Ⅱ 労働時間
1 生活時間と労働時間
1. 生産者の視点から生活者の視点へ
・近年問題化される労働時間短縮
→休暇の取りにくさ、残業、冶金、休日出勤、不払い残業、過労死、過労自殺、メンタルヘルス
・労働時間の短縮
2. 生活時間の中の労働時間
・生活単位としての1日に注目→サーカディアンリズム
(最低限必要な生理的時間を圧迫しないこと)
・次に重要な生活時間の要素とは→仕事、勉学、お祈りの時間が重要(あるいは育児、介護、無償の社会的貢献の時間が重要な人も)
・生活時間の中で相対化される労働時間
3. 日本人の生活時間
・日本人の生活行動(社会生活基本調査などを参照:教科書49頁)
・共働き夫婦世帯が一般化
・注目すべき点→夫の生活時間における仕事の長さ
(妻は家事負担の多くを背負う)
・いわゆる「性別役割分業」が多くの世帯に
・男性の家事関連時間を無償労働とした国際比較(教科書49頁)
→有償・無償のバランスの悪さ(日本の場合)
2.労働時間と生産性の理論
1.賃労働と労働時間
(賃金労働者)
・生活時間の一部を労働力商品として販売→賃金を得る
(資本家(経営者))
・労働力商品を購入して労働・生産
・雇用主→利潤の最大化が目的(利潤追求)
・
2.剰余価値の生産と労働時間
・利潤はどうやって増やすことができるのか?
→雇用主は労働時間を増やすか?一定時間内の商品の産出量を増やすか?
① 労働時間を外延的に拡大(絶対的剰余価値の生産)→労働時間の規制に
② 一定の時間内で内包的に産出量を増大(相対的剰余価値の生産)→時短運動の理論的根拠に
3.労働時間と労働生産性の原理
・労働生産性の向上とは?
「労働投入量」(労働者数または総労働時間)をインプットに
「産出量」をアウトプットに(「一人当たりの労働生産性」または「時間当たり労働生産性」)
*「売上高」―「外部調達費」(原材料費・外注加工費・燃料光熱費など)
=「付加価値」(人件費、税、利息、減価償却費、賃料、経常利益)
・ところで企業の目的はなんだっただろう?→経常利益の上昇
・利益を上げるためには?→付加価値性を極大化と、経費節減(経常利益の伸びが、付加価値全体の伸び率より高いほうが良い)
4.日本生産性本部の「労働生産性」
・日本生産性本部の講評→時間当たりの生産性では先進国では最下位
*最新の数字→「OECDデータに基づく2024年の日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、60.1ドル(5,720円)で、OECD加盟38カ国中28位でした。実質ベースでは、2023年から若干ながら低下(-0.6%)しています。就業者一人当たり労働生産性は98,344ドル(935万円)で、OECD加盟38カ国中29位」
(出典:https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/press2025.pdf,2026年5月29日閲覧)
・単純な比較が困難→ルクセンブルク、アイルランドなど
・日本の労働生産性水準は?→実際は上昇傾向に
5.長時間労働と労働生産性の向上
・経営者側の視点→総労働時間を「総人件費」におきかえてもよい(つまり、長時間労働でも労務費が安く上がれば何ら問題はない)
*したがって、正社員に代えてパート労働者(大学でいえば、専任教授や准教授を増やさずに、非常勤講師を雇えばよい)を雇うか、正社員に「割安な時間外労働」をさせる
→ゆえに労働時間そのものの規制が必要
・日本における時間外労働の上限規制の必要性
3. 労働時間制度の歴史
1. 標準労働日を求める運動と8時間労働日制
・産業革命の時期の労働時間は?→1日16-17時間
*女性や児童労働も当たり前に
・1833年:工場法の制定→近代的な繊維産業に適用
① 18歳未満の時間制限、9歳未満の児童労働の禁止
② 工場法の改正(1874年)
・10時間労働から8時間へ
2. 戦前日本の工場法
・農商務省「職工事情」
① 全職工の3分の2を占めた紡績・製糸などの産業→昼夜2交代制勤務(最低でも12-13時間労働、ひどい場合は連続24時間以上も労働)
② 労働力保全の観点から工場法(1911年に初めて)の整備を検討(財界は根強く反対)
・日本の工場法の制定
・法の適用範囲常時15人に条の職工を使用する工場
・12歳未満の就業禁止(10歳以上の就業を認める例外規定も)
・15歳未満と女子の「保護職工」については1日12時間を上限とし深夜業と危険・有害業務の就業禁止
*ただし、昼夜交代制勤務に欠かせない深夜業の禁止規定は繊維業界からの猛反発で15年間の猶予期間を(さらには、この法律自体の施行が5年後に)
3. 戦後の労働基準法の制定とILO基準
・一般労働者を対象とした労働者保護立法は1947年の労働基準法が初めて(労働時間法)
・時間外労働の制限には重大な欠陥が
・ILO条約・勧告を一つも受け入れない
4. 週40時間制とその後の労働時間、規制緩和
・1980年代の前川リポート
・労働基準法の改訂
① 1日8時間の原則を週40時間に
② 実労働時間の短縮は一定
③ 変形労働時間、「みなし裁量労働時間制」→弾力的な労働時間制度の導入
・第一次安倍内閣の時代→ホワイトカラー・エグゼンプションへ(猛反発で撤回)
・2010年の改訂→月60時間をこえる時間外労働には50%の割増賃金
・第二次安倍内閣→「働き方改革関連法案」
*これで過労死、過労自殺はなくなったか?→電通・高橋まつりさんの事件