恋愛感情
R1の1回戦をあっさり敗退して傷心の僕は気が付くと、寒風吹きすさぶ夜のマンションの屋上にいた。
屋上は地上5階、下をのぞくと普段なら足がすくむ高さだが、傷心の今日に限っては何の怖さも無い。
いや、どちらかといえば地上に吸い込まれるような気さえする。
「R1の1回戦で落ちた自分なんて、いっそこのまま地上へ飛び降りてしまえばいい…」
いまさらという感情ではない、最初からそう思っていたから屋上にやってきたんだ。
とっくに覚悟は決まっている。
靴をそろえる為に靴を脱ぐ、コンクリートの冷たさが靴下越しに伝わってくる。
靴を脱ぐことをわかっていたのに、脱ぎづらいブーツを履いてきたコトを少しだけ後悔する。
最期に穴の開いた靴下を履いてなくてヨカッタ…
突如どうでもイイ感情が脳を駆け巡って、少しだけ笑みがこぼれた…
「これが最期の笑顔か…」
そう思いながら、僕は屋上の手すりに手を伸ばした。
手すりを越えればもうあっという間に楽になれる…手すりの鉄の冷たさなんて全く気にならないほど集中していた。
と、その時…
「な~にやってんの!?」
という言葉とともに、僕の首筋に温かい、いや、あたたか~い缶コーヒーのぬくもりが駆け巡った。
ビックリして後ろを振り向くと、そこには数年ぶりに会う幼馴染みの女性がいた。
「ここにいると思ったよ、ヘコんだらいつもココに来るんだから!!さぁ風邪ひくからお部屋に戻ろう!!」
明るい声でそういった女性は無理矢理靴を履かせ、僕の手を強く引いて部屋まで戻らせた。
もちろんこの時点では何の意識もしてなかった幼馴染みの女性が、数年後、自分の結婚相手になるなんて思ってもいなかった…
ハイ、決めました!!こういう出逢いがしたくて、R1を落ちたことにします!!すべてが救われましたね☆