都知事選で、一部メディアから、やたらと「具体的な政策論争」を求める声が強まっている。もちろん「政策」が重要なのは当然だが、過去の知事選で候補者同士で激しい「政策論争」が戦わされたのかというと、そんなコトはない。
 
 舛添前知事だって、選挙中は「世界一」と絶叫していただけだった。つまり、政策論争の大合唱は「これから勉強」と出馬会見で言った鳥越俊太郎氏(76)を暗に名指しした“ネガキャン”なのだが、増田寛也元総務相(64)や小池百合子元防衛相(64)だって、政策通とは言えない。両者の政策ビラを見ると、過去の都知事選の政策の“焼き直し”ばかりだ。
 
 岩手県知事を3期12年務め、「政策能力がある」と自民党が太鼓判を押す増田氏。掲げる「政策・理念」の「3つの実現」を見ると、ざっとこんな感じだ。
 
〈あたたかさあふれ、お年寄りも子供も安心できる東京の実現〉〈大災害の不安を解消し、安全に守られる東京の実現〉〈2020年大会を起爆剤に、世界一の魅力あふれる東京の実現〉

ん? どこかで見たスローガンと思ったら、14年の都知事選で舛添前知事が掲げた〈安心、希望、安定の社会保障〉〈大災害にも打ち勝つ都市〉〈史上最高のオリンピック・パラリンピック〉とソックリだ。さらによく見ると、増田氏と舛添氏の政策は似ている文言が目立つ。
 
 例えば、増田氏の〈木造住宅密集地域の不燃化、耐震化をスピードアップ〉は、舛添氏の〈木造住宅密集地域の改善を行う。耐震規制等を活用した住宅の耐震化・不燃化を行う〉とうり二つ。〈待機児童解消・緊急プログラムを策定し、8000人の待機児童を早期解消〉(増田氏)も、〈保育所・学童待機児童の解消を目指す〉(舛添氏)と同じ。言葉を変えたり、語順を入れ替えたりして体裁を変えているだけで、政策の“中身”はほぼ一緒なのだ。
 
■政策論争を求めるメディアの無意味
 

 小池氏が掲げる「3つのシティ」も、例えば〈環境に配慮しつつ、島嶼での命と安全を守る〉〈新たなテロへの脅威に備え、公共施設や重要施設でのセキュリティー対策を本格化する〉〈都内のガソリンスタンドをエネルギーステーション化し、EV・バイオエネルギー・水素ステーションの充電・充填設備を大幅に増設〉などは、舛添氏の〈島嶼部の津波、台風等の地震以外の自然災害に対する強化〉〈2020東京セキュリティ戦略を策定。テロ対策への体制整備〉〈電気自動車・燃料電池車の普及と必要なインフラ整備 再生可能エネルギーの活用〉――と同じ内容と言っていい。