4月23日予算委員会議事録 | 丸山和也 オフィシャルブログ「みんなで創ろう感動と挑戦」Powered by Ameba

4月23日予算委員会議事録

○丸山和也君 自由民主党・無所属の会を代表して、私、丸山和也が質問させていただきます。
 今日は時間限られておりますので、安倍内閣といいますか、安倍政権の基本にかかわる、あるいは政治の根本にかかわるような問題と私がとらえるものについて限定してお聞きさせていただきたいと思っています。
 まず総理、総理の出された今年の一月出版になっています「新しい国へ 美しい国へ完全版」という御本がございます。この本をずっと読ませていただきまして、最終ページ、二百五十四ページにこう書かれております。若干要約させていただきますが、日本が抱える課題を列挙してみると、拉致問題、領土問題、日米関係、あるいはTPPのような経済問題でさえ、その根っこは一つのように思えますと。つまり、いろんな問題があるけれども根っこは一つだと。そして、まさに戦後レジームからの脱却が日本にとって最大のテーマでありますと、こういうふうに述べておられます。
 非常に明瞭簡潔な力強い言葉と思うんですけれども、これについて一言御説明をいただきたいと思います。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 戦後の日本、自由や民主主義、基本的人権、平和主義、私たちが確立したすばらしい概念、哲学は、もちろん今定着はしているわけでございます。これは、戦後の歩み、評価すべき点だろうと、こう思うわけでございますが、同時に、七年間の占領時代に言わば占領軍の手によって、事実上占領軍の手によって憲法等、あるいは教育基本法もそうですが、占領時代につくり上げられた仕組みがあるわけでございまして、その中においてやはり真の独立を取り戻す上においては、私たち自身でしっかりと自分たちの基本的な枠組みをつくり直していく必要があるだろうという考えであります。
 憲法の前文にこうあるわけでございます。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」。自分たちの国民の安全、命を他国の人たちの善意に委ねていいか、このこと自体を疑問に思わない方がおかしいというのが私の考え方でございます。
 やはりこうした仕組みを基本的に変えていくことによって我々は真の独立の精神を取り戻すことにつながっていくと、こう信じております。

○丸山和也君 そうしますと、戦後レジームからの脱却の中で、憲法問題というのはやっぱり避けて通れないというか、あるいは根幹にかかわる問題だというふうに考えてよろしいわけでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 私は、根幹にかかわる問題であると、このように思います。ですから、第一次安倍政権において、これは議員立法でありますが、国民投票法の成立について全力を尽くしたところでございます。

○丸山和也君 私も六年前に、前回の選挙で国会に来たわけでありますけれども、ちょうどその六年前、今ごろでしたか、テレビで中曽根元総理がインタビューに答えられていて、その中で、やっぱり憲法改正という問題を、これをやらないことには日本の国というのは、何というか、立っていかないんだと。当時は戦後政治の総決算というような言葉も使われていたように思うんですけれども、訴えられておられまして、それを聞いて、私、偶然テレビを見たんですけれども、まあ打たれたような気持ちになりまして、今から思い出すと、テレビの前で正座して聞いていた記憶があるんですけれども。
 やはり憲法問題というのは人間でいえば背骨のようなもので、国家にとってはもう背骨のようなものでありますから、これをしっかりとしたものにしないことにはやっぱり日本の国というのは根幹が成り立たないと思うんですけれども。
 すると、具体的には、ただ、憲法改正というのは両議院の総議員の三分の二の賛成で発議するとなって非常に厳しいんですけれども、これは、すると、改正手続に関する、まずそこから改正といいますか、臨んでいこうとお考えになっているんでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 我が国は憲法を制定して以来、六十数年にわたって全く手を着けていないわけでございます。諸外国はもう何回も憲法を改正しております。同じ敗戦国でも、ドイツは五十回以上改正を行っているわけでございまして、なかなかこれができなかった。自由民主党も綱領に掲げながらチャレンジ自体をずっと見送ってきたのでございますが、なぜかと言えば、やはりこの改正条項が非常に厳しいこれは改正条項になっているわけでございまして、そこで、やはりこれは、政治は現実でありますから、憲法を改正するための三分の二の多数を形成する上において、九十六条の改正ということにあっては、多くの議員のこれは賛成を得ることができるという判断の中でまずは九十六条から、これは国民の手に憲法を取り戻すことにつながっていくわけでありまして、私は、自由民主党総裁としては是非この九十六条の改正にチャレンジをしていきたいと、このように思っております。

○丸山和也君 すると、もうこの七月に参議院選挙も近づいているわけですけれども、参議院選挙においてこの憲法改正というテーマを一つの柱として掲げて戦うおつもりはございますか。その点についての御意思を確認させていただきたいと思います。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 昨年の衆議院選挙の我が党の公約の中にも九十六条の改正が入っているわけでございまして、当然この七月の参議院選挙においても我々は堂々と九十六条の改正を掲げて戦うべきであると、私は、総裁としてはそう考えております。

○丸山和也君 とりわけ、参議院というのは衆議院と違って大所高所から物事を判断するという良識の府と言われていますから、やはり憲法問題というのは非常に参議院にとってもふさわしいテーマだと思うんですね。ですから、是非参議院選挙においてはその点も堂々と掲げて、党の主張としてやっていただきたいと思います。
 それから、選挙の話が出ましたので総務大臣に少しお聞きしたいんですけれども、参議院選挙に関しまして、私は全国比例から出ているんですけれども、これが投票方法の仕組みが非常によく理解されていないと。衆議院との混同、あるいは党名で書く、個人名で書く、この違いがどういう効果を、結果をもたらすのか全く理解されていない。そういうことなので、つまり個人名で書く人が圧倒的に少なく、六割、七割の人が党名で書く、そして順位は何番だと、こういうふうに聞かれるんですね。
 これはやっぱり個々の投票者の意思からしますと違った結果が生まれてきているということで重大な問題だと思いますんですが、総務大臣、この点についてどういうふうに改善しようかと、あるいは努力されるのか、していただけるのか、お答えいただきたいと思います。

○国務大臣(新藤義孝君) この参議院の比例代表制度、これは昭和五十七年に導入された拘束名簿式比例代表制、こういったものがございました。しかし、これは候補者の顔が見えない、それから過度の政党化を招く、そして政党が行った順位付けによってそれが有権者にとって分かりづらいと、こういうような課題がございました。そういった批判にこたえて、国会等による議論によって平成十二年から、今委員が御指摘の議員立法による法改正でございますが、非拘束名簿式比例代表制と、このようになったということであります。
 この非拘束名簿式比例代表制、これは全国を単位で行っています。そして、候補者名又は政党名のいずれかを記載して投票すると、こういうことでございますが、導入されてからこれまで四回の参議院選挙で行われております。かなり、御存じの方もいらっしゃると思いますが、委員が御指摘のように分かりづらいということもありますね。
 要するに、参議院の選挙は投票が二回だと。最初は個人の名前を書く、選挙区の選挙を書くと、それが一回目。二度目は、これは比例代表の選挙であって、そのときは候補者名若しくは政党名を書くということでありまして、それは自分が応援したいなという人のお名前を二度目も書いていただく若しくは政党名を書くと、こういう制度でありますから、これをきちんと周知徹底をしてまいりたい。また、選挙管理委員会等に御連絡をさせていただいて、それらの広報についてもしっかりと取り組ませていただきたいと、このように考えております。

○丸山和也君 今日テレビを見られて少し分かった方も多いかと思うんですが、是非政府においても周知徹底、啓蒙をしていただきたいと思います。
 次に、いわゆる歴史認識問題ということについて質問させていただきます。
 配付させていただいています資料、いわゆる村山談話ですね、戦後五十周年の、出された村山談話、これについてお聞きしたいんですけれども、これについての評価がいろいろ分かれております。昨日も白眞勲君、先生から質疑がございましたけれども、私はこれを読みまして非常に問題があると思っている。
 どの部分が特に問題があるかということは、最後から二段目の「わが国は、遠くない過去の一時期、」、ここの部分ですね。この中でどこが問題かといったら、三点問題がございます。
 まず第一、「遠くない過去の一時期、」、これは歴史の評価としていつを指しているんですか、いつからいつまでですか、全く明らかになっていない。「国策を誤り、」、どういう国策を誤ったのか、どういう国策を取るべきだったのか、全く触れていない。「植民地支配と侵略によって、」、この植民地支配と侵略という、植民地いわゆる政策。植民地というのはいろんな定義がございます。西欧列強がやった、イギリスのインドの支配のようなものもありますれば、日本の例えば植民地と言われている日韓併合、国と国との合意によってなされた、こういうのもございます。
 ですから、ここら辺も全く中身を吟味しないまま、とにかく曖昧なまま済みませんというような、事なかれ主義でうまく仲よくやりましょうよみたいな文章になっているんですね。こういう談話であっては歴史的価値は全くないと私は思うんですね。
 これについて総理はどのように思われますか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) ただいま丸山委員が質問をされた点は、まさにこれは曖昧な点と言ってもいいと思います。特に侵略という定義については、これは学界的にも国際的にも定まっていないと言ってもいいんだろうと思うわけでございますし、それは国と国との関係において、どちら側から見るかということにおいて違うわけでございます。
 そういう観点からも、この談話においてはそういう問題が指摘をされているというのは事実ではないかと、このように思います。

○丸山和也君 これは非常に難しい問題ですから、歴史を一刀両断になかなか評価することは難しいと思うんですけれども、そこにおいて、例えば日韓共同歴史研究というのが過去にもここ十年の間に何度かやられております。その成果を見ましても、余り成果が上がっていないと、ほとんど平行線のようになっているように思うんですが、これは誰に聞こうかな、文科大臣ですかね、これの評価といいますか、お聞きしたいと思うんですが。

○国務大臣(下村博文君) 歴史認識について関係国が共同研究をすることは、私は大切なことであるというふうに思います。
 しかし、御指摘のように、なかなかそれぞれの国の歴史観、共有できる部分と独自の考え方で共有できない部分がある中で、今まで共同研究を日韓でしてまいりましたが、十二分な共通認識、かなり古代とか昔の話については一部共通認識を得られた部分がありましたが、それ以外の部分についてはなかなか難しいという状況があることは事実でございますが、お互いにしかし今後とも努力をしながら関係学者によって共同研究を続けるということは必要なことであるというふうに考えます。

○丸山和也君 例えば、その歴史、共同研究するに当たっても、もし韓国側がいわゆる反日教育という中でそれを、その運動の一環としてやっているんであれば、幾ら学術的に一生懸命やろうとしてもこれは永遠にかみ合わないわけですよ。
 ですから、私が提案したいのは、例えばアメリカとか第三国、あるいは第三国に属する歴史学者とかそういう方を、第三者を入れた形で共同研究をやっぱりやらないと、これはもう政治的パフォーマンスの場になってしまっていつまでたっても結論が出ないと思うんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(下村博文君) 学者ですので、第三者というのがどういう視点での第三者というのは、これはなかなか、学問的な見地からですから、どこの国の学者が望ましいということは、やはり歴史観ですのでなかなか言えない部分があるというふうに思います。
 ただ、より客観的な学者の方々に集まっていただいて共同研究をするということは望ましいことであるというふうに考えます。

○丸山和也君 例えば、私ここに持っている、カーター・J・エッカートという、これはハーバード大学の朝鮮史の専門教授なんですよね。それで、この方が「日本帝国の申し子」という日本語に訳されている本を書かれている。これをいろいろ見ましても、こう書かれているんですね、日本のことを言っているんですが、圧制者であると同時に、社会経済の変化の推進者でもあったとか、植民地であったにもかかわらず工業が著しい発展を遂げたと、植民地下という状況にありながら、多くの朝鮮人がその工業発展に積極的な役割を果たしたとか、日本の日韓併合なくして朝鮮の発達はなかったと、近代化、工業化、まさに非常に貢献したと、ここらはイギリスのインド支配なんかと全く違うというようなことを指摘しているんですね。
 こういう貴重な、やっぱり客観的な学者ですよ、こういうのを取り入れてやっぱりいろいろ研究しないと、日韓共同研究の歴史研究というのは単なるパフォーマンスに終わってしまうと思うんですが、文科大臣、もう一度お願いしたいと思います。

○国務大臣(下村博文君) それは、おっしゃるとおり、的確な御指摘であるというふうに思います。そういう意味で、日韓問題についても、歴史観、第三者的な立場から、世界史観から見る中でそういう方々に入っていただくというのは、これはより望ましい方向になる可能性というのはあるかと思いますし、貴重な提言であると思います。

○丸山和也君 私がなぜこういうことを言うかといいますと、やっぱり安倍総理の深いお心の中にもあるんじゃないかと思いますけれども、やはり日本という国あるいは日本国民というのがやっぱり一つの気概を失ってきたと、あるいは経済発展、そちらにばかりに行って、本当の日本人の魂といいますか気概というか、そういう、これは教育にも関連してくるんですけれども、そういう点が非常に弱くなってきたと、こういうことが政治のあらゆる面に出てきているということから、私は、歴史認識の問題というのは非常に大事だと思っているんですね。
 ですから、非常にこれは議論の多い部分でありますけれども、タブーを恐れずに、やっぱり歴史認識、いわゆる自虐史観というのもございますけれども、そういうのを排していくためには、まさに安倍政権として蛮勇を振るって進んでいただきたいと思うんですが、総理の御決意をお願いしたいと思います。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) まさにこの歴史については、認識という側面と、一方、ファクトの積み上げの側面もあるわけでございまして、今、丸山委員が挙げられた本でございますが、他方、その本にも触発されて、ソウル大学の一員の方が、いわゆる日帝支配時代になぜ人口が増えたかという観点から分析した資料もあるわけでございます。
 そのように、やはり冷静に客観的な事実について議論をしていくということが極めて重要だろうと、このように思います。日本はどちらかといえば、言わば政治の場で論じますとそれは直ちに外交問題としてこれは波及してくるわけでございまして、外交問題ということになることによって、我々はむしろ、それは違うということについても一切、実は違うんだということを分かっていながら口をつぐんできた、言わばタブー視してきたのも私は事実ではないだろうかと思うわけであります。そういう意味においては、政治の場で議論をせずに、言わばアカデミックな議論を学者同士がちゃんとそれぞれの学識を懸けて議論をするべきだろうと、このように私は考えております。
 そこで、前安倍政権時代に共同研究をスタートしたということでございまして、ただいま委員が御指摘いただいたように、日韓だけではなくてもう少し範囲を広げてもいいのではないかということは、なるほどそうだなと、今拝聴していてそのように感じたような次第でございます。

○丸山和也君 私が約三十年、あるいは三十数年前にアメリカに留学して、仕事をして、それからロサンゼルスで働いていたときに、ある韓国人のもう高齢な弁護士さん、著名な方でしたけれども、アメリカに帰化した方でしたけれども、こういうことを言われたんですね。私はそれ非常に残っているんですけれども、丸山君、日本人はしっかりしてくれよと、もう三十数年前ですけれども、これはもう世界広しといえども今までアメリカに向かってがっぷり四つで正面から戦争して戦った国は日本しかいないんだよと。その善しあし別にして、また、負けたけれども、アメリカに堂々と真っ正面から戦った国がどこにあるかと。アジアにあったかと、中国ができたかと、朝鮮ができたかと、インドができたかと、あるいはほかの国ができたかと。その気概というか、その魂をやっぱり忘れちゃ駄目だよと。これ、アメリカに対しても言っているんだと思うんですけど、そういうことをおっしゃった。もう私よりも三十以上上の方でしたから六十ぐらいの方でしたけれどもね。だから、これは私はある意味でショッキングだったんですけど、非常に感銘を受けたんですね。
 やっぱり日本人が、評価はいろいろありますけれども、そういう世界に打って出るというか、日本人としてのプライドを持って世界に冠たる姿勢を示す、日本人の気概といいますか、そういうものが全般的に今非常に弱くなっているということについて、私は歴史認識も含めて非常に大きな原因があると思っているんですね。ですから、是非その点については、生意気なことを言うようですけれども、安倍政権のこの政権においてしっかりしたかじ取りをしていただきたいと、是非お願いして、この点に関する私の質問を終わらせていただきます。
 次に、今日の言わば本題なんですけれども、約二年半ほど前に尖閣諸島の漁船衝突事件が起こりました。(資料提示)
 この点について、ちょうどあれが起こったときに、釈放が決定したときに、私は当時の官房長官仙谷由人氏に電話をしました。そして、これは法に従って裁判もしないで処分保留で釈放してしまうというのはどういうことだと、こんなことをしていたら日本は中国の属国になってしまうんじゃないかという会話をした記憶がございます。そのときに、いや、そんなことをしたらAPECが吹っ飛んじゃうよと、それに今更もう属国もないだろう、もう属国だよというような趣旨の発言をされた。
 それで私は非常に立腹して、今もその問題を追及しているんですけれども、これに対する当時の、菅内閣ですけれども、その扱いについては総理はどのようにお考えになっていますか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今、個別の出来事については余りコメントをするべきではないとは思いますが、当時の言わば中国のそうした漁船等々の領海侵犯あるいはまた領空侵犯等に対する行為に対して、日本側の態勢の基本的な方針は私は極めて不十分というか間違っていたと、このように考えます。安倍政権においてその対処方針を基本的に改めたということは、もう既に衆議院の予算委員会でお話をさせていただいたとおりでございます。
 基本的には、それぞれ司法の役割もありますが、日本の領土、領海を守る、この責任を最終的に負っているのは内閣総理大臣でありますから、内閣総理大臣が確固たる決意を示すのは当然のことであろうと私は思います。

○丸山和也君 これは二つの問題があったと思うんですね。
 一つは、中国からの恫喝におびえて法を無視して釈放してしまった、こういう外交政治上の問題。もう一つは、やっぱり官邸主導で釈放したと、地検に命令を出して釈放したと、実質的にはですね。これは、ある意味じゃ政治が司法に介入したと、裏司法指揮権の発動とも取れるんですけれども、この点について、指揮権の発動とはどういうものか、法務大臣、ちょっと説明していただきたいと思うんですが。

○国務大臣(谷垣禎一君) 今、指揮権発動何かということでございますが、これは検察庁法の十四条に規定がございまして、法務大臣は検察官の事務に関して検察官を一般に指揮監督することができると、ただし、個々の事件の取調べ又は処分については検事総長のみを指揮することができると、こういう規定になっております。
 それで、検察権の行使に関して法務大臣に一般的な指揮監督権があるということにしつつ、具体的な事件に関しては検事総長のみを指揮することができるというのは一体どういう意味なのかということでありますけれども、検察権は行政権に属しております。ですから、最終的には内閣のコントロール、内閣の責任というものがあるはずでございまして、それを法務大臣の指揮権という形で表現している。しかし、他方、この司法権と、検察権というのは司法権と密接不可分な関係にございますので、独立性確保、余り政治のコントロールに全部従うというようなことでは、検察、司法の独立性というものも達成できなくなると。その調和がこういう形で表現されているというふうに理解しております。

○丸山和也君 過去に指揮権が発動された例はございますか。

○国務大臣(谷垣禎一君) 今、紙はございませんが、犬養健法務大臣のときに指揮権の発動、当時の検事総長、佐藤総長とおっしゃったと思いますが、指揮をした例がございます。

○丸山和也君 過去に一回だけだったと思うんですけれども、今回、平成二十三年の九月二十六日の産経新聞によりますと、松本前内閣参与が、菅、仙谷氏が政治判断によってこれ釈放したんだろうと、こういう、間違いない、ほぼ間違いないと。官邸側の誰が法務省、地検に釈放しろと命令をしたのかと。少なくとも菅氏はしていないでしょう、仙谷氏の可能性が高いと。まあこれはっきりと、ほぼ断言に近いことをやっているんですけれども、そうだとすると、これ、法務大臣、これはやみ指揮権発動ということになるんじゃないですか。

○国務大臣(谷垣禎一君) やみ指揮権という今御主張ですが、これ、私受けております報告は、これは検察当局において決定したものであると。そして、その決定に当たっては那覇地方検察庁が上級庁である福岡高等検察庁、それから最高検察庁と協議して決定したものであるという報告を受けております。

○丸山和也君 この事件は、ある意味じゃもう戦後最大の事件だと思うんですね。領土問題も国の主権も問われた、覚醒させたというか、大きな事件だと思うんですね。そして、司法と政治の問題も絡んだ本当に根幹的な事件だと思いますので、この当時の菅元総理、それから仙谷元官房長官、この二人を参考人として呼んで、当委員会で集中的に審議してもらいたいと思うんですけれども、委員長、いかがですか。

○委員長(石井一君) 後刻理事会で協議いたします。

○丸山和也君 次に、尖閣諸島の実効支配ということについてお聞きしたいと思いますが、今、尖閣諸島は海域を含め実効支配されていると見ていいんでしょうか。総理大臣、お願いします。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 尖閣諸島は我が国によって有効に実効支配されております。

○丸山和也君 総理のこの御本の中でも、憂慮することとして、ある日突然たくさんの中国船が尖閣諸島に入ってきて、そこに居座って、いつの間にか実効支配したと宣言するんじゃないかと、これを一番危惧しているんだとおっしゃっているんですが、その点についてどう思われますか。それと、そういうことが起こらないためにどういうことをすべきかと、お答え願います。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 例えば、中国漁船が避難ということを名目に上陸をしてそのまま居座るという可能性もございます。
 今まで南シナ海等において中国が取ってきた様々なそうした行動がございますので、そうしたことを勘案をしながら絶対に上陸はさせないという基本的な姿勢でしっかりと我々は今尖閣周辺について警備をしているところでございます。

○丸山和也君 上陸をしなくても百隻二百隻が来て、その領海に停滞してしまったような場合はどうしますか、総理。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 基本的には、領海に入った段階においては早くその領海、日本の領海であるということを通告して領海から退去するように促していくということでございます。

○丸山和也君 今の手法はみんなそうなんですよね、出てください、出てくださいと、領海から出てくださいと。それで何日かたったら出たりして、昨日も入っていたように思うんですけれども、それの繰り返しなんですね。ある日、出てくださいと言っても出なくなったとき、これはどういうふうに対応するんでしょうか、防衛大臣。

○国務大臣(太田昭宏君) とにかく海上保安庁として、その領海に入らないようということを随時警告をし、対処をして、航路規制等をやり続けていくということが一番の我々の今やっていることでございます。

○丸山和也君 ちょうどその事件が起こった年の十月二十四日に読売新聞でアーミテージ元米国国務副長官が、日本はやっぱり決意を示せと、断固としてこれは領有権を守るんだという決意を示さなければならない、中国は試しているんだと、どこまで真剣に日本がそれをやるかということを試していると、日本だけじゃなくて東シナ海全体において、そういう決意を示せなかったのがあの漁船事件であったということで警告を発しているんですが、この点についてはいかがでしょうか、総理。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) つまり、上陸できるかもしれない、強制的な排除はしないかもしれないという姿勢は結果として上陸を招いてしまうわけでありまして、両国間の紛争はエスカレートをしていく、エスカレートラダーを上がっていくことになってしまうわけでありまして、それを防ぐためには、我々は絶対に上陸はさせないんだという強い決意と実際に物理的にそういう対応をしていくことが正しい対応であろうと、このように思います。
 安倍政権になってからは、この領海に入って、かつ上陸を試みる、いかなる試みに対しても断固たる対処をしていくということをはっきりとしておりますし、そのように当局に指示をしているということは申し上げておきたいと思います。

○丸山和也君 安倍総理もこの御本の中で、領海問題に関しては交渉というのは成り立たないんだと、要するに物理的な問題なんだとおっしゃっています。まさにそのとおりだと思うんです。
 ですから、上陸をさせない、この決意がかなり強固に表れているというふうにきたと私は思いますけど、これは仮定の質問で申し訳ないんですけれども、もし仮に上陸されてしまったとしたら、実力行使でそれを排除すると、これは当然のことですね。総理、いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 基本的には仮定の御質問にはお答えをしませんが、もちろん、上陸を、万々が一上陸ということになれば、強制排除をするのは当然のことであるということは申し上げておきます。

○丸山和也君 これはやはり決意をどれだけ示すかという問題に懸かっておりまして、そこが一番大事だと思いまして、これは日本国民全体にしみ渡るものですから、是非ぶれないでやっていただきたいと、ぶれないって失礼ですけれども、断固としてそういう姿勢で臨んでいただきたいと思います。
 次に、これに関して、一部ある自治体の市長なんかも言っていましたけれども、共同管理すればいいんじゃないと、竹島を念頭に置いたのかも分かりませんけれども、こういう共同管理ということは基本的にあり得ないと思うんです。ですから、その点についても、これはお答えはいただきませんけれども、断固として守り抜くということでお願いしたいと思います。
 次に、時間もなくなってまいりましたので、日台漁業協定のことについてお聞きします。
 先般、ここにございますけれども、法令適用除外水域、特別協力水域ということで日台漁業協定が締結されたということでありまして、これは非常にある意味では戦略的な久々の日本の、まあ外交と言ってはあれかも分かりませんけれども、外交も絡めた漁業協定だと思うんですけど、これについて、農水大臣、ちょっと説明いただけますか。

○国務大臣(林芳正君) お答えいたします。
 今回の取決めは、漁業実態が大変複雑でかつ日台双方が強い関心を有する海域を適用水域に設定する、そこに今パネルで掲げていただいておりますが、ということと、それから、日台漁業委員会を設置しまして、今後、海洋生物資源の合理的な利用や漁業秩序の維持を図るための具体的な措置、これを協議することにしております。
 これらによりまして、漁業実態が複雑な当該海域におきまして、海洋生物資源の適切な保存、利用や操業秩序の維持を図るための足掛かりが得られたものと評価しておりまして、今後、その日台漁業委員会で操業ルールなどに関する協議が行われると聞いておりますので、我が省としても、地元の漁業者の方々の声をしっかりと受け止めて、しっかり協議がなされるように対処をしてまいりたいと、こういうふうに思います。
 適用水域の外でございますが、重要漁場もございますので、漁業取締り船を集中的に配備をして我が国の漁業者の操業に支障が生じないように厳正に対処するとともに、台湾漁船の違法操業の根絶には全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。
 この取決めの内容については、まだ沖縄県の漁業者を始めとする関係の方々から厳しい御意見もいただいているところもございますので、今後も関係者の皆様に誠意を持って説明し、誠意を持って対応してまいりたいと、こういうふうに思っております。

○丸山和也君 これ一見しますと、日本の排他的経済水域の中で随分台湾側に譲歩して協定を結んでいるんですけれども、これは漁業協定プラス尖閣諸島を守るという、こういう外交的意図も含まれてのことなんでしょうか、総理大臣。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) この日台の漁業協定については、平成八年に交渉がスタートしたのでございますが、なかなか十七年間これは妥結することができなかったわけでございます。
 台湾というのは、御承知のように極めて親日的でありますし、さきの東日本大震災においても二百億円、これは、GDP規模あるいは人口からすればこれは物すごく巨額の言わば寄附を、援助をしていただいた台湾でもあります。
 ですから、伝統的に日本と友好な関係にある台湾との言わばとげとなっているこの漁業協定をしっかりと妥結させていくことにおいては、このアジア地域における安全保障環境においても大きなこれは前進になるわけでございまして、今回の署名に至った妥結は、これは大変農水省また水産庁に御努力をいただいておりますし、沖縄の漁民の皆様にも更に御理解をお願いをしていくという努力を積み重ねていかなければいけないわけでありますが、私は歴史的な署名であったと、こう認識をしているわけでございますし、また、台湾は本取決めの署名に先立つ本年二月に尖閣諸島をめぐり中国と連携しないとの立場を表明したのでございます。このことも踏まえながら、今回この妥結に至ったということは申し上げておきたいと思います。

○丸山和也君 私はこれ見たとき、漁業協定まあうまくいったなということ以上に、以上にと言ったらあれですけれども、日本の外交が戦略的に積極的に打って出たなと、久々のクリーンヒットだなと思って拍手喝采を送ったんですけれども、そういう意味で、農水大臣のみならず、皆さん御努力、陰で本気にやられているんだなと思って感動しましたけれども、是非ともこれから、日本は外交力が弱いと言われていましたけれども、こういう積極的な戦略的な外交をアジア諸国と、アジアをその他も含めて積極的に展開していただいて、日本に外交力ありということを是非頑張っていただきたいと思います。
 一分早いですけれども、区切りのいいところでもう終わらせていただきます。ありがとうございました。