福島第一原子力発電所事故について よくある質問 Q&A | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

Q1
放射線漏れからどうしたら身を守ることができるでしょうか?
A1
体に当たってしまった放射線は元には戻せません。しかし原発から放出された放射性物質が皮膚に付着して生じる被曝の場合には、放射性物質をシャワーで洗い流し、その後の被曝を回避することができます。
原発から距離が離れている場合、放射線量は距離に応じて減りますので過度に心配することはありません。
原発のそばを通ったような人はサーベイメーターで放射線量を測定できれば安心でしょう。測定についてはQ10 を参照してください。


Q2
どれくらい離れていれば安心ですか? 滞在時間との関係はどうなるのでしょうか?
A2
放射線は光と同じ性質なので、放射線量は放射線の発生源からの距離の二乗に反比例します(距離が2倍になると放射線の量は4分の1に減ります)。
ニュースで流れる放射線の強さ(1時間当たりのマイクロシーベルト)は、1時間ずっとそこにとどまっていたと仮定した場合のことです。つまり、放射線の強さ 滞在時間が受けた放射線の量ということになります。
原発から放出される放射性物質は風に乗って流れ拡散します。風の方向にもよりますが、西からの風であればほとんどは太平洋に流れると考えられます。


Q3
除染とはどういう意味ですか?どこへ行けば除染ができますか?
A3
除染とは、衣服や皮膚についた放射性物質を取り去ることを意味します。衣服の場合は、花粉症対策と同じように考えてください。玄関の外で一番上に着ているものを脱いで家に入ります(脱いだ衣服は室内に持ち込まない方がよいでしょう)。そして皮膚が露出していた可能性のある部分を石鹸などで洗い流すのがよいでしょう。その場合、あまり皮膚を強くこすりすぎないようにしてください(皮膚を傷つけると体の中に放射性物質が入る可能性もありますので)。
除染が必要かどうかは、測定器で測ってからでないと判断できません。放射線量の測定についてはQ10 を参照してください。


Q4
1,000 Sv/hとはどういう意味ですか?
A4
1時間当たりに受ける放射線の量が1,000マイクロシーベルトということです。日本人が受ける1年間の自然放射線の量がおよそ1,000マイクロシーベルト(1ミリシーベルト、ただしラドンを除く)ですから、1年間に自然界から受ける放射線の量を1時間で受けることにほぼ相当します。
しかし、このレベルの放射線に一時的に当たっても(ずっと継続して当たり続けるのでない限り)健康への被害は生じません。
CTや胃の透視による被曝は、自然放射線の数年分に相当します。


Q5
放射線の種類にはどんなものがありますか?
A5
放射線には大きく分けて2種類あります。
・光と同じ性質のもの X線、ガンマ線
・粒子のもの アルファ線、ベータ線、中性子線
・X線は、X線装置に高い電圧をかけて発生させるものです。正体は電磁波(光と同じ性質のもの)で、物質への透過力が比較的強いものです。
・ガンマ線は放射性同位元素(放射性物質)が「原子崩壊」する際に生じるものです。その性質はX線と同じ電磁波で、物質への透過力が強いものです。
・アルファ線は、ウランやプルトニウムのような大きな原子が「原子崩壊」する際に放出されるものです。その実体は中性子2個と陽子2個のかたまり(ヘリウムの原子核)で、物質への透過力は非常に弱い(紙1枚で止められる)ものですので、体の外部からの被曝では心配はありません。
・ベータ線は、放射性同位元素が「原子崩壊」する際に放出されるもので、実体は電子です。一般的には体の表面から1 cmよりも深いところには届きません。
・中性子線は、ウランやプルトニウムなどの「原子核分裂」に伴って放出されます。電荷がないので物質への透過力が高いのですが、水で止めることができます(中性子は水素の原子核である陽子と重さが同じなので、玉突きの原理でストップします)。
注)「原子崩壊」 原子の中には陽子数は同じでも中性子数の異なる同位元素が存在する(例:水素には重さが1の普通の水素、2の重水素、3のトリチウム[3重水素]がある。全部水素だが、3重水素だけが放射性)。その同位元素の中の一部は、原子から余分なエネルギーを放射線として放出し、自身は安定な原子に変わる(原子番号が一つ増減することが多い)。
「原子核分裂」 ウランやプルトニウムに中性子が当たって原子核が分裂すること。


Q6
放射性セシウムは人体への影響がありますか?
A6
放射性セシウム(セシウム137)は、高エネルギーのガンマ線を出すので容易に測定できる原子です。原子核分裂により生じる原子の一つです(半減期は30年)。体の外部からこのガンマ線を受ける場合は、CTなどと同じことですから、量が増えれば影響も大きくなります。


Q7
表面汚染とはどういうことでしょうか?
A7
衣服や皮膚に放射性物質が付着し、放射線に被曝している場合を表面汚染といいます。本来の言葉の定義はどういう物体の表面でも問いませんが、一般的に問題になるのは、やはり衣服と皮膚でしょう。


Q8
内部被曝とはどういうことですか?
A8
放射性物質を体内に取り込んだ結果、内部から被曝することを指します。どういう元素であるかによって、排出される速度が違います。


Q9
半減期とは?
A9
ある放射性物質の放射線の強度が半分になるまでの時間のことです。半減期の2倍の時間が経過した場合、放射線の強度はゼロではなくて(1/2)(1/2) 1/4になります。


Q10
被曝した可能性があるときはどうすればよいのでしょうか?
A10
現在の状況では、被曝のレベルは低いと推定されますので、健康への害があるとは思われませんが、放射線汚染を測定できる機器があるところで、汚染していないかど
うかを調べてもらうのがよいでしょう。原発から遠く離れた場所にいる人は過度に心配することはありません。
放射線量の測定機器があるのは以下のところです。
・広島大学緊急被ばく医療推進センター
・東日本ブロック被ばく医療機関(初期および二次)
・西日本ブロック被ばく医療機関(初期および二次)


Q11
被曝後の発症予防は可能ですか?
A1
放射線被曝による疾病の発症(この場合は「急性放射線症」)は、1シーベルトを超えるような被曝の場合です(1シーベルト 1,000ミリシーベルト 100万マイクロシーベルト)。一般の人にはその可能性はありません。
食べ物などを通して放射線が体に入ったときは(内部被曝)、発症を予防する方法は確立されていません(ヨードの事前あるいは直後摂取による甲状腺がんなどの予防を除く)。それぞれの症状に応じた治療を進めることになります。


Q12
ヨードはどういうときに使うのですか?どこで処方されますか?
A12
放射性ヨウ素はウランの核分裂によりたくさん生じる元素です。もしも体内に取り込まれると甲状腺に集まる性質があります。従って、核分裂生成物による汚染の可能性がある場合は、あらかじめ放射性でない普通のヨウ素の錠剤を飲んでおくことで、万一放射性のヨウ素が体内に入ってきても、甲状腺に入るのを防ぐ効果があります。
放射線事故のときには、ヨードは対策本部の決定で投与することになり、それ以外は医師の処方が必要ですので、素人療法はしないでください。
以下のサイトをご参照ください。
・日本核医学会「被災者の皆様、とくにお子さんをお持ちの被災者の皆様へ」
・日本産科婦人科学会「福島原発事故による放射線被曝について心配しておられる妊娠・授乳中女性へのご案内(特に母乳とヨウ化カリウムについて)」(PDF:107KB)


Q13

放射線の被曝量はどうすれば分かりますか?
A13
物理学的な推定は、「居住していた場所の1時間当たりの放射線レベル」「滞在していた時間」で求められます。
生物学的な線量推定にはいくつか方法がありますが、専門家が少なくどちらも時間と費用がかかり、検査件数には限度があるので個人の希望で実施はできません。
・一つは血液の中に含まれるリンパ球を2日間培養して染色体を調べる方法(血液2 cc以上が必要)です。
・もう一つは歯のエナメル質を電子スピン共鳴法という方法で調べるものです。奥歯でなければ正しい評価ができないという欠点があります。抜けた歯で測定するのが一般的ですので、緊急時の場合は役に立ちません。
どちらの方法も、放射線の量として300ミリシーベルト(30万マイクロシーベルト)以上が適用範囲です。


Q14
雨が降った場合はどうでしょうか?
A14
空気中にただよっている放射性物質が雨に吸収されて地上に降る可能性はあります。従って、健康への害があるとは限りませんが、原発の近くでは雨に濡れないようにした方が無難でしょう。


Q15
会社の製品が放射能汚染されていないという証明を必要としています。汚染測定をしたいのですがどうすればよいでしょうか。
A15
測定器のメーカーに問い合わせをされることをお勧めします。当研究所で使用している放射線測定装置の問い合わせ先は、次のとおりです。
アロカ社:(0422)45-5131(東京本社)
http://www.aloka.co.jp/support/salesnet/kanntou-kousinetu


Q16
同じ量の放射線でも短時間被曝の場合と、長時間被曝の場合で健康への影響にどのような違いがありますか?
A16
一般的には、被曝した放射線の量(時間当たりの放射線量に被曝時間を乗じた被曝総量)が同じ場合、その被曝にかかった時間が長いほど影響は小さくなります。ただし、その減少の程度は線量によって異なる可能性が高く(放射線量が多い場合には減少の度合いが大きい)、従って低線量(例えば100ミリシーベルト以下)では、長期被曝でも短期被曝でもあまり影響は変わらない可能性があります。


http://www.rerf.or.jp/fukushima_qa.pdf