愛すれど哀しく
¥3,591

今日の映画は1971年のイタリア映画、「愛すれど哀しく」。監督のマウロ・ボロニーニは前年の「青春のフロレンス」に続いて、マッシモ・ラニエリとオッタビア・ピッコロを起用している。


kazzpの音楽&映画-BUBU01
20世紀初頭のイタリア・ミラノ。洗濯女のベルタ(オッタビア・ピッコロ)は、パン職人ブブ(A・ファルジ)と恋に落ち、同棲を始める。トヨタのコンパクトセダンにも名付けられているベルタとは、「貴婦人」という意味らしい。なのに映画では貧しい女工です。


kazzpの音楽&映画-BUBU02
ブブは突然、働いていたパン屋を辞め、「俺は働きたくないんだ。おまえが夜の街に立って稼いでくれ」とベルタに頼む。なんたる身勝手な男。だが、ブブを失いたくないベルタは言われるままに娼婦になる。おいおい。ベルタが家を出るとき、父親は「おまえも姉のようになるのか」と警告している。ベルタの姉は娼婦となりヒモに貢いでいたのである。それを見ていたのに同じ運命を辿る哀れな妹。映画の導入部はどうみても、愚かな男女に反発心を感じずにはいられないが、物語はそんなことに無関係に、ますます不幸になるベルタを描く。


kazzpの音楽&映画-BUBU03
ベルタは、田舎から出てきたピエロ(マッシモ・ラニエリ)という若い男と偶然知り合い、恋愛感情が芽生える。自分を食い物にするブブと違って、ピエロはベルタを純粋に愛してくれているのだ。


kazzpの音楽&映画-BUBU04
こんな化粧してるのに、娼婦とは疑いもせず、思いを寄せるピエロ。


kazzpの音楽&映画-BUBU05

これなら気付くでしょ、ピエロ。


kazzpの音楽&映画-BUBU06
そのうちベルタは性病に罹って入院する羽目となり、おまけに、ピエロも病気を移されてしまう。「なんてことをしてくれたんだ」って、おい、ピエロ、いまさら……。


また、金づるを失ったブブも、盗みを働いて逮捕される。ブブの描き方も単なるヒモではなく、他の男に嫉妬する程度に独占欲や愛情があり、でも彼女を稼がせて自分は働かないというスタンスは明確、という点がユニークだ。


kazzpの音楽&映画-BUBU07
そのうちベルタの父親も死んでしまうが、姉に続いて娼婦になった彼女には居場所もない。

kazzpの音楽&映画-BUBU08
姉も病気となり、ヒモに捨てられるばかりか、病気が進行し、施設で生きる屍のようになる。頼る場所もなければ生きる希望も失ったベルタは、娼婦を天職と思うことで自分の人生を開き直ろうとするのだが……。そのあとの展開については見てのお楽しみ、ということにさせていただこう。



ボロニーニ監督、よくもこんな暗く哀しいメロドラマを作るな。まあ、私が70年代のトップ10に入れている「青春のフロレンス」も、ストーリーこそ違え、実に重苦しい雰囲気に溢れた映画であった。美しいヌードを披露したオッタビア・ピッコロだが、「アラン・ドロンのゾロ」などでのイメージよりは、こういう暗い映画の薄幸な女性のイメージのほうが個人的には強い。ていうか、スクリーンの彼女が幼気であるほど、「どうみても不幸な道を歩みそうな女性」にしか見えないんである。実際の彼女の声は顔から想像するよりはかなり低く、ここは岡本茉莉の吹き替えが欲しいところである。