最低賃金は+54円か+56円か。10月改定で見落としがちな3点
おはようございます。本部SVのkazutakeです。先に結論です。今年の最低賃金の引上げ額の目安は、Aランク54円・Bランク56円・Cランク56円。つまり都市部より地方のほうが上げ幅が大きい年です。10月の改定に向けて、事業所側で今月中に手をつけたいのは「職員の時給表」「A型の賃金」「出したままの求人票」の3つ。「毎年のことだし、10月になってから考えればいいのでは」。私も昔、まったく同じことを思っていました。そして9月末に大あわてしました。この記事の要点(3問3答)Q1. 今年はいくら上がるの?A. 目安はAランク54円・B・Cランク56円。目安どおりに全都道府県で改定されると、全国加重平均は1,176円(上昇額55円・引上げ率4.9%)です。Q2. いつ、誰が決めるの?A. これはあくまで「目安」。ここから各都道府県の地方最低賃金審議会が調査審議して答申し、各都道府県労働局長が金額を決定します。発効は例年10月ごろです。Q3. 就労Aで減額の特例許可を受けていれば影響なし?A. いいえ。減額は「率」で許可される仕組みなので、最低賃金額が上がれば、支払うべき下限額も自動的に上がります。そもそも地域別最低賃金とは地域別最低賃金とは、都道府県ごとに定められる「これを下回って人を働かせてはいけない」時間額のことです。パート・アルバイト・非常勤といった雇用形態に関係なく、その地域で働くすべての労働者に適用されます。障害福祉の現場でいえば、非常勤の支援員も、世話人も、夜勤明けのスタッフも、就労Aの利用者(=雇用契約を結ぶ労働者)も、全員が対象です。【早見表】あなたの県はどのランク? ランク 該当する都道府県 目安額 A (6都府県) 埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪 +54円 B (28道府県) 北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡 +56円 C (13県) 青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄 +56円 (厚生労働省の答申資料をもとに作成。実際の改定額は各都道府県の審議会答申・労働局長の決定によります)今年の特徴は「地方のほうが上げ幅が大きい」目安の数字をよく見てください。AランクよりB・Cランクのほうが2円多いんです。元の金額が低い県ほど、率で見た上昇はさらに大きくなるということ。地方で多店舗展開している法人ほど、人件費のインパクトは体感より大きく出ます。全国平均では上昇額55円・引上げ率4.9%。昨年度の66円・6.3%より伸びは落ち着きましたが、報酬単価が同じペースで上がるわけではありません。ここが福祉事業の苦しいところですよね。で、うちの事業所はいくら効くのかざっくり試算してみます。時給1,000円の非常勤スタッフが5人、1人あたり月80時間勤務のグループホームだとしましょう。56円 × 80時間 × 5人 = 月22,400円。年間で約26.9万円です。これに社会保険料の事業主負担が乗りますし、常勤職員との賃金の「詰まり」——最低賃金に近い層が上がると、その上の層も上げないと納得感が保てない——を考えると、実際はもう一段大きくなります。この計算、5分でできます。今日やってしまいませんか。見落としがちな3点①最低賃金ぎりぎりでない職員も、実は動く「うちは全員1,100円だから関係ない」は要注意。改定後の下限に近づくほど、既存職員の不満と離職リスクが上がります。人件費だけでなく定着の問題です。②就労Aの「減額の特例許可」は率で決まる許可は「減額率◯%」という形で出ます。最低賃金額が上がれば、支払うべき下限額も連動して上がります。「許可があるから据え置きでいい」は誤りです。③出したままの求人票が、10月に最低賃金割れになるこれがいちばん多い落とし穴。夏に出した「時給1,050円」の求人が、10月には下限割れという県が出てきます。7月に書いた募集時給の記事とあわせて、今のうちに見直しを。就労A・障害者雇用の「減額の特例許可」、ここだけは最低賃金の減額の特例許可とは、精神または身体の障害により著しく労働能力が低い方などについて、都道府県労働局長の許可を条件に、個別に最低賃金を下回る額を設定できる制度です(最低賃金法第7条)。最低賃金を一律に適用すると、かえって雇用の機会を狭めるおそれがあるために置かれています。実務で押さえたいのは3つ。・「障害があること」だけでは対象になりません。その障害が、従事しようとする業務の遂行に直接、著しい支障を与えていることが必要です。・減額率は労働能率の程度に応じて決めます。同じ業務に就く一般の労働者との作業量の比較などが根拠になります。感覚で決める数字ではありません。・申請先は事業場を管轄する労働基準監督署(申請書2部)、許可を出すのは都道府県労働局長です。指定権者(都道府県・市)ではありません。ここを間違えて時間を失う方が、毎年います。そして冒頭のとおり、許可は「率」。10月に最低賃金が上がれば、支払う下限額も上がります。賃金台帳の設定を10月に更新するのを忘れないでください。私が9月末に大あわてした話本部に入って最初の年、担当事業所の非常勤の世話人さんの時給を「改定額が正式に決まってから直そう」と後回しにしていました。ところが決定の公示から発効までは、そう長くありません。給与計算の締めと重なり、賃金台帳・雇用契約書・求人票・シフト表の時給欄を数日で一気に直すことになり、ミスも出ました。学んだのは、「金額が確定してから動く」のではなく「幅が見えた時点で準備を終わらせておく」ということ。目安が出た今が、まさにその時点です。明日から使えるアクション3つ1. 自県のランクと目安額を確認し、影響額を1枚に出す上の早見表で+54円か+56円かを確認。時給×人数×月間時間で年間影響額まで出して、経営会議の資料にしてしまいましょう。2. 掲載中の求人票を全部洗い出すハローワーク、求人媒体、自社サイト、掲示板。10月時点で下限を割る条件が残っていないか。法定雇用率2.7%への引上げで採用の競合も増えています。金額の見直しは早いほど有利です。3. 減額特例許可の有無と内容を棚卸しする就労Aや特例子会社で許可を受けているなら、対象者・減額率・許可の期限を一覧化しておく。10月の改定後の支払額まで先に計算しておくと安心です。今日のひとこと相談最低賃金の改定で、あなたの事業所がいちばん頭を悩ませるのはどこですか。人件費でしょうか、それとも既存職員とのバランスでしょうか。コメントで教えてください。もう一歩踏み込みたい方へこのブログは本部SVの視点で書いています。Instagram(@kazutake0112)とnote(motokeieisya)では、また違う視点・切り口で発信しています。別角度のヒントとしてどうぞ。ご相談・お問い合わせの直接の窓口も、こちらのDM・メッセージです。無理な勧誘はありません。開業や運営のご相談はこちらの記事もご覧ください。本部SVとして、現場の失敗も経営の数字も見てきました。次の一手は、一緒に描けます。次回予告次回は木曜、【実地指導クイズ】の回です。現場でつまずきやすい確認項目を、また5問お届けします。※本記事は2026年8月12日時点の公表情報に基づく一般的な整理です。実際の改定額・発効日は各都道府県の審議会答申および都道府県労働局長の決定によります。減額の特例許可の可否や減額率の判断は、必ず所轄の労働基準監督署・都道府県労働局にご確認ください。【参考】・厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」(2026年7月28日 報道発表)・兵庫労働局「最低賃金法第7条に基づく最低賃金の減額の特例許可制度について」・京都労働局「最低賃金の減額の特例許可申請について」【関連記事もどうぞ】・最低賃金1,176円へ。10月からの募集時給、決めていますか?・従業員37.5人から義務に。法定雇用率2.7%で見落としがちな3点本部SVのkazutakeでした。今日も一日、よい支援を。