​講堂へと続く並木道、洗練されたファッションで笑い合う同級生の女子たちの横を、佐藤は視線を落としてすり抜ける。


​「……気持ち悪い」


​そう幻聴が聞こえるたび、彼の股間は熱く疼いた。


知的で高潔な彼女たちの冷徹な視線の下で、全裸で地面を這いずり回り、アナルにエネマグラをねじ込まれて、無様に快感の声を漏らす自分。


そんな妄想が、講義中の佐藤の脳内を支配していた。


​アパートへ帰り、一人きりの四畳半で道具を挿入する。


動画の中の女王様の罵声を聞きながら、腰の奥を激しく突き上げる波に身を任せる。


月に一度、家庭教師のアルバイトで貯めた金を握りしめ、M性風俗の扉を叩く。


女王様に罵倒され、前立腺を執拗に抉られる。


しかし、果てた後の帰り道、彼を襲うのは強烈な虚無感だった。


射精とは所詮、排泄欲を満たすだけの作業であり、終われば男の身体の憐れさを突きつけられるだけの行為でしかない。


​何より、風俗は商売だ。


彼女は役を演じているだけで、僕の本当の醜さを蔑んでいるわけじゃない。


彼が求めていたのは、金で買えない「真実の軽蔑」だった。


​そんな折、掲示板で見つけた『二人組の女子大生』による破格のオファー。


(……罠じゃないのか?)


慎重さが、警報を鳴らす。


ホテル代だけでいいなんて、裏に暴力団がいるのではないか。


美人局(つつもたせ)で、動画を撮られて脅されるのではないか。佐藤は震える指で、確認のメッセージを送った。


S: 本当にホテル代だけでいいんですか? 射精しないだけで良いのですか?何か目的があるんでしょうか。


​返信はすぐに来た。


目的は、あなたの身体がどう反応するかを観察すること。それだけ。射精なんて、単なる生理現象でしょ? そんなものには1ミリも興味がないわ。不応期に入って人格が変わるのも見たくない。私たちが去るまで、あなたは快感に悶え続けていなきゃダメ。


​その返信を読んで、佐藤は微かに息を呑んだ。


「射精に興味がない」という言葉の、あまりの冷淡さと潔癖さ。


それは、彼が日頃から大学の女子たちに感じている、あの「知的な拒絶」の質感そのものだった。


​その後のやり取りで、彼女たちが前立腺刺激のメカニズムを、医学的、あるいは純粋な好奇心から執拗に問うてくる姿勢に、佐藤の警戒心は次第に「安心」へと塗り替えられていった。


彼女たちは金が欲しいのではない。


ただ、自分の身体を、未知の現象が起こる「装置」として見たがっているのだ。


あなたはどうやって快感を得ているの? 具体的な方法を教えて。


S: ……エネマグラという器具を使います。


 いいわ。それを持ってきて。使い慣れたもので、あなたがどう壊れていくのか見せて。


​(……この人たちは、本物だ)


金銭への執着が一切なく、ただ他者の尊厳が解体される様子を眺めたがっている、残酷で無垢な観測者。


その確信が得られた瞬間、佐藤の不安は、かつてないほどの強烈な期待へと変わった。


​明日、高田馬場。


暴力団への恐怖は消え、代わりに、自分を優秀な大学生という殻から引きずり出す、二人の少女への渇望だけが残った。


佐藤は、カバンの中に冷たいシリコンの塊を忍ばせた。


自分の醜い欲望が、彼女たちの透き通った瞳に映し出されるその瞬間を、彼は狂おしく待ちわびていた。