今日の映画は、キャロル・バラード監督の「ネバー・クライ・ウルフ」(1983年)である。



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カナダのツンドラ地帯の大自然をバックに生物学者と幻のオオカミたちとの触れ合いを描いたドキュメンタリータッチの自然派映画だ。いや、こんな素晴らしい映画をこれまで見ていなかったなんて、実にもったいない。



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カリブー(北米トナカイ)の激減はオオカミにあるのではないか、ということから、調査目的で1人大自然に置き去りにされるように派遣されてきた若い生物学者タイラー(チャールズ・マーティン・スミス)が主人公である。


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現地まで古い飛行機で案内する豪快なロージー(ブライアン・ドネイ)とのかけあい、彼に荷物とともに氷上に放り出され、1人過酷な寒さの中で立ち往生するあたりの滑り出しもなかなか快調である。



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ひたすらオオカミを観察するだけ、という主人公。自然に逆らわない傍観者に徹することで、大自然の偉大さや、それを破壊する人間の卑小さや醜さを浮き彫りにする。C.M.スミスも好演である。



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主人公が大自然と向き合う様子を淡々と捉えるだけのカメラは、見る側を飽きさせない。人間の出番はほとんどない中、イヌイットのウテック(ゼイチャリー・イッテマンヤック)が、マイクという英語の話せるイヌイットの青年(サムソンメホーラ)が物語に加わってくる。砂糖のなめ過ぎで歯がほとんどないマイクの笑った顔と、日に日に自然に同化していく主人公の表情が対照的だ。



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関係ないけど、ウサギも登場します。が、オオカミに食べられるシーンのあるのは野ネズミ。



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ネズミに囲まれたキャンプで過ごし、ついにはオオカモと同じようにネズミを食べ始める主人公のシーンが凄い。



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カリブーの群れを追うオオカミたちのシーンで主人公はついに真実を突き止める。ウォルト・ディズニー・ピクチャーズの第1回作品ということだが、子供向けの動物映画とは一線を画した、大人向けの社会派映画とも言える。前半で自然の過酷さやそこで生活する人間の孤独感が淡々と描かれているだけに、ラストのあざとい人間たちの行動は、映画としては失速感を感じずにはいられなかった。とはいえ、印象的な作品であることには違いない。



「自然を大切に」「地球を守ろう」と声高に叫ばずとも、こういう映画を黙って見てれば、自ずと人間と自然との関係を考え直させられます。