(渡海 蓮)





一夜明けた。


腕の中の愛しい人の額に


もう幾つ目か分からないキスを


そっと・・・落とす。


征司郎・・・眠れたんだな・・・






昨夜。


うちに帰ると


何もかもが整っていた。


俺たちの夜食に


綺麗に畳まれた洗濯物。


加湿された温かい快適な部屋。





きっと。


アイロンで仕上げてくれたのだろう。


一昨日の夜に愛し合った後


軽く水洗いしただけで


洗濯機に放り込んだままのシーツも


滑らかなら仕上がりになっていた。


ベッドメイキングまでさせてしまい


申し訳なかった。





母さんがさっさと帰ってしまうと


疲れ切っていた俺たちは


シャワーを浴びただけで寝室に入った。





征司郎「父さん・・・の・・・


親戚に連絡しないと・・・」


蓮「そうだね・・・」




俺たちは医者だから


お義父さんがもう・・・


それほど長くはない、と分かっていた。





征司郎「最期は誰もがひとりだね」


蓮「・・・・・」


征司郎「うちの父さんと母さんは


割と仲が良いんだけど・・・」


蓮「うん」


征司郎「それでも、さ。


父さんは・・・もう。


・・・母さんを・・・


わからないんじゃ、ないかな・・・」


蓮「・・・・・」


征司郎「生まれてくる時も死ぬ時も


ひとは自分で選べないね・・・」


蓮「そうだね・・・」





だけど・・・


俺は最期の瞬間まで


お前を抱いていたい。





征司郎「ごめんね・・・


家族を増やせなくて・・・


次の世代を・・・産めなくて・・・」


蓮「俺たちは。


自分たちの意思でふたりになった」


征司郎「うん」


蓮「俺は征司郎をひとりにしない。


お前より一分でも一秒でも長く生きて


お前の人生を支えてやる」


征司郎「どっちが先かなんて


わからないよ」


蓮「お前が先。俺があと」


征司郎「どうして?」


蓮「こんな可愛い人を


ひとり置いていけるかよ」


征司郎「ふふふ・・・」


蓮「心配で心配で・・・


安らかになんて眠れないね」


征司郎「蓮のことは・・・誰が・・・」


蓮「甥っ子姪っ子がいるから


征司郎の墓に入れてくれるさ。


もし。


何かの理由でそれが叶わなくても


ちゃんとお前のところへ逝く。


俺の意思で宇宙までも探しに行くさ。


そんなこと、心配しなくても大丈夫」





薄い身体をぎゅっと抱きしめた。





征司郎「あったかい・・・」





征司郎も俺をぎゅっと抱きしめ返した。





ふたり・・・


こうして抱き合うだけで


溶け合うようにあったかいな・・・


こんなにも満たされる・・・


これが俺たちの正解なんだ。


これが俺たちなんだ。


これで・・・いいんだよ・・・





蓮「俺も、お前の子を産めなくて・・・」


征司郎「この生き方を選んだのは


自分たちなんだから


もうこの話は終わりにしよう」


蓮「うん」


征司郎「蓮に出逢えて・・・よかった。


あの時、頑張って・・・よかった」


蓮「頑張ったの?」


征司郎「頑張ったよ。


チョコレートいっぱい貰ってたでしょ?」


蓮「お前も貰ってたよ」


征司郎「ふたりで・・・


常磐線に揺られて・・・


東京のお婆ちゃん家まで行ったね」


蓮「行ったね・・・」





疲れ過ぎて眠れないのか。


お義父さんの容態への不安から


気を紛らわせたいのか


征司郎は何度も寝返りをうって


なかなか寝付けずにいた。





征司郎「・・・眠れない・・・」




ナイトキャップを、と


起きあがろうとして




征司郎「ひとりにしないで」


蓮「どこにも行かないよ」


征司郎「そばにいて・・・」


蓮「うん」


征司郎「ぎゅっと・・・抱きしめて」


蓮「・・・ん・・・」





羊を数えるみたいにして


キスを落とした。




ひとつめのキスは額に


ふたつめのキスは瞼に


みっつめのキスは鼻の頭に・・・




征司郎をベッドに縫い留めて


身体中に


数え切れないキスの雨を降らせた。  


やがて恍惚とした表情を浮かべて


征司郎は俺の与える快感に


身を委ね・・・





征司郎「・・・ん・・・


・・・ぁあ・・・イイ・・・


まるで・・・媚薬みたい・・・」





俺の指と唇を与えた。


征司郎の欲しがるだけ・・・


俺を・・・与えた・・・





次、R18なのですが・・・

8月末まで不定期更新になります。🙇‍♀️

出てきた時には読んでねー♡