80%の確率で男女産み分けを可能にした方法 最新の論文から | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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性別を希望される方に対して興味深い論文が出されましたので以下紹介します。

今年の4月に出された新しい論文です。

精子の重さは男の子になる精子よりも女の子になる精子の方がわずかに重くなります。

以下の図だと上の20%のところに男の子になる精子が多く存在します。

逆に下の90%のところに女の子になる精子が多く存在します。

 

 

今回の論文ではICSIとPGT-Aを受ける1,317組のカップル(母親の平均年齢37.1±4歳、父親の平均年齢39.2±6歳)が対象として検討しています。

 

性別の希望のある105組に対しては、多層密度勾配法による精子の分離をした精子選別でICSIを行っています。

重量の軽い精子は浮上し、反対に重い精子は下へ沈むという考えで選別しています。

X染色体を有する精子(女の子になる)はY染色体を有する精子(男の子になる)よりもわずかに重くなります。

 

結果

女児を希望した59組の夫婦に対して、胚の79.1%が女の子の胚になりました。

男児を希望した46組の夫婦に対して、胚の79.6%が男の子の胚になりました。

なお、精子選別して生まれた子どもの3歳の時点で発達遅延などは認められていませんでした。

 

 

 

この方法を用いると80%の確率で性別の選択が可能としています。

倫理的には議論の余地がかなりあり、安易に行うべきではないことです。

ただ一般的に性別を見分けるためにはPGT-Aが必須ですが、今回の論文ではPGT-Aを行う必要性もなく、かつ長期的な予後を見ており安全性までも示されており、技術的にもPGT-Aを使わないので難易度は低くなり費用も下がります。

 

Published: March 22, 2023

https://doi.org/10.1371/journal.pone.0282216

A non-randomized clinical trial to determine the safety and efficacy of a novel sperm sex selection technique