歯周病治療のブログはいよいよ佳境に入ってきました。各種検査を経てエアフローによる歯牙表面のバイオフィルム除去が終わり、いよいよスケーリングの段階へと進んできました。実際の臨床では恐らく2日目以降に相当します。

 

スケーリングとは歯石除去のことです。英語のScalingの原型はscaleで皮、うろこ、汚れをこそぎ取るというような意味があります。つまり、歯石を歯の表面から剥がすということを表します。歯周ポケットの浅いところ、すなわち歯肉の縁から約13㎜位までを超音波スケーラーや時にハンドスケーラーを用いて歯牙表面を傷付けない範囲できれいにします。

    
    ハンドスケーラーの図
 
 
この項で「第8回プラークコントロール」の項でお話ししましたプラーク(歯垢)、バイオフィルム、レッドコンプレックス、歯石の違いをおさらいしておきましょう。
 
プラーク(歯垢)は歯の周りに付くネバネバした白い汚れのことです。これは食べカスや漢字で表されている垢ではなく殆どが細菌集合体そのものです。プラーク1㎎中の細菌数は1億~10億、細菌の種類としては500~700種類存在します。
 
プラーク細菌群の中の3種類存在する歯周病原因菌をレッドコンプレックスと呼びます。
 
このプラーク(歯垢)が作り出す菌体外多糖体(ネバネバの本体)の外壁をバイオフィルムと呼びます。バイオフィルム内は細菌にとっての安全地帯で、有効濃度の50倍もの高濃度抗菌剤に対しても抵抗性を示します。このことが歯周病治療を難しくしているのです。
 
プラークは2日~14日間で唾液中のミネラル分を吸着し石灰化します。これが歯石で、主成分はリン酸カルシウムです。つまり、石灰化が起こっていないプラーク(歯垢)の状態でしたら歯ブラシや歯間ブラシ、デンタルフロスを用いてご自身でもクリーニング可能ということです。リン酸カルシウムとなってしまいますと歯科医院での除去=スケーリングが必要になるということです。歯石自体には毒性はありませんが歯石付着により歯牙表面が粗造になるとプラークが溜まりやすくなるので歯牙表面を傷付けない範囲で取り除きます。
 
ここで重要なのは歯周病の原因は「歯石」ではなく、あくまでも「バイオフィルム中のレッドコンプレックス」だということでしょう。1930年代~50年代までの教科書には歯周病の原因は歯石であると記されていたのは歴史的事実ですが…。何がなんでも歯石を完全除去するという考えは20世紀のお話です。21世紀ではバイオフィルム除去が最重要課題となっています。
 
歯石には軟らかくて白い歯石、硬くて黒い歯石の2種類があります。主に白い歯石は歯の付け根部分から歯周ポケットの浅めの範囲で付着し、黒い歯石は歯周ポケットの深めの場所にこびりついています。黒い色は歯肉から出血した際の血色素由来と言われてきましたが近年、歯周病菌のP.g.菌が作り出す色素由来という説も出ています。P.g.菌は「第5回レッドコンプレックスって?バイオフィルムって?」の項で登場した歯周病発生の原因菌です。
 
 
 
    
 
 
 

 

実際の症例として、ここでは下顎前歯の裏側にべったりと付着している白い歯石をご覧頂きます。白い歯石を放置すると歯根の表面がざらざらになり、更に細菌が溜まり易くなります。その結果、白い歯石の下方には酸素が少ない場所が出来て嫌気性菌が繁殖します。そのため黒い歯石が発生してきます。

 

術前)

    白い歯石がべったり

 

(術後)

      きれいになりました
 

 

おしまいにスケーリングでの使用器具をご紹介します。

 

ハンドスケーラー・・・スチール製スケーラー先端部に刃が付いていて歯石をこそぎ落します。ピンポイントでのスケ―リング時に効果的です。歯石が取れたか否かの判定が指先の感触から分かり易いのが利点です。以前は歯周病治療の主役でしたが、欠点としてセメント質を傷付けてしまうことがあるので出番が減って、ココ一番の時にのみ使用します。

▶ピエゾタイプ超音波スケーラー・・・毎秒28,000~32,000ストロークの振動を歯表面に当てその微細振動で歯石を粉砕します。当然摩擦熱が発生するので冷却水をかけます。冷却水には気泡が発生し、気泡が破裂する際のエネルギーで除菌と、空気を歯周ポケット内部に送り込むことで嫌気性菌の活性を弱めることができます。超音波スケーラーにはマグネットタイプとピエゾタイプの2種類がありますが、このピエゾタイプの方が歯の表面を傷つけず痛みも少ないです。また、歯根表面のセメント質を傷付けないという目的においてはハンドスケーラーより優れた効果が期待できます。九段ブルー歯科ではNSK社製バリオスとEMS社製ピエゾンの2種類のピエゾタイプ超音波スケーラーを使い分けています。

 

 

 

 

歯周病が進行し、歯周ポケットが6以上のところに対しては歯周内視鏡を駆使し、ペリオフローによる根面デブライドメントおよびピエゾタイプ超音波スケーラーで対応します。また時には歯周外科手術で対応します。これについては回を改めて解説させて頂きます。