著者は、日記に日頃の悩みや感情を記述しているが、1年後に原稿を読み返してみた。歳月の重みというのは面白いもので、かつて心が急けるほど思い悩んだことでも、済んでしまえば、なんでそんなちっぽけでつまらないことに、ウジウジクドクドこだわっていたのだろうと、自分で自分に呆れる始末である。
この程度の苦労なら、いささかの辛抱と我慢で十分乗り切れるはずであり、やはり酒の独り言に過ぎない。
…1年も経過するとこんなに感情が変化するものなのだろうか。今の俺からすると全く分からない。著者の感情とはかなり同調する部分はあるのだが。俺が一年後にこのような感情になっているとはとても思えない。左遷初期のころと比較するとかなり楽になってきたが、それでも心が避けるほど思い悩む。ため息が何度も出てくる。こんな感情をちっぽけでつまらないもの、と思えるようになるとはとても思えないのだが。

冬の火花 ある管理職の左遷録 江坂彰著 文芸春秋社[1983]