「時空警察ハイペリオン」は主演俳優が宣伝したがらない(彼が悪いわけではありません)、ながら森久保氏や寺島氏のお陰で単館公開映画としては一応成功したと言えると思う。DVD化や番組販売もされ、現在も観る事が出来る(らしい)。

森久保氏と寺島氏とはその後「時空警察ハイペリオン 幕末異聞伝」というドラマCDを作った。

なんと新田一郎氏のプロデュースとなり、実際聞き応えのある、「音のドラマ」になっている。

畑澤のドラマCD演出デビュー作でもある。

念願だった幕末もので坂本龍馬を小野大輔氏に演じてもらいたかったから企画したものでもある。高杉晋作を鈴村健一氏が演じていて、どちらも「このまま実写映画化するなら」というキャスティングだった。

同時期に「時空警察ヴェッカー」がちょうど10周年となるので、これを記念に舞台化したいという話が来た。

寝耳に水の話で、僕は考えもしなかったから、もともと劇団出身の舞台役者だった森久保祥太郎氏に一任しようとした。舞台の事はよくわかっていないので、大好きなフランス革命を題材にした壮大な原作を書いた。実際森久保氏が演出する(ただし出演はしない)という事で進み始め、脚本をまた兵頭一歩氏にお願いした。

暫く本業(サンライズの実写映画化企画が奇跡の東映との合作!?と言う話になりかけていた)が忙しく、舞台の方から離れていたが、キャストも決まり順調そうだった(これは唯一自分がオーディションに参加していない作品になった)が、突如、本当に突然、森久保氏が降板となった。理由を聞いても主宰者はちゃんと説明してくれない。森久保氏は「一方的に説明もなく下ろされた」と怒っていた。森久保氏には1ミリも否はなかったと思う。

悪い事に、その代役を畑澤自身が仰せつかる事になった。主宰者側は「最初から畑澤さんにやって欲しかった」と言うから、余計森久保さんに対して立場がない。

今さらながら、誓って、僕は自分から「舞台の演出をやりたい」と言ってないし、この後も自分で申し出た事は一度もない。今でもただただ、森久保さんには申し訳なく、顔を合わせるのも気まずくなって、「幕末異聞伝」の続編や映画化の話も消えていった。

キャストも自分で選んでいない(鮎川穂乃果だけ推薦した)、原作者としてしか内容も打ち合わせしていない中、人生初の舞台演出を(本当にいきなり)する事になった。

山沖勇輝、磯貝龍虎、紅葉美緒、八戸亮といった今も2,5次元舞台などで活躍中の俳優陣のお陰で、何よりアクション演出をして頂いた岩田栄慶氏のお陰で、どうにか演劇ぽく仕上がっているが、フランス革命を題材にする、と自分で決めたて書いた原作を処理するのが本当に大変だった(巨大なギロチン台も作った)ty。いささか不本意だけど「時空警察の舞台の中で一番好きです」と言ってくださる方も未だに多い。

当時AKB在籍中だった仲谷明香さんが、この作品を機に「役者」として目覚めたと後日(「同じく共演していた花原あんりさんと共に「時空警察シグレイダー」の舞台に出演してもらった時)聞かされた時は驚くとともに、ただ自分の事だけに必死でやっただけの作品でも何か人の役に立つ事はあるものだ、と思った。

 

思えばこの後の10年は(日本では)舞台ばかりやってる人になってしまっている。「時空警察シリーズ」に関する遺恨も、この舞台で主宰者と権利者(と称する会社)が揉めた事に端を発している気がする。

森久保さん達と(不本意な)別れをし、サンライズも経営者が変わり、新経営者に「サンライズは実写作品は作らない」と今さらな事を言われ、お役御免になった。その後、企画室自体がなくなった。

前述した通り「ハイペリオン」の映画・DVDは堅調だったから、これが原因ではないけれど、気が付いたら自分の会社が大赤字になっていた。社長とは名ばかりで、経営を他の人に任せていた所為なのだけど、責任はすべて社長である自分が負わなくてはならない。

結局この会社は倒産を余儀なくされた。この頃の負債の一部は今も僕自身が支払い続けている。

この頃同じく「時空警察ヴェッカー10周年企画」として「時空警察ヴェッカーDNS(デッドリーナイトシェード)」という作品を脚本・監督している。一応劇場映画として作られているが、今も書けない(書きたくない)諸々の理由で、映像クオリティとして目を覆いたくなる部分が多い。脚本は(自分で書いて)とても気に入っていたし、中塚智実さんや松橋ほなみさん等(この作品の山沖勇気はとてもいい!と思う)役者陣もとても頑張っていて、思い入れもあるのだけど、制作過程にいろんな事があり過ぎて、思い出すのがつらい。ちょうど東日本大震災が起きた頃(その日、神戸の震災跡地でロケしていた)でもあり、撮影しながら「時空警察シリーズ」も10周年にして、これが最後かなぁと思っていた。

会社の事もあり、その頃、自分を取り巻いていた、自分自身も発していたであろう負のエネルギーが、いろんな方々に知らずに迷惑をかけていただろうと思う。

負のループというのは連鎖して続くものである。そういうフェイズなんだと諦めるしかないのだけど、この時期は本当に辛い事が折り重なった。

 

映画「ヴェッカーDNS」は残念?な結果に終わったが舞台「ヴェッカーSIGHT」は好評で、舞台DVDも異例に売れたらしい。

「DNS」に出演した中塚智実さんが、同じ頃(「SIGHT」と同じ同じ劇場で「SIGHT」の直後に)旗揚げ公演をしていたアリスインプロジェクトの舞台にも出演していた(タイトルも似ていた。ちなみに「デッドリーナイトシェイド」花の名前で「ベラドンナ」の別名)事もあり、同主宰の鈴木正博さんと知り合い、(「次のうちの公演やってくださいよ!」と言ってくれた。

 

当時「DNS」の完成に(資金的な面も含めて)協力して頂いたサラエンタテインメントさんと包括契約していたので、サラさん主催でという事なら、という事でお引き受けした。

…という訳で、「時空警察ヴェッカー・ノエルサンドレ」と続く「彷徨のエトランゼ」はサラエンタテインメント主催であり、アリスインプロジェクトさん主催の時空警察シリーズは「時空警察ヴェッカー1983」(とその外伝の「いマジカルマテリアル」)と「時空警察クロノゲイザー」だけ。つまりアリスイン舞台で僕は1本も脚本・演出していないという事になります。

 

いずれにしろ「時空警察シリーズ」は舞台という、もしかしたら作品に最適な「舞台」を得て、その後の10年を生き永らえた事は間違いない。

 

残念ながら。