オーガズムの反応曲線を学校の性教育で取り上げる国は、
ヨーロッパの先進国(例:スウェーデン、オランダ、フィンランド)や、カナダやオーストラリアである。
これらの国では、性の健康を「快感、関係性、自己認識」を含む広い概念として捉えている。
1. 中等教育初期(12歳〜14歳頃)
この時期は、日本の中学に相当する学年である。
ここでは、思春期の身体的な変化として、男子の射精(および夢精)と女子の生理(月経)の開始を教えられ、自分の身体で起こる変化を「正常な発達の一部」として、安心して受け入れられるようにする。
また、ペニスが生殖と快感の両方を担うのに対し、陰核が快感に特化しているという機能的な違いを教える。
陰核が、女子の快感の源泉であることを教え、性行為における焦点が、ペニスや生殖に偏りすぎるのを防ぐ。
2. 中等教育中期から後期(14歳〜16歳頃)
この時期は、日本の高校に相当する。
ここで初めて、具体的なオーガズム曲線と男女差の学習が導入される。
マスターズとジョンソンのモデル のような視覚的なツールを用いて、性的な反応が
「興奮→プラトー→オーガズム→解消」
という一連のサイクルを経ることが教えられる。
男性のオーガズムが一般的に瞬間的であり、その後に不応期という休息期間があること、
そして女性のオーガズムがより持続的であり、多重オーガズムの可能性があることを教わる。
この知識は、優劣を比較するためではなく、相互の身体を尊重し、理解するための基盤として位置づけられる。
2. 男性が劣等感を感じる可能性を減らす教育的配慮
これらの性教育では、男女の生理的な差が、男子生徒の性的なパフォーマンス不安や劣等感に直結しないよう、以下の点に配慮される。
① 「優劣の否定」と「多様性の強調」
- 男性の瞬間的なオーガズムを「貧しい」とする固定観念を否定し、その後の深いリラックスや解放感という男性特有の価値を肯定的に教わる。
- 男性の不応期は「機能の欠陥」ではなく、「身体的なリセットと保護の仕組み」であると、肯定的に受け入れられるよう導かれる。
② 「コミュニケーションと親密さ」への焦点の移動
- いかに女性をオーガズムに導くかという能力主義的な視点から、互いの性的な好みや不安を話し合うコミュニケーションへと移行させる。
- 女性の多重オーガズムの可能性を教える際は、「男性が達成すべき目標」としてではなく、「女性自身の身体の可能性」として扱い、性行為の主導権が必ずしも男性にあるわけではないことを教える。これにより、男性を過度なプレッシャーから解放する。
③ ポルノグラフィの批判的リテラシー
- インターネット上の性的な映像、特に、誇張された女性のオーガズムの映像が、現実の男女の性体験の比較対象として不適切であることを理解させ、映像による劣等感の形成を予防する。
これらの教育的配慮は、男性が性的な知識を「自己否定の根拠」ではなく、「相互理解と尊重」のために使えるようにすることを目的とする。