由来はともかく行事は古代のローマのにおいがする。ハロウィーンの日の夜、家々ではカボチャの中身を取り除き、目・鼻・口に穴をあけて提灯にし、それを窓際に飾っておく。古くは家に帰ってくる死者の魂を導くための灯だったに違いない。カボチャの顔はアフリカの民族芸術のように“古拙(こせつ) ”の笑いを浮かべている。
※古拙:古風で技巧的にはつたないが、素朴で捨てがたい味わいのあること。
また、子供たちが魔女や怪物などに仮装して家々を訪ね、お菓子をねだって歩くのは古代では死者もしくは死神(サムハイン)を装ったものだっただろう。懐かしくもあり、恐ろしくもあった祭りだったのだ。
…かぼしゃの飾りは、死者を迎えるためのものだったのか。死者が一日だけ戻ってくるというのは、面白い。
また、これから冬が始まるというタイミングのお祭りでもあるのだ。ヨーロッパの冬は長くて厳しいので、このような祭りも必要なのだろう。

街道をゆく39 ニューヨーク散歩 司馬遼太郎著 朝日新聞社[2009]