今日ご紹介するのは、「草原の追跡」(1952年、Way Of a Gaucho)である。「おかしなおかしな大追跡」や「悪魔の追跡」は観たが、本作は初めて。タイトルだけだとアクションもののようにも感じるが、監督のジャック・ターナーの西部劇は、「インディアン渓谷」も「星を持つ男」も、メロドラマというか人間ドラマというか西部劇らしからぬ作品であった。本作も、アルゼンチンの民族“ガウチョ”の青年の生き様を描いたドラマである。

牧場手の息子のミゲル(ヒュー・マーロウ、右)と兄弟のように育てられたガウチョのマルティン(ロリー・カルホーン)は、パーティの席上でミゲルを馬鹿にした男と決闘し殺してしまい、投獄される。

服役中、先住民の討伐のために兵役にかり出されたマルティンの上官となるのがサリナス少佐だ。演じたリチャード・ブーンはまだ癖の強さはないものの、主人公の憎き敵役として存在感を見せる。

自由を奪われたマルティンは軍隊を脱走し、インディオに拉致されている女を助ける。紅一点のジーン・ティアニーは、「街の野獣」で本作のミゲル役のヒュー・マーロウと共演している。

1870年代、大草原パンパで暮らしていたガウチョ族が時代の流れに翻弄される様子や

アルゼンチンの大自然が描かれるが、ストーリー展開に緊迫感もキレもなく、日本では劇場公開されなかったのも何となく分かるような映画ではある。そういうところがこの監督らしいとも思うんだけど。

「野獣の街」と違ってジーン・ティアニーの出番はたっぷりあるんだけど、何か物足りなさを感じるんだよなぁ。

とはいえ、雰囲気のある面白い題材の映画であった。題材だけ褒めて映画は褒めないんかい。