今日ご紹介するのは、小林正樹監督の「いのちぼうにふろう」(1971年)である。

 

江戸深川の島地にある安楽亭というならず者たちの吹き溜まりを舞台にした、山本周五郎原作のドラマだ。

 

主演は仲代達矢。本作の脚本は彼の奥さんの隆巴(故・宮崎恭子)。

 

渋い俳優が勢揃いしている。まず、安楽亭の主人に中村翫右衛門、

 

その娘に、栗原小巻。

 

佐藤慶。

 

このほか、岸田森、草野大悟、滝田裕介、近藤洋介、山谷初男、植田峻

 

女衒に売られた幼馴染み(酒井和歌子)を助けようとする若者に山本圭。

 

八丁堀の同心に神山繁や中谷一郎。

 

無法地帯にぶらりと入ってきた酒飲みに勝新太郎。

 

無法者たちが一途な若者のために命を懸ける姿が観る者の胸を打つが、芸達者たちがそれぞれ個性を発揮しながらも、決してドラマチックに寄らず見せているところがいい。モノクロの光と影を見事に活かした乾いた映像と武満徹の音楽が印象的な一作だ。