今日ご紹介するのは、ブルース・ハンバーストーン監督の「アリゾナの決闘」(1948年、Fury at Furnace Creek)である。

 

舞台は1880年頃、銀鉱開発をしようとする白人と凶暴なアパッチ族との争いが勃発していたファーネスクリーク砦に、救援物資を送る幌馬車隊だったが、隊を率いるウォルシュ大尉はブラックウェル将軍の手紙で急遽、別の任務に就くことを命じられ、護衛なしで幌馬車隊を砦に向かわせる。

 

砦に到着した幌馬車隊にはアパッチたちが乗っており、人手の足りない砦の隊員を残らず虐殺する。

 

ブラックウェル将軍(ロバート・ワーウィック)は反逆罪で軍法会議にかけられるが、そんな命令もしていないし文書も知らないと言い張り、心臓マヒで亡くなる。

 

将軍の次男ルーフ(グレン・ランガン)は父の冤罪を晴らすため、父を陥れた犯人を突き止めようとする。

 

ここでようやく主役の登場だ。ヴィクター・マチュア演じるキャッシュは将軍の長男だが、家を顧みない放蕩息子だ。彼も父の死を知り、真相を突き止めようとする。

 

キャッシュが怪しいと睨んだのは町と銀鉱を牛耳るボスのレヴァレット(アルバート・デッカー、左)だ。キャッシュはその部下のアル(ロイ・ロバーツ)に近づき、レヴァレットの用心棒になる。

 

ファーネスクリークの町でばったり再会する兄弟だが、弟はそもそも兄を信用していないところに、兄がレヴァレットの用心棒になった理由を知らず、彼を軽蔑する。

 

紅一点はカフェの給仕モリー(コリーン・グレイ)。キャッシュと知り合って親しくなりかけるが、父をアパッチに殺された彼女は、キャッシュが虐殺の原因を作った将軍の息子と知り、距離を置くようになる。さらに彼がレヴァレットの下で働き始めたものだから、怒りも増す。

 

キャッシュの唯一の理解者がジョーンズだ。チャールズ・ケンパーは、脇役ながら非常に印象に残るキャラを演じた。

 

レヴァレットに利用され偽りの証言をしたウォルシュ大尉(レジナルド・ガーディナー)は真相を暴くための唯一のキーマンだったが、真実を手紙に書き残して町を出ようとしたところを殺されてしまう。

 

父親の汚名を晴らそうという目的が一緒ながら兄弟が協力できない、ヒロインも主人公を誤解したままという設定もよく、非常に面白い作品である。クライマックスでは、弟の兄への誤解も解け、キャッシュとレヴァレットの対決が描かれるが、そのあたりは実にあっさり、カラッとしていて、そこを長く重たくしないのが日本映画との違いかなぁ。

 

最近何度かこのブログで紹介しているコリーン・グレイだが、ビクター・マチュアとの共演は「死の接吻」で取り上げたばかり。満面の笑みと深刻な表情の対比が印象的だ。