(智)
丸山「あれ?また新人ちゃん?」
智「いらっしゃいませ」
丸山「ちゃうちゃう。客とちゃうねん。
俺、先輩、な。丸山いいます。
あれ?そこ、二宮くんのシフトやん。
店長!新人くんの配置、間違えてますぅ」
・・・なんだ?コイツ💢
店長「いやいや、合うてるんよ。
和くん、ちょっと具合悪うてな。
困ってたら、ピンチヒッターで
このお人が入ってくれたんや」
丸山「え!二宮くん、具合悪いん?
昨日一緒に帰った時は元気やったのに。
うわっ。いきなり何するん?」
智「お前か?」💢
丸山「へ?何のこと」
店長「こらこら。
大野くん。堪えてくれんか?
丸山くんはやかましいけれど
悪い子やない」
丸山「せやで。
11月26日生まれに悪い子はおらん」
・・・11月26日?
丸山「あ、俺の誕生日ね。
覚えておいて。テストに出すよ?」
智「・・・・・」
丸山「なんや、生意気な新人やなぁ。
睨まんでもええやんか。
言われたこと、覚える気ないんちゃう?」
智「・・・・・」
商品の入れ替えを黙々とやる。
店長「大野くんは手ぇ動いてるよ。
和くんの代わりに入ってくれたんや。
ええ子やわ。仲良うして。
丸山くん、レジ頼むわ」
丸山「はーい。
あ、一応、テストね。
俺の誕生日は、いつやったでしょう?」
智「11月26日」
丸山「うわっ。一発合格💮💯
ほんまは、ええやつ?」
智「・・・・・」
丸山「なんや。記憶能力高い子ぉやんか。
店長、ええ子が入りましたな」
店長「これ。お喋りばっかりしてんと
さっさとレジに入って」
丸山「はーい」
能力なんか、高くない。
コンビニの店員になら
簡単になれると思っていた。
そして仕事も。
余裕で熟(こな)せると豪語していた。
だけど・・・きっつい。
中腰で奥の商品を取り出すのも。
確認して値引きシール貼るのも。
いろんな商品を覚えるのも。
店長「まだまだ覚えることあるよ」
・・・まじか・・・
・・・和。
・・・頑張ってたんだな・・・
*ララァさんのお写真です*
(和)
お家から一歩も出ちゃダメと言われて
インターフォンも電源を外されて
ひとり・・・
エアコンの効いた部屋で待つ。
お布団の上で
ゴロンゴロンしながら・・・
コンビニのバイトも
行っちゃダメだと言われて・・・
事情を説明しに行ったまま
帰って来ない智を
じっと待っていたけれど・・・
さすがにお腹も空いてきたし
トイレも行きたくなったし
和「よいしょ」
起きた。
ケンケンして移動。
白く美しい包帯を汚したくないから。
用をたして
顔を洗って
洗濯くらいは、出来るよ。
あ、そうだ。
ご飯・・・何か作れないかな?
ゴソゴソしているうちに
太陽は高いところまで昇ってった。
智。
なんか、あった?
携帯電話はおとなしいまま・・・
ラインも既読がつかないまま・・・
ピコン💡
あ。一件来た。
智✉️「人が足りないらしくて
コンビニバイト、ピンチヒッターなう」
それは・・・申し訳ない。
ごめん。
いや、ありがとう。
洗濯物を取り込んで
手拭いを作業場の和室に届けようとして
・・・え・・・?
・・・やだ・・・嘘でしょ・・・
西陽が差し込むその部屋の
真ん中にある・・・
一枚の障子。
そこに描かれているものを
見てしまった・・・
へなへなと力が抜けて
太陽が沈んでしまっても
しばらくそこを動けないでいた。
だって・・・
描かれたのが
あまりに綺麗で
綺麗過ぎて・・・
ショックで
説明できないくらいに
なんか・・・こう・・・
ズシン、ときて・・・
そのまま
時間が・・・止まってしまった・・・