今月号のFertility and Sterilityに言語と人工授精治療成績の関係を調べている論文がありましたので紹介します。アメリカからの報告です。合計 406 人の患者がこの研究に参加し、そのうち 86% が英語が母国語、7.6% がスペイン語が母国語、5.2% がその他。
赤線:英語母国語 青線:英語は外国語
縦軸:不妊診断を受けられない確率 横軸:不妊期間
英語が母国語の方が不妊期間が明らかに短いことがわかります。
英語が母国語だと妊娠率はオッズ比 2.92; 95% CI, 0.68–12.47
補正してオッズ比 2.88; 95% CI, 0.67–12.35
累積妊娠率も英語が母国語の方が有意に高くなりました (22.32% vs. 15.38%).
さらに英語が母国語でないと人工授精の治療を断念し体外受精へのステップアップをしないケースが多くみられました。
恐らく治療が複雑のため継続することが困難だと考えたからだと思われます。
この結果から言えること
治療開始にあたり適切な情報が必要であり、また治療に入るにあたりしっかりとした説明や患者の理解も必要です。
また周知の通り先が見えない故に不妊治療はカウンセリングがとても大切です。
よほど英語が話せたとしても細かいニュアンスは母国語でないと難しいですし、また医学用語となるとほぼ難しいかと思います。
現在海外で治療を受けている日本の方もいるかと思いますが、この論文での結果から分かるように可能な限り不妊治療は母国語で受けるべきだと言えます。
Fertility and Sterility® Vol. 120, No. 4, October 2023
Reproductive inequity and inferior intrauterine insemination outcomes in patients with limited English proficiency: a retrospective
cohort study