(お部屋の和)






僕の智さんとの関係は


あのまま・・・


あれ以上、進まないまま・・・


東京に戻ってきていた。





松兄「おー。八ツ橋か。さんきゅ」


和「・・・あ、それは智さんからです」


松兄「アイツ。手土産なんか


託けるようになったのか。


お?しかも、お手紙付きだ。


・・・・・ふーん・・・へー・・・


おうっ・・・大人になったなぁ・・・」






GWが終わるとき。


このまま京都に居たい、と


駄々をこねた僕を


新幹線まで送ってくれたのは智さんだ。






和「帰りたくない・・・


やっぱり、このまま、こっちに・・・」


智「それは、もう少し、先に。


とっておこう。


学費、払ってもらっている分


ちゃんと、やっておいで」




そう。・・・学費・・・


年間で100万円。


私立だから・・・高い。





和「働いて返したら・・・許される?


もし。途中で辞めてしまっても・・・」




その・・・無駄になる100万円。




智「働くって・・・何処で?」


和「ギャラリーオオノ、とか。


それがダメなら、例のホストクラブとか」


智「・・・高校。


あと半年あるだろ?


卒業、待ってるから。な?


卒業したら、約束通り。


うちに来い。真っ直ぐ。


何処にも寄り道しないで。


爺ちゃん家の次は、俺ん家だ。


それまでは松兄とこで修業、続けて。


待ってるから・・・」




待ってるから・・・




智「あ、これ。


京都のお土産。


これはお爺さんお婆さんの分。


こっちは松兄の分。


それからこれは、高校の先生の分。


この前、お世話になったから。


だから・・・


渡してくれる?」


和「・・・うん」


智「お礼のお手紙も入ってるから。


頼んだよ」




背中を押されて。


こっちに帰ってきてしまった。




お土産も、それぞれに届けて・・・




僕の非日常は終わり


日常が戻ってきた。





古典の先生「二宮くん。


卒業に必要な登校日数を確認しておこう」


和「あ、はい」




ずっと真面目だったから。


ほとんどの単位は足りている、はず。






古典の先生「この12月の卒業試験。


ここまでは、コミュ英と現代文あるね?」


和「はい」


古典の先生「提出物、ちゃんと出してね?」


和「はい」


古典の先生「体育祭とか文化祭は


ホームルームの時間に加算されるから


そこは休まないようにして」


和「はい」





年間予定表に印を入れてくれた。


絶対、休めない日。


大きな試験の日とか行事の日。


それ以外は・・・




古典の先生「あとは、自由登校だから」




そのカレンダーを見る。


夏休みは・・・二ヶ月近くもある。


そして12月の試験が終わったら・・・


次は3月の卒業まで


もう、登校日さえ、ない。




古典の先生「印入れた日は、休まないで。


まあ、それでも。無理はしないで。


大抵のことは。


なんとかなるからね。


ひとりで思い悩んだり


勝手に判断しないで、相談してね」


和「先生は・・・どの立ち位置で・・・」


古典の先生「・・・あら。


やっぱり二宮くんは賢い子ね。


先生は、というか、学校は。


二宮くんという逸材を、いずれ


世に出す為に今大切にお預りしているの。


一応、社会にはルールがあって・・・


学校はそれを練習する場所だから・・・


先生らしいこと言っているけれど。


だけど一番大切なのは、二宮くん自身よ。


それが一番大切なこと」




和「・・・はい」




毎晩の智さんからのラインには。




「あと40日」


「あと39日」




なんのカウントダウンかな・・・


5月の次は、6月で・・・




1、2、3・・・16、17





・・・あ。


もしかして。


・・・いや。


もしかしなくても。


その、カウントダウンの終わりの日は


・・・6月17日。




・・・僕の・・・


・・・誕生日・・・