維新の党共同代表、橋下徹大阪市長が衆院選出馬の可能性に言及し、波紋を広げている。大阪都構想の実現のめどが立たない中、公明党を標的に出馬カードをちらつかせて協力を引き出す狙いがあるが、公明内では地方議員を中心に主戦論が巻き起こる。3月の出直し市長選に続いての辞職は「投げ出し」批判のリスクをはらみ、維新内でも賛否が割れる。市選管内では辞職した場合の市長選日程として「年明け」も想定されており、関係者たちは橋下氏の最終判断を前に神経をとがらせる。


■「一歩も引いたらあきませんで」

 「絶対に一歩も引いたらあきませんで。それで負けたら、しようがない」。13日、大阪府の公明関係者が集まった会合で、出席者の1人は府本部代表の佐藤茂樹衆院議員(大阪3区)に迫った。

 橋下氏が立つとすれば、3区が有力。関係者によると、佐藤氏は思案顔で「うん、分かっている」と応じたが、「本当に出るのか」と周囲に聞いたとされる。

 橋下氏は前回衆院選で選挙協力後、都構想の反対に回った公明に怒り、公明の現職がいる大阪、兵庫の6選挙区に対立候補を立てると断言。15日の街頭演説では公明が協力姿勢に転じなければ自身や幹事長の松井一郎大阪府知事の出馬もありうることを明言した。

だが公明府本部幹部らは徹底抗戦する方針を固めており、16日に急遽(きゅうきょ)開かれた府本部の議員総会では佐藤氏が「正面から受けて立つ」とあいさつ。地方議員たちは盛んに拍手した。

 「うちはガチンコ勝負でいくから」。橋下氏と最前線で対峙(たいじ)してきた大阪市議団の幹部は言い切った。


■「投げ出せば、バラバラに…」

 身内の維新も浮足立つ。13日夜、東京と大阪を結ぶテレビ会議方式で開催された幹部会では、国会議員たちが橋下氏に出馬を要請していた。

 橋下氏が出馬すれば選挙戦で党の存在感が一気に増すことも見込め、議員の1人は「一生懸命お願いした。(橋下氏は)『出ない』とは一言も言わなかった」と期待する。

 だが同じ維新でも、大阪の国会議員、地方議員らで作る大阪維新の会側の受け止め方は割れる。ある市議は「いま橋下代表が大阪を投げ出したら、維新はバラバラになる」と悲壮感に包まれていた。

 都構想の協定書議案が府市の両議会で否決され、来春の統一地方選で都構想、大阪維新の浮沈をかけた戦いに臨もうとしている。また市では来年度の予算編成の真っ最中で、12月には橋下氏の予算ヒアリングが予定されている。




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