ICSIよりIVFの方が累積正児出産率が高くなる | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。


現在世界的にも顕微授精(ICSI)が広く行われています。日本でも半数以上は顕微授精にて受精卵を作っています。通常の体外受精(IVF)と顕微授精のどちらの方が累積正児出産率の点で良いのかに関して調べている論文がありました。
結論としては、男性因子でない場合にはIVFの方が妊娠率が高くなるという論文です。



このグラフはすべてのケースにおいての結果を示しています。縦軸は累積正児出産率で、横軸は治療周期数です。赤のIVFでも点線のICSIでも累積正児出産率には差がない事を示しています。


このグラフは男性因子がある場合ですが、この場合には当然ですが受精率が低下するため累積正児出産率はICSIが上回ります。


このグラフは女性不妊の場合ですが、累積正児出産率はIVFの方が上回ります。


このグラフは女性因子と男性因子の両方を有している場合ですが、累積正児出産率はIVFの方が上回ります。


このグラフは原因不明の場合ですが、累積正児出産率はIVFの方が上回ります。



目の前の受精を考えるとついついICSIを選択してしまいますが、男性因子でない場合にICSIを選択すると妊娠率は逆に低下する事になると述べています。ICSIの適応をしっかりと守って受精方法は選ぶべきと言えます。


ICSI does not increase the cumulative live birth rate in non-male factor infertility 


Human Reproduction, Volume 33, Issue 7, July 2018, Pages 1322–1330,