今年の春北九州へ行った時の話、到着したら北九州マラソンが開催されていた。昼12時ごろそのマラソンランナーがJR小倉駅の改札に吸い込まれる中で、もう一つランナーたちが吸い込まれる入口があった。
JRの改札から少し離れたところ、マラソンのイベントをやっている広場の前の北九州もモノレールの改札。小倉ー企救丘(きくがおか)を結ぶ北九州モノレールは1985年(昭和60年)に開業。
北九州の中心駅小倉とベットタウンを結んでいる同線は、平成24年には開業から乗客数が3億人を超え、北九州市民にとってはなくてはならない重要路線として今も位置付けられている。
その重要な生活路線として機能している北九州モノレールだが、この路線は日本でも珍しい変わった改札システムを採用している。
通常、切符を購入すると自動改札で切符を投入する方式が一般的だが、この北九州モノレールは写真のようにQRコードタッチする方式で、乗車券のQRコードが印刷されている。
自動改札を通る時にそのQRコードを読み込ませるのだが、乗車券の表に印字されているので券を裏向けて読み込ませる必要がある。
改札出場も券面を裏向けてタッチして、回収口に入れる。率直に言うとわざわざタッチする動作が1つ余計だと思えてならない。
そのあたりが普段、自動改札機に券を投入する方式に慣れきった初めて乗る人たちは戸惑ってくる。
乗り方の動画はこちら ↓ ↓
(動画は5分40秒あります。音量注意)
どこに改札機の投入口があるか探し回って駅員に聞いたり、やり方の勝手が違ったりして改札機を1回ですんなり通ることができない。
QRコード乗車方式に慣れた人は常識というか当たり前の目で見てくる人もいるが、この方式を採用している鉄道事業者は3事業者しかない。
この北九州モノレールと沖縄のゆいモノレール、広島のスカイレールの3事業者でいずれも鉄道の分類ではモノレールと新交通システムの事業者である。鉄軌道の事業者だとICカードの連携、切符の原紙共通化(関西の大手民鉄の券売機から出てくる切符の原紙の模様ははどの会社でも同じ)などで、逆にこの3事業者の方式を採用するとかえって非効率になる。
3事業者の言い分としてこのシステムを採用した動機とメリットは
① 鉄道会社が発行しているICカード(SUICA、ICOCA。九州だとJR九州のSUGOCA)のように切符をタッチするだけでスムーズに改札を通過できる。
② 従来の磁気式改札機で起こっていた券づまり、切符の取り忘れ、取り間違いがない
③ 改札口の取り出し口がないので、券づまりによる故障、中身の点検など機械のメンテナンス代が削減できる。
④ 切符の裏側に磁気加工をしないので、リサイクルが可能になる
こう見るとこの4つの理由のうち、③と④が経営的視点で①と②が現場視点に見受けられるが①に関しては利用した観点から反論をしたい。
正直、磁気改札機に慣れた私たちが初めて利用する改札システムは戸惑いが生じるものだが、その初めての人でもわざわざ駅員に聞く必要のないシステムではないと思う。
券をわざわざ裏を向けて切符とICカードと別にタッチするのは動線から言って無駄だし、また改札を出る時もタッチして回収口に入れるのも同じように動線の無駄だと思う。そこから見ると導入し始めの頃はさぞかし現場の人間は大変だったと思う。
それに初めて利用する人向けの改札利用の案内が何もない。主な利用客は地元の方なので必要ないかもしれないが、それでも何かしら案内が必要だと思う。
北九州モノレールの北九州空港へ延伸の話があるみたいだが、初見の客に対して利用の仕方について案内があると嬉しいところだ。私も勝手が違ったりして、一回では通ることができなかった。北九州マラソンのランナーの帰りの人でごった返していたので迷惑をかけたと思う。
④に関しては地球環境から見て優しいと思う。確かに使い切りの磁気券は特殊加工がしてあるので、処分するのは産業廃棄物扱いになる。
QRコード券は再生紙として利用できるので、逆に再生業者に買い取らせば資源になるのではないだろうか?そう考えると少し未来が見えてきそうな感じがする。
この方式を採用したのは北九州モノレールでは2015年。つい4年前のことで、自動改札機の紙詰まりなどのメンテナンス費用の削減など経費削減に向けた取り組みとして改札機の更新時に合わせて変更。
3事業者が導入を実現できたのは何れも事業規模が他の鉄道事業者に比べて小回りが利くこと、首都圏や関西圏など大都市ネットワークを形成する範囲の外にあることにある。
ゆいモノレールと合わせて使いづらいとの声があるが、この方式は将来JR東海が建設中のリニア中央新幹線の改札方式に採用される予定で、実際に実験線ではこの方式で乗降を取り扱っている。
いわば先取りした方式で、これから普及するかはさておき鉄道でのQRコード普及化の先鞭をつけたのは間違いないだろう。乗車に慣れないかもしれないが、これからの行方を見守りたいところである。