しかし、あれですな。これぞ The 出雲そば!
そう、お店の名前自体が「出雲そば」なのですよ。地元出雲や松江にもない、ある意味究極のお店。
看板倒れなのか、はたまたすごい出雲そばを食わせるのか.....いざ。
地下鉄日本橋駅から堺筋を北へ道頓堀を越えてすぐ東へ。
お店のビジュアルは....朽ち果てそうというか...ここだけ時の流れから取り残されてるというか。
入口の戸をガラリと開けるとただでさえ薄暗い店内が、黒塗りのカウンターや壁でさらに暗い!!
まともにな写真は撮れそうにありません。(↑↑↑案の定っす...)
黒塗りといっても昔の農家の煤けたような黒、オサレとは宇宙の彼方ほど離れたような空間。
壁には数百個はありそうなおびただしい数の蕎麦猪口がズラリ.....き、期待していいのか?
しかし、あれだ!!....お客はおろか人の気配自体がない。爆
一抹の不安を感じてると階段を下りてくる足音....
お正月に「8時だよ!全員集合!」のDVDばっかり見てたので、壁がどんでん返しになって青白い光に
照らされた老婆でも出てきそうな気がして。笑
下りてきたのは作務衣を着た仙人じみた風体のご主人。(たいして変わらんし。笑)
「いらっしゃい....ざるですかな?」
「いや...割子を。」
なんや、西部劇にでてくる場末のバーでの会話みたいになってきましたね。爆
しかし「割子」といった瞬間のキラリと光ったご主人の眼差しを見逃すはずもなく...(-_☆)キラーン
「ご主人、島根のご出身?」
とたたみ掛けてみる。
「お客さんも??で、どちらで??」
「美保関ですよ。」
「ああ、海のきれいないいところですな。」
息をそろえるかのように2人揃ってニヤリ....もう、余計な会話は要りません。笑
なんやもう時代劇の一場面みたいになってきました。( ̄▽+ ̄*)イズモヤ、ソチモワルヨノゥ....ホッホッホ
手際よく盛り付けられた割子は2枚.....水すら出てこず、最初っから蕎麦湯が.....うう。
薬味はねぎ、紅葉おろし、海苔の3種。
ひと目でそれとわかるお蕎麦は挽きぐるみ、かなり黒い。
しかし.....それにしても暗い!!ISO800にしても手ブレとの戦いである。その上に黒いお蕎麦。
ひとくちすすってみて、ここ何年かのわだかまりが解けるかのようなお蕎麦。 す...すごい!
わだかまりというのは、最近口にした出雲そばは黒くないのである。
出雲そば=挽きぐるみ、当然黒いはずなのにあまり黒くない....
端境期にしか帰れないというのもあるけど、島根に帰省して食べる蕎麦はどれも黒くないし、香りもそれほど
鮮烈ではない。こんなもんかな??と思っていたが、この店に来てその疑問が正しいということがよくわかった。
これぞ正真正銘の挽きぐるみ。
鮮烈な蕎麦の香りに、しゃきっとしたキレ。喉越しのよさはここからくるのだ。
もちっとした感じはボクの好みじゃないやね....なんか見透かされてるような気がした。
そして、蕎麦つゆが辛い。
そういえば、出雲に限らず最近食べる蕎麦はたいていつゆが甘い。
甘い蕎麦つゆは、蕎麦本来の香りが引き立たない、弱いのだ。
香りの強い挽きぐるみのそばなら尚のこと。
地元島根でも蕎麦つゆが甘い....ご主人も同じ意見であった。万人受けを狙った結果なのか??
本来の出雲そばを供するには、最近の松江や出雲は人が多い...
いや県民の絶対数は少ないけど....笑 つまりは観光客が多すぎ。
そして追い討ちをかける「だんだん」....に2人で爆笑。
夜は宍道湖七珍だ海の幸だといっても、お昼は出雲そばというのはとても多いはず。
出雲大社周辺なんて、あれだけのお客をさばこうと思えば、本来の出雲そばなんてきっとムリ。
ご主人との会話の中で最近出雲そばがイマイチだな、と思ってた疑問が解けていく。
出雲そばといいながら越前産や北海道幌加内産なんて蕎麦粉を使うところも多いし。
こちらの蕎麦は、島根県の三瓶山麓のもの(実は三瓶山あたりはもう石見なのだけど。笑)
そんなご主人に、奥出雲産の蕎麦を地元農家で栽培している一風庵さんを教えてあげた。
★島根県奥出雲町「一風庵」さんの記事はコチラ →★★★
気難しげなご主人だったが、帰り際には満面の笑顔。
なにか通じるものがあったのでしょう。
ここは多分流行らないな...本場出雲や松江よりも美味い出雲そば。
ボクだけのお気に入りにとっておこう....なんやストイックな蕎麦食いみたいな記事ですな。
なんていいながら,気になった方はぜひ行ってみて下さいませ。笑
あ、新蕎麦から春先ぐらいまでにしておいた方がいいです。
多分このご主人のこと、それ以外の時期はきっと機嫌が悪いに違いないですから。笑
■出雲そば
★地下鉄堺筋線・千日前線日本橋駅から徒歩5分