以下は杉ウイメンズクリニック杉先生の記事です。
最近、当院にあったメール相談で、当院で不育症の治療をした場合の卒業は妊娠何週かという質問がありました。
その方は、遠方から当院に通院希望のようで、妊娠してから当院で治療を開始した場合、当院には何週まで通院し、当院を「卒業」した後は、近くの分娩病院に紹介状を書いてもらえるのかなど、具体的に知りたいという質問でした。
私は、「卒業」という言葉が直ぐに分からなかったのですが、不妊のクリニックは、妊娠したら10週ぐらいで卒業で、後は分娩病院に紹介して引き継ぐので、その感覚でメールして来られた様です。当たり前ですが、不育症診療の卒業は、無事に出産した時です。
私は、6年前まで大学病院に勤務していたので、不育症患者さんの分娩まで診ていました。今は、それが不可能なので、妊娠35週まで診ています。35週になれば、いつ産まれても大丈夫な週数なので、後は分娩病院にお任せしています。
最近、不妊のクリニックでも、不育症の診療を行っているところもありますが、アスピリンやヘパリンを処方し、妊娠10週ぐらいで「卒業」とし、そのまま分娩病院に紹介して治療をうやむやにし、その後、胎児死亡や重症妊娠高血圧などを発症するケースがあり、大変危惧しています。
不妊クリニックは、妊娠後期まで管理するスキルが無いので、中途半端に不育症診療に手を出すのは、問題があると思います。
きちんとしている不妊クリニックは、不育症検査で異常が見つかれば、その時点で当院に紹介して来ます。
当院でさらに精査し、治療方針を確定し、妊娠した後は、35週まで責任を持って管理しています。
そのために、当院は多くの分娩病院と連携して治療しています。当院は、多くの大学病院、中核総合病院との良好な信頼関係を構築しています。
私は、当院の検査、研究、診断能力をいつも自慢していますが、実は、分娩病院との連携が当院の不育症診療の最大の特徴なのかもしれません。
大学で准教授として真面目に研究、臨床に励んできたので、多くの病院との信頼関係は、私の大きな財産です。
不育症診療の「卒業」と言う、不思議な言葉を聞いて、そんな事を思いました。