先週PRPを卵巣内に注入して卵巣を若返る新しいアプローチについて記事にしました。
この論文をもう少し詳しく説明します。
活性化された血小板から以下のような様々な因子が放出されます。
これらのどれが卵巣の若返りに寄与するかは不明ですがいずれかまたはその多数が関与している可能性が示唆されています。元々血小板や血小板から放出される因子は体内のあらゆる箇所において修復の過程を担っており活動を停止した卵巣に注入する事でポジティブな作用が期待されています。
この下の一覧は過去にPRPを卵巣に注入した論文のサマリーを示しています。
まだ実験的なものや症例報告レベルでありエビデンスとしては低いものしかありませんが、卵巣機能が著しく低下した症例や早発卵巣機能不全などの非常に厳しいケースにおいてかなり期待が持てる結果を示しています。
この下の表は基礎研究(ラットや牛)でのPRPの卵巣内注入の効果を調べています。ある程度効果が示されていることがわかります。
この下の表はランダム化されていないものの多数の症例に対してPRP注入の効果を見ています。昨年発表された論文でありこれが現在では最も症例が多いかと思われます。ただランダム化されていないため、研究としてはどうしてもバイアスがかかるためエビデンスとしては弱いものになります。
この結果から言えることとして
この論文で指摘されていますがPRPを注入する事が良いのか、それとも単なるドリリングのように卵巣に刺激を与えるのが良いかに返答していますが、PRPではない単なる生理食塩水を注入しただけだとこの様なポジティブな変化は認められないと述べられているため、やはりPRPを注入する事が良いのかと予測されます。
しかし問題点として指摘されていることはコストがかかる治療が故にコストに余裕がない方へは行えず現在の結果はかなりバイアスがかかっていると指摘しています。
また施設ごとに標準化されたプロトコールもほとんどないと指摘されています。
今後は大規模なランダム化された前向きな研究がマストであり(コストも抑えた)、かつ急ぎで行うことが求められていると思います。
結論
PRPを卵巣へ注入することで若返りを図ることは十分可能性があるものの、今後基礎研究と臨床研究を行い確かなエビデンスを積み上げることが求められます。
Human Reproduction, pp. 1737–1750, 2021
Intraovarian injection of platelet-rich plasma in assisted reproduction: too much too soon?