(お部屋の和)




誕生日までのカウントダウンを


お守りのようにして


この逢えない40日を


それなりに頑張っていた。


学校にもちゃんと行ったし


定期テストも受けたし


厳しい指導付きバイトも続けていたし。





松兄「おつかれさん」


女将「次は20日の金曜日ね」


和「はい。よろしくお願いします」





念の為。


明日6月17日から3日間。


お休みをもらった。


ちょうど学校もテスト休みだから


まるまるお休み。




だけど。


智さんからは「京都においで」とも


「東京へ行くよ」とも言われていない。


例のカウントダウンは


「あと1日」が昨夜届いたまま・・・





家に帰ると22時を回っていた。


爺ちゃんは珍しく銭湯に出掛けたらしい。


婆ちゃんが夜食を用意してくれていて


それをもらって風呂に入った。





17歳最後の入浴。


ゴシゴシ、念入りに全身を洗う。


智さんに逢えないかもしれないのに


自分が必死過ぎて


なんかちょっと可笑しくなって笑った。





風呂上がりに


いつものアイスを食べようと


キッチンに行くと




婆ちゃん「和菓子、食べる?」




いつかの八ツ橋が出てきた。




和「え、まだあったの?」




小さいの、ひとつ食べる。


モッチモチ。


ニッキ*が効いている。

ニッキ・・・楠科肉桂(ニッケイ)の根皮から抽出される

香辛料。八橋やニッキ飴の原料のひとつ。



今時の真空パックはすごいな、なんて。


その包みをよく見ると


消費期限は明後日まで


製造日含めて三日間、とあった。


て、ことは。


今日が製造日・・・?




・・・・・/


・・・・・//


・・・・・///





控えめに、喜んでみる。





和「誰か・・・来た?」




京都から。




和「・・・爺ちゃん、風呂、長くない?」




誰かと、一緒?




婆ちゃん「久しぶりだからね。


サウナも楽しんでいるんだろ。


和くんの父さんも一緒だから大丈夫」




和「・・・あー・・・」




そっちか。


京都のお土産だから・・・


それも前回の智さんセレクトの八ツ橋


同じ店だったから、ちょっと期待した。





期待した分・・・残念・・・


もう。


親を喜ぶ年でもない。





和「・・・母さんは?」





父さんが来ているのなら


母さんもセットで付いて来てるよね?


あのふたり、無駄に仲が良いもん。





婆ちゃん「父さん母さんは。


今回、駅前のホテルに泊まるらしいよ。


業務提携していて安く泊まれるんだとか」




へー。


そうなんだ。


うちは昔、町工場をしていたから


東京下町と言えど、ちょっと広い。


爺ちゃん婆ちゃんの住む母屋と


こっちは完全に分かれているし


父さん母さんも


自分たちの部屋があるのにな・・・


うちの駅前のホテルまで業務提携って


あの社長、どんだけヤリテなの?





婆ちゃん「明日のお誕生日会は。


父さん母さんがお料理するらしいよ」





・・・ふうん。


そっか。


婆ちゃんのご飯も大好きだけどね。





和「じゃあ、おやすみ」




歯磨きをして


トイレを済ませて


自分の部屋に上がった。





時刻は23時半を回って・・・


ラインは昨日のままで・・・




バイト。


何を期待して休みもらったんだか。




寝ようとして。



布団をめくると。





・・・え?





何、これ・・・?





お手紙?


プレゼント?


サンタさん?




いや、誕生日プレゼント、だよね?




親から、かなぁ・・・



なんて。



そのうっすい封筒を開けてみた。




中には夢の国2daysチケットが


二枚入っていた。


大人一枚と、中人(中高生)一枚。


心臓がドキドキと音を立てはじめる。




和へ

お誕生日、おめでとう。
明日のお誕生日会が終わったら
ふたりで遊びに行こう。




・・・え?



智さん。



ここに、来たの?



キョロキョロと部屋を見渡す。



・・・あ!



ベッド傍に。



小さな荷物を見つけた。




智さん・・・



すぐ近くにいるよね・・・?



お風呂屋さんかな・・・



うちの爺ちゃんと父さんと、一緒なの?



どんな魔法で



そうなったの・・・?