今日ご紹介するのは、ヘンリー・ハサウェイ監督の「死の接吻」(1947年)である。

3人組の強盗が、白昼、ニューヨークの宝石商を襲う。

逃走の際に1人捕まってしまうのが主人公のニック。肉体派俳優として売り出したビクター・マチュアだが、どうみても少しボーッとしたところもありそうな前科者に見えないキャラで登場する。

ブライアン・ドンレヴィ演じる地方検事補のダンジェロは、ニックが共犯の2人を白状することを条件に減刑を持ちかけるが、仲間を裏切れないニックは拒否する。左は巡査部長役のカール・マルデン。

留置所で知り合ったのがギャングのユードー。リチャード・ウィドマークは私のブログで50年代の作品はいくつも紹介しているが、47年の本作はデビュー作であろうか。

冷酷な殺し屋を演じたウィドマークは、宝石強盗の一味の母親(ミルドレッド・ダンノック)を車椅子ごと階段から突き落として殺す。

ニックに優しいまなざしで歩み寄るが実は悪辣な弁護士という役を演じたテイラー・ホームズも印象に残る。

ニックが服役中、妻は自殺、2人の子は孤児院に入っていると、知り合いの娘、ネッティ（コリーン・グレイ）に知らされる。妻が生活に困窮して自殺というのは不自然だなと感じていたが、どうやらギャングたちに殺されていて、時代もあるのか、そのシーンがカットされているようだ。

警察に協力したニックは仮出所し、子供たちを孤児院から引き取り、

ネッティとも結婚して幸せな生活を送るが、ユードーが無罪となって出所してきてニックたちの復讐に燃えていることを知り、怯えるようになる。

まだ30代前半のウィドマークは、これでゴールデングローブ新人賞を獲得、アカデミー助演男優賞にもノミネートされた。彼がその後演じるようになる悪役の原型とも言える冷たい眼と不敵な笑みが映画の緊迫感を増している。

ヴィクター・マチュアの演じる主人公の表情が家族を得た後半は明るくなる。

いささか説明不足だと感じる部分もあるにはあるが、面白い映画である。犯罪映画でありながら、仲間を警察に売らず、家族は自分の手で守るという男のドラマでもある。ハサウェイ監督のドラマ色を抑えたクールなタッチもあって、俳優たちの個性のぶつかり合いが非常に好ましく、楽しめた一作であった。