<第二話>

生霊については古く「源氏物語」に登場、高貴な女性が嫉妬に狂い生霊を

使って光源氏の妻と恋人の命まで奪ってしまったと言う恐ろしい話があります。

昔から「陰陽師」が生霊を退治など、現代にいたっても「生霊」の存在は悪者

扱いされてきています。

しかし、ここに出てきている「生霊」は、この男「二宮哲也」を、守るために生まれて

来たような生霊で「哲也」を、安寧な生涯を全うするべく今までも他の悪霊と幾度か

激闘を重ねて来ていたのです。

哲也は自分に「生霊」がついて、自分の守り神になっている事など知るよしもない。

「生霊」が激怒したのは、遂に哲也の本心が「自死」に固まって来た事ででした。

哲也は3歳の時に父が病死、その後母は再婚。しかし、哲也は溺愛してくれていた

祖母と暮らし成人しました。

哲也も、俗に言う「祖母に甘やかされて育った孫は、三文の値打ちも無い」の諺の

通り、何事にも無神経、無防備に人を信じる、失敗しても気にしないなど。

どちらかと言えばノー天気な人物、頭脳は優秀な反面最悪なのは無責任と女性に

だらしがない人物と言えます。

哲也が考えたのは「後期高齢者保険者証」が回って来た時でした。

今まで何の苦労も無しに好き放題に生きて来たのだから、もう思い残す事も無い。

認知症に成ったり、介護でベットに寝たきりに成ったりして人に迷惑を掛ける位なら

「元気なうちにカッコ良く逝くこと」を考え出していた。

哲也は今までに3度も会社を潰して、最後は自己破産にまでなっていた。しかし、

最初に作った企画会社だけは自分の命と思って頑張っていたが、部下に恵まれず

また生来の女好きが災いして倒産、妻子を置いて死場を求めて逃避をした。

「生霊」は哲也を札幌市から逃して、新大阪に落ち着かせたが、この時ばかりは

絶対に死なせてはならないとあらゆる手段を使って生き延びさせた。

そんな哲也を「生霊」は愛おしくてたまらないのに、今になって「自死」ふざけるな!

と、「生霊」本来の憎悪が沸き立ってきていた。

                                            ( つづく )