ピクセル」という映画を観た。

突如、レトロゲームの姿をしたエイリアンから、攻撃を受ける地球。
世界の運命は、レトロゲームを知り尽くした、冴えない中年オタク達の手に委ねられた、果たして、オタクは世界を救うことができるのか?という娯楽作品。

世代的にはど真ん中の内容だが、どちらかというと、アーケードではなく、それらのゲームをファミコンに移植されてから知った、いわゆるファミコン世代。

ファミコンと聞いて思い出すのが、当時、同じクラスの、あつし君(双子の兄)こと、あっちゃん。

当時、僕が住んでいた、団地の棟と、道路を挟んですぐのご近所さん。
洋風な門構えの立派な一軒家で、庭には、双子の兄弟の為のブランコ、ジャングルジムがあり、芝はいつも丁寧に刈られ、花壇には色とりどりの花が咲いていて、眩しいくらいの豪邸だった。

毎日、ドロだらけで遊んでいたある日、双子の誕生日プレゼントとして、ファミコンが導入された。
それからの放課後は、駄菓子屋でおやつを買い、ちょっと外で遊んだ後、あっちゃん家でファミコン、がお決まりのパターンになった。

記憶にあるのは、デビルワールド。
卵から生まれた、タマゴンという小さな怪獣を操作する、パックマン的なゲーム。
さらに画面を縁取るような枠があり、ランダムにスクロールするため、枠の中でしか動けないタマゴンは、道の選択を間違えると、枠と迷路の壁で袋小路ができてしまい、潰されて圧死してしまうという、難易度は高めのゲームだった。
しかし2P協力プレーも出来るため、双子の弟、ひろちゃんと、三人で交代しながら遊んで、盛り上がったのを記憶している。

十字架を持つと、火を吐いて敵を倒す事が出来るが、味方に当てしまうと、動きが止まってしまう為、それを逆手に、嫌がらせプレイが流行。
やがて兄弟喧嘩に。

敵に追われている弟に、わざと火をぶつけて、
敵に襲わせたり、袋小路から逃げようとしているところに火を吐いて、焼圧死にさせたりと、意地悪なあっちゃん。

ひろちゃんも、意趣返しとばかりに、死ぬと卵から任意で復活できるのに、わざと復活せず、ひとりでプレイしている兄に、罵詈雑言を浴びせ、死んだら嘲笑うという、笑顔ゼロのデビルフェイス。
もはやゲームなんて関係ない部屋の雰囲気は、まさにデビルワールド。

やがて取っ組み合いの喧嘩に発展。
オロオロする僕。(頭の中でスタンハンセンのサンライズが流れてた)

一旦離れた2人の手には凶器が。
ゴツい超合金ロボを手にするあっちゃん。
おやつのホットケーキに使ったナイフを手にするひろちゃん。
血走るデビルブラザーズの間で、マジで尿する5秒前の僕。

再び取っ組み合う2人を、仕方なく止めに入る僕の三つ巴の地獄絵図。

揉みくちゃの中、2人が双子らしくユニゾンで、
「あーっ!」と僕の下半身を見て叫んだ。
完全に尿を漏らしたと思ったが、尿ではなく、僕の右膝上3センチの辺りから、血が垂れていた。(ナイフが当って少し切れた感じらしい)

それを見て、三人が顔を合わせ、パニックフェイスからの大絶叫。

騒ぎを聞きつけて、2人のお母さんが登場。
パニクる三人をなだめ、菩薩のように優しい笑顔で、傷の治療をしてくれた後、やんちゃ兄弟を、呆れた表情からの、鬼の形相で叱る姿は、まさに阿修羅観音。

ひとしきり怒られた後、改めてお母さんの作ってくれたホットケーキを三人で食べて、ホクホク顔で大団円。

いつも笑顔で優し美人のママさんの、デビルフェイスは本当に怖かった。

今でも、右膝上の傷を見ると、ママのデビルフェイスと、バターとメイプルシロップの、甘塩っぱい味を思い出す。