言ってみれば運・不運であり、この運・不運は自分にもあれば、相手にもある。それを自分だけに運があるように思うのはまず間違い。次に会社の競争は、勝ち残り競争であると同時に、生き残り競争でもあるが、課長以上になってしまえば、次第に生き残り競争に重きがかかってくる。管理職ともなれば、業績評価もさることながら、リーダーシップとか包容力とか人柄の良さとか、人徳とか要するにわけのわからないものが考課の対象になる。
ところがこんなものを誰が公明正大に評価するのか?会社で人を押しのけて、管理職になってなおかつ評判の良い、人柄の良いと言われている連中の特色は、まずずるいこと。態度をあいまいにしていること。更に重要な決定的瞬間に絶対に何もやらないこと。
管理職も上位になれば、ぼんくらになりきらなければならない。ぼんくらになろうと、ともかく才はほどほどにしておいて、自分で殺してしまわなければならない。
→ このような方々が経営トップに多いことは確かだ。態度をあいまいにしておいて、トップの意向が出たらそれに従うという感じの方が多い。これが出世の秘訣なのだろう。

冬の火花 ある管理職の左遷録 江坂彰著 文芸春秋社[1983]