ゴーギャンの絵に関連して、"われわれはどこからきたのか  われわれはなにものか  われわれはどこへいくのか" とのブログを以前書きましたが、ブログを読んだ友人から、佐治晴夫氏が書いた"宇宙の不思議" と言う本を紹介されました。その本の中で、ゴーギャンと同じく、鴨長明も同じことを方丈記に書いているとの記述があると教えてもらいました。


鴨長明は隠居してから、1丈四方、即ち3m x 3m、のモバイルホームを京都郊外の日野に建て、この方丈庵で1212年に方丈記を書きました。ゴーギャンが近代文明を捨てて、タヒチに移り住んだのは1891年ですから、遡ること600年以上前です。鴨長明はゴーギャンとは、文化的、さらに宗教的な背景が全くちがいます。その長明も、"知らず、生れ死ぬる人、何方 (いずこ) より来たりて、何方 (いずこ) へか去る"と書いているのです。


この疑問は、洋の東西、文化の違い、また、宗教の違いを越えて、才能ある哲人たちの頭をよぎるのでしょう。シルクロードは紀元前2世紀からあったそうですから、鴨長明の時代にキリスト教が日本に伝来していた可能性は十分あります。しかし、ゴーギャンが幼少時に牧師から習った新訳聖書の内容を、鴨長明が理解していたとは思えません。日本へのキリスト教伝来は16世紀の大航海時代を待たなければなりません。


ゴーギャンはタヒチやマルキーズ諸島に住んで、油絵で、一方、鴨長明は京都の郊外で日野山中の方丈庵に住んで、随筆で、この疑問を投げかけたのは確かです。人として生まれ、哲学的な思索をつきつめると、同じ問いに行き着くのは偶然ではなさそうです。




鴨長明。京都下鴨神社の神事を統率する神官の次男として1155年に京都で生まれた。1212年に成立した方丈記は日本の3大随筆一つ。wikipediaより引用。


下鴨神社の摂社河合神社境内にある方丈庵。鴨長明が残した資料より再現された。河合神社は下鴨デルタから少しだけ北に行った所にある。下鴨神社より格上の神社。筆者撮影。