何年か前から我が家で定期的にワインの会(うんちく一切なしの飲み会ですが)を開くほどワイン好きなので、今でもスーパーに行くとついワイン売場に立ち寄ってしまう。習慣になっちゃってるんだろうなぁ。だけど、何も買わずに帰ってます。


飲まない理由の1つは、薬を飲めなくなるから。1回くらい飲み忘れても大丈夫って薬もあるのだが、夜飲むのは抗血液凝固剤なのでそうはいかない。治療域と安全域(有効な量と、これ以上飲むと危険な量の差)が極めて狭いため、定期的な検査で投与量の調整をする必要があり、基本的には毎日決まった時間に飲むことになっている。もし夜に酒を飲んだら6~7時間間隔をあけてから薬を飲む必要がある。かといって服用を翌朝に回してしまえば、同じ日の夜は薬を飲めず、サイクルが乱れてしまう。酒を大量に飲んで薬も平気で飲んでいるという知り合いもいるようで、そんなに神経質にならなくてもいいのだろうけど、あまり好き勝手して病院に逆戻りするのは絶対イヤだ。


もう1つの理由は、量を飲めないから。今は自分で1回につき1杯(180mlまで)と決めている。だからコンビニにある300ml入りのワインを買ってきて、週に一度、体調のいいときに2日続けて150mlずつ飲むわけだ。これまでは週1日は休肝日を設けていたが、毎日飲んでいたので、720mlのフルボトルがコンスタントに空いていたのである。なのに、今はワイン売場で、「720mlのボトルを買っても余らせてしまうだけだなあ。4日かけて飲み干すのも避けたいし……」と思って、なかなか買えないんである。


でも、飲みたい日に飲みたいだけ飲んでいたこれまでと違って、たまにちょっとだけ飲むというのも、それはそれで、ささやかな楽しみである。ちょっぴり大げさだけど、生きてる実感の1つのようで何となく嬉しい。


無事助かって命の重さや1日1日の大切さが分かったし、リハビリで少しずつ外出したり歩き回ったりできるようになって、そうできることの楽しさを噛みしめられるようになったし、夜中まで仕事してろくに休みもなかった日々から一転、たっぷり時間を与えられて自分の生き方をゆっくり考える余裕ができた。いろいろ制限があったり不自由なことは増えたが、あれができないこれもできない、ではなく、以前より物事をプラス志向で捉えられるようになった自分自身に対して、「自分って、変わったなあ」と思う。