M0~C100×M100をシアンのインクとマゼンタのインクを掛け合わせて作ります。

例えばC50×M0のシアン50%の色を表現したい場合

 

 

上記の様にシアン100%インクで濃度50%を表現しようとすると実際にはドットで印刷されてしまいます(図はあくまでもイメージです)。遠目に見れば薄い水色なのですが、拡大すると濃い青がドットで印刷されています。CMYKで表現しようとすると仕方がないことで、そもそも4色しかないので当たり前ですよね。しかし小スケールモデルのデカールを作る場合、ドットが目立ってクオリティーが損なわれてしまいます。そこでそれを解決するのが特色。特色とはCMYKで表現できない色を別に用意することを言います。例えばシルバーや蒸着のメタリック、蛍光色、ホワイトなど。。。要するに、特色があればドットの印刷にならずにどんな色でもきれいなベタ印刷ができるという事です。あと特色の利点としては色の彩度が保てること。CMYKの掛け合わせは色が濁ってしまいきれいな中間色が出せません。特にブルー系は顕著です。PCはRGBで描画することが多いですが、画面のイメージで印刷すると濁った色で印刷されてしまいます。インクジェットプリンターにライトマゼンタやライトシアンがあるのは特色のような役割をさせて発色をよくさせるためです。

 

ALPSのMD-5500はこの特色印刷が可能です。もともと白やメタリックなどの特色は用意されていましたが、象のロケットさんがその後さまざまな特色をリリースしてくれたおかげで現在では、CMYKで表現できない、きれいな発色のベタ面印刷が可能になりました。

 

・無限にできる重ね刷り

MD-5500のもう一つの特徴としてすごいのが、無限にできる重ね刷りです。

普通プリンターは印刷が終わると紙が排出されますが、MD-5500は印刷が終わっても紙を排出せずに印刷する前の元の位置に戻してくれます。これにより複数の色を重ねて印刷することができます。インクリボンは透過性があるので下の色と重ね合わせることができます。

例えばグリーンの色を作りたい場合、最初にイエローを刷って、同じ版でシアンをする。そうするとグリーンを作れます。

 

この原理で色んな色を網点なしで作ることができます。

 

では、実際に今回作ったデカールの作成手順を紹介したいと思います。

まずはAdobeのIllustratorでイメージ通りのカラーの版下を作成します。この時、色ごとにレイヤーを分けておきます。背景を水色にしているのはホワイトの印刷を分かりやすくするためです。自分は次に刷る時にどうやって刷ったのか忘れてしまうので

画面の右側の余白に、重ね刷りする順番を書いて記録しています。

 

 

次の手順として版下データをすべてK100%に変換します。なぜかというとカラーのままで印刷するとプリンターはCMYKモードで印刷するので

中間色が網点で印刷されてしまうからです。印刷するときはグレースケールで印刷します。詳細は後で解説します。

 

次に版下の分解作業。下図はユニシアジェックスのロゴの一部で、濃い青とエメラルドグリーンで印刷する部分です。このままだと色ごとに版が分解できていないので、色が重ならないように版下を分解します。

 

 

濃い青の部分だけの版下↓

 

エメラルドグリーンの部分だけの版下↓濃い青の版下と重ならないように作ります。この作業は、とても精度を要求されるので
AdobeのIllustratorがないと難しいかもしれません。Photoshopなどピクセル描画のソフトでもできますが、解像度に依存するのでとてもデータが重くなってしまいますね。線幅を0.1mm増やしたい時など、Illustratorじゃないと簡単にできないです。

こんな感じですべての色の版下が重ならないように分解していきます。ただし意図的に重ねる部分は別です。

そして先ほど述べた版下を黒100%で作る理由。それはMD-5500を騙すためです。(笑)

 

※画像はネットからお借りしました。

MD-5500のインクリボンカセットには赤丸で囲んだようなバーコードが貼ってあり、これをプリンターが読み取って色を認識しています。ただ、発売されていた当時の色コードは数が決まっており、その後、象のロケットさんがリリースした特色リボンには専用の色コードがありません。そのため、バーコードは黒のものを使い、プリンターには特色を黒と認識させます。版下を黒100%で作っておくのはそのためです。例えば黒のバーコードが貼ってある特色レッドのリボンを装着すれば、プリンターは黒100%で刷っているつもりでも実際には特色レッド100%で刷られます。

バーコードで騙されるなんてかわいいやつだぜ(笑) ただ面倒なのは、特色リボンを一回ずつ入れ替えなければならないこと。特色の色数が

増えると結構面倒ですね。あと、リボンの装着や刷る順番を間違えると今までの印刷がすべてパーに。またうっかりほかの色のレイヤーを消し忘れていたりしてもNG。なんどやってもデカール印刷は緊張します。

 

 

刷り上がったデカール。最初のころと比べ失敗する確率が減りました(笑)

 

その他のtipsです。

・デカールのレイアウト

デカールのレイアウトは一見、自由に思えますが、何回も刷るうちに良いレイアウトと悪いレイアウトがあることに

気付きました。テールランプを刷る時を例にしてあげておきます。

 

 

要するに、重ね刷りをする際、なるべく同じところを印字ヘッドが通らないレイアウトを考えるという事。

大きなベタ面がある時など、これが全てではありませんが意識すると役に立つのではないかと思います。

あと、重ね刷りする版下はなるべく印字ヘッドのスタート位置の近くにレイアウトすること。

印字ヘッドの動作の起点から遠い位置で重ね刷りするとずれが大きくなる確率が増える。レイアウト上ヘッドから遠い位置で印刷するときは、なるべく単色のものをレイアウトする。

など。。。他にもいろいろありますが、今回はこの辺で。

 

最後に完成したチョロQの動画を載せておきます。

 

 

 

それではまた。