パイレーツ・オブ・ハロウィン(3) | 今村和代オフィシャルブログ「カラフルライフ~オレンジ色の雲のように~」Powered by Ameba

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「キャシー、君たちに折り入って話しがある」
アルが2歳を過ぎた頃、キャンディーランドの唯一のお医者様、ドクター・チョコレートハーツが、ハニーバンチ家に電話をかけて来た。

「いったい、どうしたの?ドクター?」
「電話では、話せない。直接、君とロンと二人に話しをしたいんだ。今日の午後二時、診療所に来てくれないか。」
「ええ・・・わかりました」

電話を切ったキャシーは、いつもとは違うドクターの声に、少し胸騒ぎを覚えた。

「ロン!ロン!」

そのキャシーの不安げな呼び声に、ロンも、いつもとは違う何かを感じていた。

そして、約束の午後2時。

二人は、パン屋を、アルバイトのメアリー・キュートに任せて、診療所にやってきた。

不安な気持ちで、診療所の扉を開けた。

「わざわざ呼び立てて、悪かったね.だが、とても大事なことなんだ」と、ドクターは、二人を見るなり言った.
「いったい、何ですの?ドクター」キャシーは、不安のあまり既に泣きそうな顔になっていた。
「やけに不安な気持ちにさせるじゃないか。よしてくれドクター」ロンも、同じ様な気持ちだった。

キャンディーランドには『不安』なことが、ほとんど起きない。二人とも、そういう感覚になれていないのだ。どれほどの、気持ちだったであろうか。

「実は、アルのことなんだ・・・」
「アルの?!」二人は、同時に叫んだ。
「そうだ。君たちは、気づかなかったかい?」
「え?どういうことですの?」
「彼の言動についてさ」
「アルの・・・いや、まさか・・・少しそうかなと思った時もあるが・・・」
「キャシーは?」
「・・・いったい、何ですの?気づくとか、そうかなとか・・・」
「覚悟して、落ち着いて、これから私の言う事を聞いてくれ・・・」
「・・・はい」二人は、唾を飲み込んだ。
喉が渇く。一体、何だって言うんだ・・・ドクター・・・


「アルフレッドは・・・辛口だ・・・」
「?!!!」
「ドクター、今なんと?・・・」キャシーは、思わず聞き返した。
「アルフレッドは、辛口なんだよ、キャシー・・・」ドクターは、繰り返した。今度は、さっきより、しっかりと、はっきりした声で。
「・・・やっぱり・・・」ロンは、うなだれた。
「やっぱりって、あなた・・・ロン、どういう事なの?」
「ドクター。アルが、辛口って、そんな・・・何故です?ルドルフもマイケルもアランもレオナルドも、皆純粋な甘口ですわ。先祖代々両家ともに、辛口は、一人もおりません!!」
「突然変異なんだよ。キャシー」
「そんなこと!!信じません!!私は、絶対に信じるものですか!!!」
「キャシー、ドクターの診断だよ。それに、私もアルが、辛口なんじゃないかと思った事がある」
「いつ?!いつですの?あなた!!」
「もう、2ヶ月前からだ」
「2ヶ月前?・・・」キャシーは、思い起こそうと必死になった。
「そうだよ。覚えていないか?アルに、初めてクレパスを渡した時を・・・」
「クレパス?」
「そうだ」
「あの子は、赤いクレパスを見て、言ったんだ・・・『パッパー』と・・・」
「それが?あの子は『パパ』と言いたかったのでしょう?」
「違うよ。キャシー。『パッパー』だ。『ペッパー』だよ。キャシー・・・『レッドペッパー』だ・・・」
「嘘よ!!!そんなはず・・・」
「私も嘘だと思いたかった・・・でも、グリーンを見せても、ブラックを見せても、『パッパー』と発音したんだ。これは、明らかに噂に聞く『辛口』の証拠なんだよ」
「ロン!それ以上嘘をついたら、私だって『辛口』になるわよ!!」
「嘘じゃない!オレンジを見せたら『チリ』と言ったんだよ!このキャンディーランドで、誰がそんな言葉をいたいけな子供に教えると云うんだ!!!」
「だって!!!」
「二人とも、落ち着いて。ショックなのはわかるが、一生『辛口』と決まった訳じゃないんだよ」とドクターは言った。そして、こう付け加えた。
「古い医学書に、色々な方法が書かれてある。試してみよう。何とか『中和』して、キャンディーランドで生きられる様に・・・」

それから、ハニーバンチ一家とドクターチョコレートハーツの『アルフレッドを『甘口』にさせる闘いが始まったのだ。
それは、幼いアルフレッドにとって、大変な試練となるのであった。


続(きそう?)

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