俺ら高三だから。


進路指導というものが、ある。






雅「翔ちゃんは推薦とるんでしょ?」


翔「医学部は内部推薦枠少ないからなぁ。


一般の準備もしているよ」





翔ちゃん家はお医者さんだから。


迷わず医学部志望なんだな。


そして学年一頭が良いから


きっとうちの大学でなくても、受かる。





雅「俺は多分。


実家の中華屋を継ぐんだけど。


父ちゃんが『悪いことは言わない、


大学へは行っとけ』って言うから


内部進学で行けそうな学部に出す」





ふーん・・・





担任の先生「おはようございます。


この度、アメリカの姉妹校カレッジから


一名の枠でうちにも募集が来ました。


希望者に要項を配ります」





たったの、一名か・・・


狭き門ってやつ。





潤「はい。希望します」





スッと立ち上がり


その募集要項を受け取ってきた潤は


やっぱりキラキラして見えた。





先生「二宮は?お前は、いいのか?」


和「うちはアメリカ留学なんて。


どう考えても無理っすよ。今、円安だし。


短期研修で行ったのが精一杯です」


先生「いや、諦めるのは早いぞ。


TOEFLで高得点を出せば


学校からも援助が出る。


縁あってお前も今回研修に行ったんだ。


じっくり検討してみろ」





先生は和の席に


ポンとその冊子を置いた。





・・・アメリカ、か・・・


・・・海の向こう、遠い国だ・・・





先生「大野。お前は昼休みに面談だ。


進路指導室に来い」


智「はい」




進路、なぁ・・・





*ララァさんのお写真です*





プリンス池の蕾は


桃色に色付いていた。


明日の朝には咲くかもしれない。




春になれば芽が出てきて


やがて蕾を付けて花開く。


そんな当たり前のことの繰り返しで


一年が過ぎていく。


ここまで。


春になれば当たり前に学年が上がって


高三生にまでなってしまってた。





個人面談の予定表が扉に貼ってある。


今日の予定は5人。


一日5人ずつで、今日から八日間。





10日昼休み 大野
10日放課後 二宮
10日放課後 松本
10日放課後 相葉
10日放課後 櫻井

11日昼休み 岡田
11日放課後 町田




ポーっとそれを見ていたら


担任の先生が渋い顔をした。





先生「これ。鼻をほじるんじゃ、ない。


ティッシュを持っていないのか?」





ティッシュなら。


和が持っています。





先生「大野は、将来をどう考えている?」




どうって・・・




先生「大学に進学するにしても


就職するにしても、専門学校に進むにしても


ちゃんとビジョン、というか、だな」


智「・・・あー・・・」




正直。


まだ。


何も。


考えていません。


考えられていません、が、正しいか。




先生「おうちの人ともよく相談して


お前の、自分自身の人生なんだ。


しっかり考えなさい。


プー太郎になりたい訳じゃないだろう?」





智「・・・はい・・・」





提出期限が赤字で書かれたシート。





・・・俺。


・・・何をしたいんだろう・・・


・・・何ができるんだろう・・・





というか。


高校を出たら。


そのあと


どうやって生きて行くんだ?





父ちゃん。


どうやって母ちゃんと結婚したんだろ。


どうやって家や車を手に入れて


どうやって日々の飯代


稼げるようになったんだろ・・・






・・・なんか。


この先が果てしなく感じた。


あの空の雲を掴むみたいに


難しく・・・





俺にできることって


なんだろな・・・


コンビニの店員とか?


それか、やっぱり、プー太郎・・・?




・・・なんか、眠くなってきた・・・