慢性子宮内膜炎があれば治療をすべき 2021年8月 F&S | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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現在着床障害の原因の一つとして慢性子宮内膜炎が問題となっています。

慢性子宮内膜炎があれば治療をすべきという施設が多いかと思います。

しかし明確な結論を出している報告があまりなく具体的にどうすれば良いか迷う時もあります。

今回中国からの報告で、今月号のFertility and Sterlにとても参考になる内容が掲載されていましたので以下に紹介します。

CD138の結果で抗生剤の治療を行いその後の臨床成績を調べています。

以下論文の要点です。

CD138が0個と1-4個において妊娠率は変わりませんでした。

CD138が5個以上の場合抗生剤の治療により89%は治癒しました。

 

この下の表はCD138が4以下の群と、慢性子宮内膜炎の治療をしても陰性化しなかった難治性群で臨床成績を見ていますが、両群を比べると明らか難治性群で臨床成績が低下しています。

     陰性群 難治性群

着床率  51.6% vs. 32.3% 

妊娠率       65.7% vs. 42.3%

出産率       52.1% vs. 30.7%

累積出産率 64.2% vs. 38.5%
 


結論として

CD138が4以下の場合臨床成績には影響を与えませんでした。

抗生剤の治療により有意に成績は改善しました。

しかし抗生剤の治療に対しても抵抗を示した難治性群ではその後の成績が有意に低下しました。

 

今回の論文を踏まえて

CD138が5個以上の場合には抗生剤の治療をすべきと言えます。そしてビブラマイシンによる最初の治療、その後治癒しない場合にはメトロニダゾールなどの第2選択薬を治療して、それでも改善しない場合にはその後移植に進むケースもありますが、今回の結論だと移植しても妊娠成績が低下することを踏まえると、抗生剤抵抗の難治性に対して腹腔鏡手術などの外科的な処置を行うことが好ましいかと思います。

当院の場合には最終的には腹腔鏡手術による外科的な治療によりその後移植を行い高い妊娠率という結果を出しています。

 

Fertility and Sterility® Vol. 116, No. 2, August 2021 

Impact of oral antibiotic treatment for chronic endometritis on pregnancy outcomes in the following frozen-thawed embryo transfer cycles of infertile women: a cohort study of 640 embryo transfer cycles