パイレーツ・オブ・ハロウィン(4) | 今村和代オフィシャルブログ「カラフルライフ~オレンジ色の雲のように~」Powered by Ameba

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ドクター・チョコレートハーツは、本棚に囲まれた書斎で、腕組みをしながら数時間立ち尽くしていた。

アルフレッドを甘口に・・・2歳を過ぎたばかりの幼い子供に施せた事といえば、言葉の刷り込みだ。
赤をみたら『ストロベリー』グリーンをみたら『メロン』オレンジを見たら『パンプキン』等、甘い言葉がすぐにでも出てくるように。
甘いお菓子を、一日5回。食事の度にデザートを。
インテリアは、全てお菓子の形に。
ドリンクには、砂糖を多めに。

アルは、おやつに対して喜ぶ事なく、甘くやさしい言葉を他人に伝える事もなく、既に5歳になろうとしていた。

年齢を重ねると、自然に『甘口』になった子もいた。
だが、アルフレッドにその兆候は一切見られなかった。

”ハニーバンチのパンは『辛口』だ”と『甘辛党』の連中がビラを撒いた為に「スウィーティハニィー」のパンは、あまり売れなくなっていった。兄弟達も、あまり笑わなくってしまった。
ハニーバンチ一家は、次第に笑わない日を過ごす様になった。

ドクターチョコレートハーツは、本当に悩んでいた.
3年前のあの日、キャシーとロンを落ち着かせる為に『古い医学書』の話しをしたものの・・・
あの医学書を本当に出すべきなのか・・・
あの医学書は、200年以上も前に書かれた物で、代々チョコレートハーツ家に受け継がれ、守られていたものだ。だが、あれを実践したところで、どれほどの効果があるのか知る物は、もうこの世にいなかった。

過去に、突然変異の『辛口』と診断された幼児がいなかった訳ではない。ただ、皆、軽傷だった。だいたい、4歳から5歳の間に、それとなく治る兆しが見え始めている。
だが、アルにはそれが見られなかった。

アルが6歳になった。
チョコレートハーツは、意を決した。

大好きな書斎の本棚の一番奥の棚の上から2番目の真ん中当たりを、拳でコツコツと叩き”すず”で出来た、シュークリームの飾りを右に4回、左に2回、最後に360度回転させた。
キィーという音をたてて、隠し扉が現れ、その中から、高さ15センチ、奥行き50センチ、幅30センチの分厚い、少し破れかけた表紙の、明らかに古い本を引っ張り出した。

2、3度息で埃を吹き飛ばし、表紙を手で撫でると

『辛口を甘口にする100の治療法』著 エバンス・チョコレートハーツ

とあった。
そう、エバンスとは、ドクター・チョコレートハーツの曾曾祖父だった。

チョコレートハーツは、エバンスに祈る様な気持ちで、その医学書の表紙を開いた・・・

ペタしてね

続(といいね?)