〽ハガマ・ハガマ・ハガマのごはん…(電気炊飯器のCM) 

このCMソングが流れるたびに絶望的な気分になる。


昔々、歌手の奥村ちよさんが

〽イチゴのチョコ~(チョコレートのCM)

と歌った時もそうだった。


おわかりでしょうか?

ハガマのガ、イチゴのゴは、日本語ではいずれも鼻から柔らかく抜ける鼻濁音で発音するのが正しい。私たちが演劇を学んだ頃にはそう教えられた。

東京ガスのCM「ガ、スマート」というのもある。

「○○が、」

という場合のガも本来は鼻濁音だ。

また、たとえば「音楽学校」の「オンガク」のガは鼻濁音、「ガッコウ」のガは濁音になる。

東北出身の私には共通語のアクセントがなかなかマスターできず、

NHK発行の「放送アクセント辞典」が手放せなかった。

いまも、電子辞書はアクセント辞典が入ったものを使っている。

台本と稽古期間があれば事典や東京出身者のアドバイスで台本にアクセント記号をつけ、本番までには何とか形になるのだが、素読みでははなはだ怪しくなる。日常会話ではなおさらだ。

ただ、鼻濁音に関しては苦労したことはない。

アクセント辞典の中では、か行で濁音は当然濁点(゛)だが、鼻濁音はマルテン()で表されている。
実は、これは後で知ったのだが、この鼻濁音は音声学的に、北関東以北で一般的なのであって、関東以西ではなじみがないというから、逆に言えばなぜ共通語の発音として鼻濁音に拘ったのかが不思議に思える、

という言い方もできる。

だから、「何も目くじら立てなくても…」という気持ちにもなるのだが…。

アクセントにしても、だいぶ様変わりしているようだ。

それにしても、いまやNHKのアナウンサーでさえ、鼻濁音をしっかりマスターできていない方が見受けられるし、民放に至っては放棄しているのではないかとさえ思われる。

東京ガスのCMの方は、そのあたり苦心されており、

ガスとひっかけた語呂合わせだけ鼻濁音を使わず、それ以外はしっかり発音されている。

しかし、この語呂合わせは法則を崩しているだけ罪深く感じる。

もう40年前になるが劇団養成所で一緒に学んだ同期生のFさんは九州出身者で鼻濁音に悩まされ、以後彼女は一生懸命矯正して美しい日本語をマスターした。

ところが、今年劇団の芝居で宮城の言葉を私が方言指導したら、

たとえば「んでがすぺ(そうでしょう)」「おがしいんでねべが(おかしいんじゃないですか)」のガは鼻濁音ではない!と何度言っても鼻濁音になってしまう。

一般的な鼻濁音と、いわゆるズーズー弁で濁る場合の濁音と使い分ける必要があるのだ。

この使い分けができないと、言葉のメリハリと柔らかさのニュアンスが出てこなくなってしまう。

東北においては、会話の中の濁音と鼻濁音の使い分けがこんなに大事なのだと、

これは無形文化なのだと、

改めて気づかされ、東北の話し言葉の豊かさを認識した。



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