誰かを好きになることで

僕はこの世に存在していた


誰かを好きであればこそ

僕が生きていることを実感できた


その相手が女性でなくても

世界に一人だけの人を

好きであればこそ

僕の存在理由となった


どんな振られ方をしようとも

どんな別れ方をしようとも

どんなに傷つこうとも


その傷が

自分が生きてきた証となった


やがて僕は

誰も好きになっていなかった事に気づく

その時僕は初めて別れを泣いた

それは生きた証ではなく

愛していた証だと気づいたから


そして傷の本当の痛みを知り

そして傷の本当の苦しさを知り

辛さを知った


愛さなければ傷つかない

傷つかなければ生きていない

愛を捨てきれずに

傷つくことを恐れて

赤い血を

生きる証に変えて

ごまかしの日々を送る


そんな僕に君はそっと手を差し出した

傷だらけの腕を

君は躊躇なく両手で包み

泣いてくれた


傷つく怖さより

愛する証を君は分け与えてくれるのか

怯える僕を君は優しく包み込む

生きている

君の鼓動が暖かくて

僕は生きているのだと気づいた