社会的適応 | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

本来体外受精には厳しい適応があり、一般的には以下の二つがあります。

①卵管が閉塞しているか癒着していて卵管が正常に機能していない卵管因子、

②男性側の精液所見が悪く男性に原因がある男性因子などがその代表的なものです。

(こちら も参考にして下さい。)

 

これ以外のものとして社会的適応というものがあります。

夫が海外や遠くへ長期間単身赴任しているケースは社会的適応と呼ばれており、実際にそのような理由で体外受精を行っている人は結構います。

また数ヶ月後に夫が海外へ赴任することが決まっており、それまでに結果を出さなければいけないケースも社会的適応に当てはまります。

 

例えば夫が海外に数年間赴任しており、年に数回しか戻れないケースですが、この場合は夫の一時帰国時に来院してもらい、精子を数回分凍結しておきます。

この凍結精子を人工授精としても使う事が出来ますが、精子は凍結すると半分以上死滅することから、かなり精液所見が良くないと人工授精としては不向きになります。

そのため人工授精ではなく、一回の精液を数回分に分けて凍結しておき、それを顕微授精用として使う事が精子の状態を考えると現実的となります。

 

医学的な理由ではなく、この様な形で体外受精を選ぶ事に対して違和感を持つ方もいるかも知れません。夫が帰国後に自然妊娠を目指してタイミングをとれば妊娠できる可能性も十分ありますし、本来はそれが一番望ましいかと思います。

ただ、問題は女性の年齢になります。

例えばもし現在妻が37歳であり、夫が3年後に帰国となるとその時40歳になります。そこから自然妊娠をトライすると現実的には結構難しくなります。

 

そういう場合に、今回のような社会的適応で体外受精、顕微授精を行う事は、二人が同意できるのであれば、一つの適応になりえます。